紅白歌合戦を観ながら、いろいろ考えました。
大晦日のNHK紅白歌合戦。鶴瓶さんと中居さんが司会でしたね。鶴瓶さんは、本来、ああいう国民的で立派な大番組は苦手な人でしょうから、そのキャスティングは意外でした。大阪で青年期を過ごし、「鶴瓶の子供」として育った私としては、少々感慨深いものがあります。鶴瓶さんも、今回の出演は、いろいろと考えてのことでしょう。そのことについても番組内で触れられていましたね。
紅白歌合戦を観ると、今の日本という国が公式に認める価値観の上限が分かるような気がします。お笑いの上限はムーディー勝山さんなんだな、というように。かつてのニューミュージックは、そうした国が公式に認める価値観の引力に対しては頑なでしたよね。今だに、多くのベテランミュージシャンは出演を辞退していますし。その点では、浜崎あゆみさんやaikoさん、大塚愛さんをはじめとする若いミュージシャンの行動はしなやかです。紅白歌合戦的世界観と自分の世界を、うまく折り合わせる柔軟性がありますよね。
国が認める価値観の上限まで引き上げて、その中で、現在テレビができる最大限のエンターテイメントで魅せるのが紅白歌合戦の魅力ですよね。大河ドラマもそうですが、現在のテレビエンターテイメントの最高水準があると思います。民放であれば恥ずかしさを感じるような王道を、現在の最高水準の技術によって魅せていきます。民放なら、そこはセンスで逃げるでしょうね。(そういう意味では、「朝まで生ツルベ」という鶴瓶さん出演の年末特番は、今の民放の最も良質な部分を示していたと思います。)
鶴瓶さんは、民放が演出する、紅白歌合戦と同種の恥ずかしさは、徹底的に壊してきた人です。例えばフジの27時間テレビ。しかし、今回の紅白は、鶴瓶さんは壊さなかった。ある種の敬意を持って、本物に対して接していたように思います。これは、なんとなく紅白歌合戦自体が、その恥ずかしさに対して自覚的でありつつ、その恥ずかしさを受け入れつつ王道であろうとしているからなんじゃないか、と思いました。
新幹線の車窓に見えた富士山。広告看板と工場を前面に、遙かにそびえる富士の姿。その美しさは、富士山自身が、この混沌とした現代と自身の姿の違和感、その恥ずかしさを受け入れつつ、なおも現実に迎合せずに気高くあることから来る美しさなのではないかと思いました。理想化された想像上の富士山ではなく、現実の富士山のアンバランスな美しさこそが、富士山の美しさの本質であり、なんとなく嫌悪しつつ惹きつけられる富士山の魅力ではないかな、と思いました。それは、紅白歌合戦の感動と、どことなく似ているような気がします。
ここには、やはりある種のこの国の成熟があるんでしょうか。そこから先の論議は苦手なので、少しずつ考えていこうかな、と思っています。やっぱり、いろいろと勉強しないといけないなあ、なんて新年らしいことを思いますねえ。せっかく面白そうな考えが生まれても、勉強してないと先へは進めないですね。今年は、いろいろ勉強しようと思います。あけましておめでとうございます。本年も、当ブログをよろしくお願いします。
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コメント
まぁ、昔の人たちが勘違いしてたんですね。
そういう、ミュージシャンのかっこよさなんて、今からみりゃ、おかしいですよ。
みんな年取るとそれに気づいて丸くなるんですね。
最近の浜崎とかは、難しいこと考えてないんですよ。きっと。
民法はまだ、視聴者がちょっと子供なんでしょうね。
投稿: | 2008年1月 1日 (火) 12:30
民放は民放で面白いですけど、なぜか大晦日は紅白を観てしまいます。
ガキの使い、視聴率はどうだったんでしょうか。去年は快挙といってもいいくらいの視聴率でした。
アーチストがテレビに出ない時代がありましたよね。そういう意味ではみんなのテレビ観もずいぶん変わったもんだなあと思います。
投稿: mb101bold | 2008年1月 1日 (火) 19:35
はじめまして!
