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2007年10月 6日 (土)

ある写植屋さんのこと。

 今や完全に広告制作はコンピュータ化されています。新聞や雑誌などの平面媒体は、マッキントッシュにインストールされたイラストレーターやフォトショップで、写真もすべてデジタルデータで作業します。テレビCMは、専用のワークステーションで。映像素材はすべてデジタル処理されています。撮影のときはフィルムを使ったりしますが、編集段階ではすべてデジタル化するんですね。

 ほんのちょっと前は、それはすべて手作業だったんですよね。平面媒体だと、ロットリングという金属の管で出来た線が正確に引ける特別なペンや三角定規、コンパス、デバイダーを使って線を引いたりして、文字は写植屋さんに打ってもらって、それをペーパーセメントという糊で貼り付けたりしていました。色もペンで指定を入れるだけ。色チップをつけて。写真は、プリントをして、そのプリント(反射原稿と言います)を、色とか写真の位置とかの指定が書かれた版下と一緒に持っていて、印刷所であわせて、それでやっと広告ができあがるのです。

 そんな感じですから、広告の制作チームには、お世話になっている写植屋さんがいました。写植屋さんは版下屋さんも兼ねていることが多く、我々がラフに書いた版下の元になるスケッチ(指定原稿と言います)を正確な版下にしてくれるんですね。広告の現場は急な直しとかも多く、写植屋さんには深夜早朝かかわらずご迷惑をかけっぱなしでした。私がある百貨店の仕事をしているときにお付き合いしていた写植屋さんは「エニータイム」という名前でした。と言ってもお一人でやられている事務所でしたが。

 エニータイムという名前を名乗るだけあって、我々が困り果てていても、いつも笑顔で対応していただいて、現場にとってはすごく心強い人でした。経験で言えば、現場のスタッフよりずっと長く、いろいろと教わることも多かったのです。

 広告制作の現場が次第にマック化されていって、エニータイムさんに頼る場面も少なくなっていきました。どうしても使いたい写植を打ってもらうだけになったりしました。あるとき、エニータイムさんがお見えになり「廃業することになりました。写植機も売ろうと思うんですよね。でも売れなくてね」とおっしゃいました。その頃、写植屋さんは、どんどんマックに切り替えていったのですが、エニータイムさんは、その道を選ばれませんでした。

 それから半年ぐらいたってから、私の住んでいる街の商店街で、ばったりとエニータイムさんと出会いました。お久しぶりです、どうしてこんなとこに、と私が聞くと、「ええ、ここにいい鍼灸の人がいましてね。この機会に体の悪いとこをなおそうと思いまして」とおっしゃいました。そうですか、じゃあお元気で、みたいなことを言って、それっきりお会いすることもなくなりましたが、もしこの文章をエニータイムさんが読まれたらなあ、と思うのですが。エニータイムさん、お久しぶりです、お元気ですか。

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