コンピュータ・アソシエイツ(2)
コンピュータ・アソシエイツの製品広告です。企業のIT部門に勤められている方はご存知かもしれませんが、「アークサーブ」というバックアップソフトウェアがありまして、その最新版が出たときに出稿した広告ですね。これはいわゆるB to B広告といわれる種類の広告で、簡単に言えば、業界向け広告というやつですね。日経コンピュータとか、日経リナックスとか、そういう専門家が読む雑誌に載るものです。
広告制作に携わる方だと分かるかと思いますが、この分野の広告は表現に自由度がなくて、しかも、覚えなきゃいけないことが多くて、勉強もたくさんしないといけないし、できれば避けたいなとか、僕、できないっす、と上司に言っちゃう人とか多いと思うんですね。まあ、自省も込めて告白すると、私自身もかつてはそういう制作君でもあり、いまだにそういう気もないとは言えない感じなのも事実ではあるんです。でも、B to Bと言えども、所詮は広告であって、広告である限り、広告の基本原理は同じなんです。いろいろと、そうとも言えないよね、という意見もあるでしょうが、広告はココロに響いてなんぼのもので、ココロに響かないものは、やっぱり駄目なんです。つまり、広告効果が低いんです。
で、B to B広告で、ほんとに広告効果が高い、ココロに響く広告をつくろうと思うと、どうすればいいのか。トートロジーっぽいですが、読む人のココロに響く広告をつくればいいんです。でもここで間違えちゃいけないことがあります。よくこういう人のココロに響かないものは、だめなんだよ、という人が、自分のオカンにもわかる広告をつくれと言いますよね。それは違うんです。読む人は、ITの専門用語を日常用語のように使いこなす人なんですよね。自分のオカンにわからせる必要はまったくないんです。
難解なIT用語を使っているから、難しい堅めの広告しかできないよね?いえいえ、そんなことはないでしょう。これを読んでくれてる人、広告関係が多いと思うんですが、同僚と飲みに行って愚痴ってるときの会話、思い出してみてください。結構、専門用語を使って、他の人にはわからない内容の話を、うだうだと話してたりしませんか。そのとき、堅苦しい感じですか。そうじゃないですよね。あいつの出してくるコンセプトって、あれじゃまったくワークしないんだよ、でさあ、そんな感じなのに、エクスキューションに口出してさあ、てな雰囲気で話してませんか。他人から見たら、わけわからんでしょ。だけど、本人たちは、安酒飲みながら、モロキューつまみながら、話してますよね。
この広告、オカンに見せてもよくわからないと言われ、制作の同僚に見せても、いまいちピンとこないなあ、とよく言われる広告ですが、読んでくれたIT部門の担当者からは、ホント、これわかるなあ、と言われる広告ではあったのです。ネットを見てたら、たまたま、この広告のコピーを、ていねいに日記に全文再録してくれたIT担当者の方と出くわしたり、お得意様から、某企業の若い女性IT担当者がこの広告を机に貼ってるという話を聞いたりして、ほんといろいろな人に愛された幸せな広告でした。
それまで、業界の目とかを気にして表現をつくるようなセコイ部分もあったのですが(これ読んでるあなたもあるでしょ、そんな部分)、この広告でちょっとだけ吹っ切れたような気がします。この広告は、広告業界でほめられなくたって、何の賞も取れなくたって、コマフォトやブレーンに載らなかったって、上司に製品の内容を説明しても一向に理解してくれなくたって、読んでくれた人にほめられる広告をつくれたら、それがいちばん、なんて正論を、涙目じゃなく、ぬけぬけと後輩コピーライターに語れる図太い私にしてくれました。
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