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2007年6月24日 (日)

がんばれAMラジオ。

Img114ほんのちょっと前まで、広告代理店にはラテ局という部署がありました。ラジオ・テレビ局の略です。ラジオとテレビの媒体を取り扱う局のことです。ラジオが先でテレビが後。考えてみると当たり前の話ですが、はじめにラジオ局ができて、テレビが後なので、ラテなのですね。

数年前に、日本のインターネット広告の売り上げが、ラジオ広告の売り上げを超えました。もう、この順位は変わりそうにありませんね。私の場合も、ラジオCMより、スペシャルサイトやバナーの制作のほうが多くなっていますし、レスポンスをとるにしても、ターゲットセグメントをするにしても、インターネットのほうが断然有利です。

広告の業界でも、ラジオCMが話題になるのは、ACCとか電通賞の発表があるときくらいです。私のまわりにも、ラジオを聴いている人はほとんどいません。ましてやAMなんて皆無です。ちょっと寂しいです。なにせ、私は、AMラジオを聴いて育ったのですから。

私は大阪でしたので、MBS毎日放送ラジオなら「ヤングタウン」。OBCラジオ大阪なら「鶴瓶・新野のぬかるみの世界」。KBS京都ラジオなら「ハイヤング京都」。笑福亭鶴瓶やつボイノリオ、チンペイ(谷村新司のことです。なぜチンペイなのかは忘れましたが)のラジオを聴いて育ったんですね。

古き良きラジオの時代を語るつもりではありません。私は、ノスタルジーのお話は好きですが、でも、あまり積極的に話すことでもないと思うので。AMラジオ、面白いと思うんですよね。今もほぼ毎日聴きます。東京では、深夜放送と言えば、昔はニッポン放送の「オールナイトニッポン」全盛でしたが、今はTBSラジオの「ジャンク」の時代ですね。月曜日は伊集院光。火曜は爆笑問題。水曜日は雨上がり決死隊。この3つの番組は特によく聴きいています。特に伊集院光のジャンクは素晴らしい。レーティング調査のあるスペシャルウィークの特集は、特にすごいんです。

だいぶ前ですが、スペシャルウィークの時に、東海道線サッカーという企画をやっていて、東海道線の浜松駅に自転車を置いて、1週間の間に、2つのチームに分かれて、それぞれ東京駅と名古屋駅をゴールにして戦うのですが、自転車に乗れるのは日の出から日の入りまでというルールがあるのです。例えば、Aチームが浜松から熱海まで自転車を移動できたら、Bチームが熱海から名古屋に向けて戻すのです。それをただ実況するだけの企画ですが、これがすごく面白いのです。

もちろん、映像もなく、録音機材は伊集院光の手持ちです。ただ一人で、録音スタッフもなく、ただただ自転車を漕ぐ。そして、伊集院光の泣き言やらをただただ実況するだけ。それが、すごく面白いのですよね。2時間、もうね、夢中になるんです。もちろん伊集院光の話術もあると思いますが、あれ、AMラジオのメディアの力だと思うんです。

私の造語なのですが、AMラジオは「チープメディア」だと思うんですね。テレビは「リッチメディア」です。テレビは、メディアそのものの特性が、そもそもお金やら豪華な企画を必要とするんですね。ネットも、このところ「リッチメディア」になりつつありますね。その点、絵もなく、FMと比較して音質的にも圧倒的に劣るAMラジオはチープメディアの最たるものだと思います。でも、そこにAMラジオの圧倒的な優位性があると思うんですね。

伊集院光にしても、爆笑問題にしても、ラジオの時は生のフリートークなんですね。それは、すなわちテレビだとコンテンツにならない話題も含む、ということなんです。でも、そういう「うだ話」にこそ面白みがあるんですね。人がにじみ出るのは、企画会議でつくられた面白トークではなく、どうにもならないようなフリートークにあるんです。それを活かせるのは、いまAMラジオしかないような気がします。でも、そういう番組、少なくなりましたが。

大阪などは、その点では、もう悲惨なもので、深夜は声優のアニメ番組。番組の編成をターゲットセグメント論でつくると、そうなるのでしょうね。まあ、声優の番組はラジオ的と言えなくはないですが。唯一気を吐いているのは、老舗番組になってしまいましたが、ABCラジオの「北野誠のサイキック青年団」くらいですね。

ラジオCMは、広告制作者にとっては、低予算でアイデアとクオリティを作り出せる、クリエイティブのいい素材なのですが、いま私は、そういう完成度の高いラジオCMではなくて、そういうチープメディアとしてのAMラジオの特性を活かしたラジオCMを作れないかな、と思っています。

なんかね、テレビつくって、交通、雑誌からめて、ネットへ、みたいなクロスメディア的アプローチ、新しいとは思うけど、ちょっと疲れたりしませんか。あらゆるメディアで、消費者が夢中になるような、立体的コミュニケーションもいいですが、その一方で、消費者ってそんなに暇じゃないと思うんですよね。

新聞広告には新聞広告の、テレビCMにはテレビCMの、AMラジオにはAMラジオの、そのメディアに最適な表現ってあると思うんですよね。だったら、新聞やテレビで完結した面白さや楽しさ、美しさを見せてくれよ、と。他のメディアにひっぱる、みたいな、思わせぶりな感じやめてくれる、ってちょっとだけ思うんです。テレビはテレビで、新聞は新聞で、しっかり世界つくれやって、ね。こんなこと言うとWeb2.0時代のクリエーターとして失格かもしれませんが。

AMはエリアが広くて金額も安いから、そのぶん可能性もあると思うし、広告ができる企業の幅も広いと思うし、AMラジオならではの魅力が活かせる番組とCMが増えてくれば、メディアとしてのAMラジオも今よりもっと価値が上がると思うんですが。AMラジオ好きとしては、ほんと、がんばれAMラジオです。私も微力ながらがんばろうと思います。

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