大変、興味深く拝見しました。
今年の紅白は、鶴瓶さんが、音楽をそしてアーティストの想いを大切にしている姿勢が視聴者の心を掴んだと思います。
もちろん音楽そのものや演出もですが。
過去の記事も良かったので、また来ます☆
投稿: クリア | 2008年1月 2日 (水) 12:46
鶴瓶さん、よかったですよね。途中はらはらしましたけど。いつ出すのかななんて(笑)中居さんがいるからちょっと安心でしたけど。今後ともよろしくお願いします。
投稿: mb101bold | 2008年1月 2日 (水) 14:57
あけましておめでとうございます。
私は紅白をみないで大晦日を過ごすようになってから、考えてみれば二十年以上になります。
ですから、紅白を語る資格などありません。
が、しかし、何故頑なに「紅白をみない」ようにしてるのか・・・そういう自分に興味を覚えました。
最初に思い浮かぶのは、価値観の体系を押し付けられたくないという思いでした。
NHK的な価値の体系です。
NHKの不思議な大衆迎合主義というか、権威主義というか、今ではそんなものはないのかもしれませんが、二十数年前に感じた不快感はそれでした。
いつか「紅白」を観る機会があるかもしれませんが、そんな未来が楽しみでもあります。
今年も、どうぞ宜しくお願い致します。
投稿: チャーリー | 2008年1月 2日 (水) 18:01
紅白はこの頃見てます。馬場俊英 いい歌でしたね。ネットで買いました。
津軽海峡冬景色を大きな音で聞いたら 奥さんに翌朝 怒られました。
はてなより縁あって来ました。
投稿: gesel | 2008年1月 2日 (水) 19:12
チャーリーさま。あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします。
NHK価値観と言えば、昔、民放が共同でゆく年来る年をやっていた頃はその対比が面白くでていましたよね。厳かに新年を迎える国民と、はしゃぎながら楽しく新年を迎える国民。
その頃は良くも悪くも二元論的な社会だったような気がします。その頃のミスターNHKは気くばりおじさんでした。
私もあの頃はあまり好きではありませんでしたが、今そうでもない自分が少し不思議ではありますね。歳のせいなのか社会が変わったのか。どうなんでしょうね。
投稿: mb101bold | 2008年1月 3日 (木) 02:00
geselさま、はじめまして。
そうですよね。紅白ではじめて知る歌はたくさんあります。昔とは紅白の位置づけは変わってきたのかもしれません。
津軽海峡冬景色を大音量で聴きたくなる気持ちすごくわかります。
石川さゆりとか森進一とか、ほんと世界の人たちにじっくり聴かせてあげたいと思います。まさに、ジャパニーズソウルシンガー。あの歌声は世界に通用すると思います。
拙いブログですが、今後ともよろしくお願いします。
投稿: mb101bold | 2008年1月 3日 (木) 02:18
初めまして。茂木先生へのトラバで読ませて頂きました。(私も「中居くん温泉」シリーズ見ていました)
鶴瓶師匠の紅白への敬意は、長年見続けてきた人、更に人情家である方ならば、知らないうちに心の隅に持っても不思議ではないものでしょうが、今回は中居くんのレクチャーの影響もあったかもしれませんね。
初めから「ポロリ」など考えてはなくても、何かをしたい芸人魂。けれどもそれが「ギリギリアウト」になってはいけないのですからね。
その辺りのルールを中居くんがレクチャーしただろう事は容易に想像出来ます。
その上での2人のあ・うんの呼吸、画面が生きてました。
一部のミュージシャンが出演拒否するのは、カッコ悪い応援に出されるのが嫌な為もあるようですが、今回のような演出ならばOKかもしれませんね。
4日の「面接」ですが、これは司会者対出演者、なのです。どんなベテランも1人10分ぐらい近況を交えて談話して、それを司会者は歌手紹介のヒントにするようです。これが2日間、リハが2日間、当日、と司会者は本番まで連日5日NHKに拘束されます。他の仕事もしながらの師匠と中居くんは本当に寝る間がないですね。
投稿: lee | 2008年1月 5日 (土) 16:05
leeさま、はじめまして。
そういえば今年は白組紅組の応援合戦があまりなかったですよね。面接の件、そういうことなんですね。当該エントリに追記しておきます。ご指摘ありがとうございました。
それにしても、ほんとすごい拘束なんですね。鶴瓶さんは年末も生つるべで、その後もハワイで生放送だったし。
それと今回は中居さんがいたから、鶴瓶さんの持ち味が生かされたんでしょうね。プロだなあとほんと思います。
これからもよろしくお願いします。
投稿: mb101bold | 2008年1月 5日 (土) 17:53