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2007年10月10日 (水)

プレゼンの時、声が震えて、心臓がバクバクして、汗が噴き出し、自分で何を話しているのかがわかんなくなって、会議室から逃げ出したくなることはありませんか。

 かつての私は、まさにそんな感じでした。プレゼンが大の苦手だったんですね。「プレゼンの極意」みたいなハウツー本もたくさん読みました。でも、駄目でした。クライアントのビルが見えてきたあたりから、胸が苦しくなってくるんですね。プレゼンが始まって、営業やマーケが流暢に話し、クリエイティブのパートになって、いざ話し始めると、あっ、やっぱり駄目かもしれないと気づいて、言葉に詰まって、涙が出そうになって、周辺が私の異変に気づいて、急に会議室がシーンと静まって、鉛のような重い沈黙の中で、このまま世界が消えてしまえばいいのにと何度も何度も思いました。

 大きなプレゼンだとなおさら惨めです。責任も大きいから。新人の頃、はちゃめちゃなプレゼンをして「君の言ってることはさっぱり分かりませんでしたが、広告はよく出来てるから、これで行きましょう」みたいな粋な得意先の方もいたりして、そのほほえましいエピソードを中心に笑い話にして書こうかと思いましたが、当然そんないい話だけではないし、悲惨な話もあるし、今、かつての私と同じようにプレゼンが苦手で苦手でしょうがない人たちもきっと読んでくれていると思うから、きちんと書こうと思います。こういう悩み、うまく話せる人には理解できないから、すごく孤独になってしまうんですよね。プレゼンでうまく話せない人は、そのことで、これからのキャリアを悲観的に見てしまうものだと思うし。かつての私がそうだったようにね。だから、この文章は、かつての私と、プレゼンが苦手なあなたに向かって書いています。

 今、私はプレゼンはそれほど苦手ではありません。というか、むしろ得意な方だと思います。かつての私は、自分がそんなふうになるなんて絶対に信じませんでした。先輩に「どうしたらプレゼンで話せるようになるのか」と聞いたりしました。その先輩は「慣れだよ、慣れ」と言いました。その先輩のアドバイスを聞いて、その頃の私は「絶対に慣れなんかで直らない」と思いました。でも、今こうして振り返ると、やっぱり慣れなんです。

 場数を多く踏むと、それなりにその後の展開が見えてきたりします。その数を増やすことは大切です。多くのパターンを体験すると、そこから学ぶことがあります。それは、驚くような展開などそうそう起こるものではないということなんです。ほとんどはある類型に収まります。あっ、このパターンだな、ということが読めるようになると、心に余裕が生まれます。プレゼンがうまくできないのは、自分に予期できないことが起こるんじゃないかという不安が原因です。要は、その不安の要因を取り除くことが大切なのです。簡単な理屈ですよね。でも、それには、場数しかないのです。試練だと思ってください。結構長いかもしれないけれど、いつか、うまくプレゼンが出来るようになります。あっ、今、抜けたな、と思うときが絶対に来ます。

 もうひとつ。あなたのプレゼンが下手くそだったくらいで、物事は大きく変わったりしない、ということを知ることです。世の中とかビジネスとかは、あなたのプレゼン下手くらいで変わったりするようなちんけなものではありません。それに、私もあなたも噺家ではありません。だから、話が下手でも、あがってしまってしどろもどろでも一向に構わないのです。それで、プレゼンしている企画なりのクオリティが下がるなんて、物理的には絶対にあり得ないのだから。あなたの話し方が下手くそだったために、パワーポイントのデータが変化するでしょうか。しないですよね。私たちは企画をプレゼンしているのであって、話芸をプレゼンしているのではないのです。一度、自意識過剰な自分を叱ってからプレゼンに挑んでみてください。前より、ほんのちょっとだけうまく話せる自分がそこにいるはずです。

 そして最後に。自信です。とことん考え抜いたと自分で思えるかどうかが大切なのです。プレゼンが上手にできない人は、嘘をつくのが苦手な人でしょう。嘘をつきたくても、顔に出るんじゃないか、とすぐに不安に思ってしまう人でしょう。そういうタイプの人は、相当な自信を持たないと、人前で話せないものなのです。いいかげんに考えたものでもうまく話せる。そんな才能が、あなたには欠如しているのです。あきらめて、企画を考え抜くことです。私の経験を話します。競合プレです。とことん考え抜いた案をプレゼンしました。得意先は、その案を採用しませんでした。けれども、「こういう考え方で、もう一度考えてもらえませんか。おたくに決めます」という言葉をいただいたのです。すべてがこんな美しい世界だとは思いません。けれども、とことん考え抜いたということは、それだけで、それは力なのです。

