変えないほうが、ほんとはたいへん。
変えることは、案外、簡単だったりします。ポジティブな理由がつけやすいし、なんとなく前向き感がありますし。一方で変えないことは、理由がつきにくいし、なんとなく保守的だねえ、なんていろんな人から言われそうですし、それに変えないことで儲かる人も少ないですし。
でも、本当は変えないほうがいいことも世の中にはたくさんあるんですよね。スケッチブックやルーズリーフで有名なマルマンという会社のウェブページを見ながら、そう思いました。ちなみに、ゴルフクラブで有名なマルマンとは別の会社です。写真は、そのウェブページにあったスケッチブックのバナー画像。この黄色と黒の表紙、見たことある人も多いかもしれません。絵を描くのが好きな人は特に。
広告屋さんは、変えましょうと言いたがる商売です。変えましょう、から始めないと、何も始まらないとこも多いんですね。競合コンペで、今までのままでいいんじゃないですか、なんて言えないんですよね。このスケッチブックのデザインって、見た目は、はっきり言って少し古くてやぼったい。普遍的でベーシックな、長持ちするデザインでもない。デザインをリニューアルするべきかどうかの検討材料に何度もなってきたことだと思います。きっと、私たちのような広告屋さんからも、何度も提案を受けたことでしょう。
でも、このスケッチブックは変わらなかった。スペシャルサイトを見ていただくと、その変わらなかったことを祝福したい気持ちになってくると思います。ウェブ広告としては、新しい手法やテクノロジーを使っているわけではないけど、とても素敵です。真面目に、誠実に、商品を語っている、すごくいい広告だと思います。愛情がこちらに伝わってくるんですよね。
どんな人がつくったのかはよく知らないけれど、これを作ったマルマンの人と、これにかかわった広告マンは、幸せな仕事をしているなあ、と羨ましく思います。50周年、おめでとうございます。そんな言葉を、多くの人に愛されてきた、この黄色と黒のスケッチブックにかけてあげたくなりました。
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