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2007年8月19日 (日)

ブログ新規参入組として思うこと。

 何度か言ってきましたが、私にとってはブログは「同人誌」みたいな感じです。Movable Typeが標榜するパーソナルパブリッシング(最新のコピーではPublishing Platformとなっていますね)の「パブリッシング」の部分に案外共感を覚えるのも、そういう私の動機からかもしれません。本来は「パブリッシング」はジャーナリズムと言い換えてもいい部分があるのかもしれませんが、私にとっては「パブリッシング」=「出版」なんですね。

 出版と言っても、いわゆる書籍化とかそういうのではなく、何かについて書こうと思って、誰かに伝えたいと思うとき、やはり「出版」というシステムを使わざる得ないわけです。そこで、今までは「同人誌」ということになるわけですね。そうすると同人がいるわけです。なぜ同人がいるかと言えば、はっきり言えばコストと流通の問題ですね。編集とか印刷にはお金がかかるし、同じ興味がある書き手が集まれば、それに付随する読者も確保できる。つまり、かけたお金がある程度回収できる。それで、なんとか「同人誌」は成立しますが、そのバランスが壊れたとき、廃刊ということになるのですね。

 廃刊は、書きたいことを書く場所を失うことを意味します。書きたいことを、世の中のニーズに関係なく書ける場所を持つ人は、ごく少数です。あの吉本隆明だって、書きたいことを書くために「試行」という同人誌をごく最近までやり続けていたくらいです。

 そんなとき、目の前にブログがあったわけです。とりあえず書こうと思える便利さがそこにありました。私は、自分の仕事である広告のことと、ジャズピアニストのビル・エバンスのことを書きたいと思ったのですが、ウェブの世界には、それこそ私と同じような動機で書いている人たちもいて、それは、私が読んでいる範囲では、パチスロやW-ZERO3[es]だったりしたのですが(余談ですが、5号機になってから、読み応えのあるパチスロブログ、めっきり少なくなったなあ)、そういう人に習って私も書き始めようと思ったのです。

 例えば、ビル・エバンスについて今何か書くとすると、あんなに有名なジャズの巨人だったりする人のことでも、想定できる読者は少ないなと予想はつきました。今、ジャズは流行していないですから。それに、これだけ多様化している時代です。しかも、ウェブは、アップトゥデートで情報を消費するメディアになってしまっています。ビル・エバンスに今ものすごく興味のある人なんて、日本広しと言えどもごく少数だろうと。なんとなく、広告屋としての勘からも、そう思いました。

 実際、ビル・エバンスやスコット・ラファロ、三角形などの関連ワードを入れてgoogleで検索すると、私のブログは上位に来るわけですね。だけど、正直、そのエントリーはあまり読まれていません。大手ブロガーの何気ないエントリーの何千分の一くらいです。

 でも、私はそれが当たり前だなと思うし、だからこそ、ブログという同人誌は魅力的だと思うのです。そんな感じでも、廃刊の危機を迎えなくて済むのです、ブログだと。経済原理の洗礼を受けなくて済むのです。それに、お金をもらっているわけではないから、気楽に書けますし、不完全な仮説や思いつきのままでもとりあえずは記してしまえます。それは、Tristarさんの言葉で言えば「娯楽」の領域だから。また、私は「娯楽」の領域から生まれる質もあると思っています。

 それとね、広告の話だって、それほど読まれていないですね。広告業界は広いけど、有名クリエーターでもない私のしがない話などを求める人は少ない。多分、有名クリエーターだって少ないと思うんですね。いま、広告業界は疲弊してるから。それが、今のウェブの現状です。ウェブがある興味のもとにした村の集合として存在したのは、昔の話だと思います。今や、ウェブはマス領域な感じがします。だから、アクセスという点では、先行者利得や競争原理が働いてしまうし、まあ、それはしゃあないなと思うんですね。アクセスがなければ閉鎖しないといけないという規則もないしね。

 でね、私は、そんなブログがいいなあと思うんですね。アクセスが少なくても、私はきっとビル・エバンスについて、広告について、自分のペースでコツコツ書いていくことができるし、それを、ウェブに接続しているすべての人が読める状態にとりあえずは置けるのですから。それに、それがごく少数の人でも、中にはきっとしっかり読んでくださってくれる人がいると思いたいし、信じるしかないなと思うのですね。

 ブログというか、ウェブ新規参入組の私は、すこし寂しい考え方をはじめからしている嫌いがあって、ウェブでコミュニケーションというのに臆病なことろもあります。言ってしまえば、書きたいことを書ければいいや、なんてね。だから、ミクシィなんかも馴染めませんでしたし。でも、最近、コメントをいただいたり、トラバを送ったり、コメントを書き込んだりして、ああ、こういう感じがコミュニケーションなんだな、と思うこともあったりして。

 ニフティサーブやPC-VANから、2ちゃんねるをはじめとする掲示板、はてななど、これまでのウェブのコミュニケーションをまったく知らない新規参入組だからこそ、そんな感じが妙に新鮮だったりもするんですよね。こうしたエントリーを書いているのも、『CONCORDE』のTristarさんからいただいたコメントやエントリー(参照)からだったりしますし。不思議なものですね。

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