W-ZERO3[es]礼賛(3)
欧米ではスマートフォンというジャンルが確立されています。ウィルコムのW-ZERO3とW-ZERO3[es]は、日本におけるスマートフォンの初めての、かつ、唯一の成功例と言われています。しかし、その言い方にちょっと違和感があるのは、日本の携帯電話市場と、欧米の携帯電話市場の違いが考慮されていない点です。世界でいちばん売れている携帯電話の端末は、モトローラのレーザーなんですね。そうです。ベッカムがCMやってたやつです。日本向けには、ある程度は日本向けカスタマイズをされていましたが、でも、使ったことある人はわかるでしょうが、日本の最先端の高機能携帯端末にくらべると、まああれなんですね。基本的には、欧米の場合は、あまり高機能でない、あるいは、機能性の追求なんて必要ないでしょ的な多くの携帯端末と、機能性の追求とカスタマイズウェルカムな無骨なスマートフォンの二分化された市場なのです。
しかし、日本は違いますよね。日本の携帯電話端末会社が世界で商売できないのは、日本の携帯端末の特殊性にあるのです。たとえば、ドコモが仕様をバージョンアップさせるたびに、どんどん高機能やデザインを売り物にした新型を出さざるを得なくて、しかも、消費者も低価格でどんどん機種変更していく、という世界でも特殊な市場のために、日本の携帯端末とそれを成立させるその他テクノロジーや電子部品関係が、最先端の特殊な成長をしている反面、同時代的な観点では、日本という空間に閉じこめられて、なかなか世界性が持てないんですね。でも、ここでは、その是非は問いませんし、私にその是非を問う知識もありませんが。
要するに、日本は、なかばスマートフォンと言ってもいいくらいの高機能携帯電話端末しかない特殊な市場なのです。事実上。そして、もうひとつは、じつは日本独自規格のPHSの生き残りであるウィルコムという構図です。そのウィルコムは、まずは、ネット接続の優位性でがんばってきた。エアエッジですね。そして、ネット定額をバックボーンとした、京ぽんなどのフルブラウザ端末。そして、W-ZERO3。その流れの中の[es]なのです。ですから、携帯電話の高機能端末と、PHSネット端末という構図なのですね。本当は。
で、デフォルトのままだとW-ZERO3[es]はとっても困ったちゃん、という話です。日本の携帯ユーザーは、日本の最先端高機能携帯端末を使ってるんですね。メールにしても、携帯ブラウザにしても、音楽を聴くにしても、ワンセグを見るにしても、もうそれこそ、抜群に使いやすく作ってあるわけです。それ以上の機能はないし、カスタマイズもできないようになっていますけど。それに比べて、[es]ですよ。デフォルトのままの使いにくさったら、もう、びっくりなんです。電話ひとつかけるのに、何工程やらせるつもりやねん、という感じです。欧米だと、まあ、それがスマートフォンだからさ、そのかわり便利じゃない、高機能じゃない、みたいなことでスルーなのが、日本じゃ、まあ許されないですよね。
携帯電話、フリーズしたことありますか。[es]は、フリーズします。予定表を使うっていったって、デフォルトのままのポケットアウトルックは、そりゃもうあっさりしたもんです。携帯の予定表のほうが、百倍便利です。なにせ、週間の予定なんて、青いバーだけの表示で、その予定が一見なにかわからない。で、スタイラス出して、バーをクリックすると文字が上に出るという感じなんですね。
ですから、これから[es]でレッツモバイラー、という夢を描いて使い始めると、なんじゃこりゃ、ってことになります。よく携帯ライクな使い心地という言葉がでますが、それはデフォルトのままでは、望むべくもありません。
じゃあ、やっぱ駄目じゃん、と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、そこでフリーソフト、シェアウェアソフトの登場です。もうね、このだめ端末をなんとか使いやすく、最高の端末にしようと日夜努力をされているソフトウェアクリエーターの方々が、日本のネット界にはいっぱいいるのですよ。そして、世界にも。ウィンドウズモバイルベースですから。電話帳ソフトも、スケジュラーも、ランチャーも、ネット関係も。すばらしいアイデアにあふれた、もう感嘆するしかないような使いやすくてクールなソフトが、驚くほどあるのです。プラグインみたいな、ちょっとこれ改善できないかな、というような縁の下の力持ち的なソフトもいっぱいありますし。で、その方々の努力の成果を使わせていただき、[es]をカスタマイズしてみると、あら不思議、もう二度と手放せないような、すばらしい情報端末ができあがるのです。
そのソフトクリエーターの方々の中には、やはり[es]の特長である、携帯ライクな操作感、すなわち表面のソフトキーで何でもやってしまえ的なことを目指してソフトを開発されている方々もいっぱいおられまして、そういうソフトの使い心地たるや、まさに神、なのですよ。OSのできることの限界を目指して、様々なことにチャレンジされている方もいらっしゃいますし、それを使わせていただくことで、ドコモやau、ソフトバンクの最新携帯にも負けない、というかまったく別物の情報端末になってくるんですね。もうね、冗談抜きで、私は、この[es]を使い出してから、手帳を持たなくなりましたから。意地を張って、無理に使わないようにっていうのではなく、本当の意味で、手帳必要なくなりましたから。
W-ZERO3[es]礼賛(4)に続きます
| 固定リンク
「W-ZERO3[es]」カテゴリの記事
- あの頃、僕らは確かに(2010.06.07)
- PHSの歴史を見ると、いかにコミュニケーションの基礎設計が重要かがよくわかります。(2009.10.06)
- WILLCOM 03は案外いいかもしれない(2008.12.28)
- いま、スマートフォンを買おうとしている人にウィルコムのW-ZERO3[es]をすすめる理由がなくなりつつあります。(2008.04.02)
- おもろうて やがて悲しき スマートフォン(2007.11.11)
コメント