 今では、結構流暢に、得意先に自分の思いを伝えられる私ですが、いまだに、かつてのプレゼン下手の私が顔を出すことがたまにあります。そんなとき、こういうことを思い出すのです。「それは、いままでにも経験したパターンじゃないか。話が下手でも企画の質は変わらない。とことん考え抜いたんだから。」そうすると、ほんの少しだけ楽になるのです。プレゼンが苦手で、人知れず悩んでる、かつての私のようなあなたに、この言葉が届くことを願って。それでは、また。

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コメント

同じようなことかは分かりませんが、私はいまだにプレゼンが苦手なほうです。うまく話せない感覚は、久しぶりに100m走をしたら、思ったより足が前に出なくてつまづきそうになる感じです。伝えたいことが頭にいっぱいあるのに、完璧に伝えたい意識が強すぎて、順序良く話しはじめられなくなってしまい、うまく話し始められなくなったことを自分で分かってしまっていることで更に自分に追い討ちをかける…という悪循環に。
やっぱり、気合が入ってる時ほど、完璧にしたい意識が強くなってしまって、それなりに話ができていても、満足感は下がってしまいますね。
最近は、準備をキッチリしてから、直前に全く別の用事を入れて頭をリセットするようにして回避してます。直前に別件でしゃべりまくれば、そのままいいプレゼンになったり。いつまでたってもそれじゃあダメなのかもしれませんが(笑)

投稿: そうちゃん | 2007年10月11日 (木) 20:22

そうちゃんさん、ども。
会社の同僚とプレゼンの話をしていたら、彼なんかはドキドキはまったくしないし、言葉が出てこないこともないけど、緊張すると言葉を間違えるって言ってました。単語を間違えたり、妙な文法になってしまったりという感じらしいです。心はコントロールできるけど、口がコントロールできないということなのかな。

投稿: mb101bold | 2007年10月12日 (金) 22:07

こんばんは。
このエントリ、自分にはずしりと来ました。
今週、代理店人生初の大規模プレゼンをしなきゃいけなくて、、、食欲もなくなっている状況でしたが、、、
「場数を増やす」という意味で、当たって砕けてきます。
同業の若手を育てる良いブログですね。

ありがとうございます。

投稿: はな | 2008年2月20日 (水) 01:41

はなさん、こんばんわ。

プレゼン、がんばってください。当たって砕ける気になっているくらいだから、もう大丈夫。きっとうまくいきます。たぶん、ライバル会社ですが(笑)、いいプレゼンになることを陰ながら祈っております。

書いてて思いつきましたけど、うまいプレではなく、いいプレにするように意識するといいかもですよ。ではでは。

投稿: mb101bold | 2008年2月20日 (水) 01:56

こんにちわ。初めましてiatrusと言います。

私はプログラマーなのですが、最近、システムエンジニアというより営業な仕事が増えてきました。(セールスエンジニアと言えますね。)

そこでプレゼンをする機会ができ、来週までプレゼンを3つつくってきてくれ、なんて営業のかたに頼まれました。

プレゼン自体、大学の論文発表以来で緊張しています。でも、mb101boldさんの貴重な意見でどうにか、できそうです。

まあ、プログラマー自体の仕事が少なくなっているので、ありがたい機会なわけなのですが。

投稿: iatrus | 2010年12月11日 (土) 12:08

プレゼンは、つきつめると考えたことを相手に伝えるということですから、そこにほんとは過剰な演出とかも必要はありませんし、緊張したってかまわないと思うんですね。
大事なことを相手に伝えるわけですから、そりゃ、緊張もするってもんです。
それが自然だと思うんです。がんばってください。陰ながら応援しております。私もがんばります。

投稿: mb101bold | 2010年12月11日 (土) 13:18

こんにちは。

私はプレゼントいうか、人の前で話す事自体緊張して、話したいことも話せず、良くわからないことも口走るし、すごく悩んでいます。

ですが、今日このエントリを読んで勇気が少し、湧いてきました。

「ありがとうございました。」となんだか言いたくて、コメントさせていただきました。

投稿: poooooon | 2011年4月26日 (火) 18:21

こんにちは。
こちらこそ、ありがとうございました。応援しています。

投稿: mb101bold | 2011年4月26日 (火) 18:56

突然ですが感謝します。
自分でも少しだけわかってた部分がよくわかりました。場が少ない職場ですが、頑張ります。
ああ僕のような人間がみんなこのページにたどり着けばいいのに…

投稿: 原人 | 2013年10月29日 (火) 07:48

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