新聞広告がつくりたくて、つくりたくて。
3月31日から、朝日新聞、読売新聞など複数の新聞の文字が大きくなります。そのため、記事は15段組みから12段組みに変更になるそうです。新聞は、現在、1ページあたり文章が15段組まれた基本レイアウトになっています。だから、全面広告が全15段、センターの2ページ見開きは全30段、夕刊のテレビ欄の下が全10段という名称になっています。今回の発表があって、広告も全面広告が全12段に変わるのかなと思っていましたが、その変更はなかったようです。従来通り、全15段とのこと。
1段あたりの単価で広告掲載料が規定されているので、それを変更するといろいろ混乱が起きるとの判断かもしれません。広告の実務では、1ヶ月間で計120段出稿、というように段で計算しています。ですので、その基準が変わることは、けっこう大きなことなんですよね。
今回の記事の段数変更では、新しいスペースも開発されるようです。そのひとつが15段換算で全7.5段、ハーフサイズという枠。半分に折ると、全面広告に見えるサイズなので、これは人気が出るかもしれませんね。
私は、大阪時代の駆け出しの頃はファッションや流通の仕事ばかりやっていましたので、広告は店内および駅貼りポスターばかりで、東京にやってきた時、なんとか新聞広告の仕事ができないもんだろうかと悶々としていました。あの頃、新聞広告という舞台が、すごく輝いて見えていたんですね。幸い、東京で日本橋にある老舗百貨店の仕事に就くことができ、今度は、来る日も、来る日も、新聞広告ばかりになりました。計算したことはないけれど、今まで新聞広告を100本以上作っているはずです。いや、100じゃきかないかもしれません。このブログでさえ、本エントリで234本目なんだし。
社会に対して、企業の志を打ち出していくといった企業広告の分野では、テレビCMやネット広告にはない魅力が新聞広告にはあります。また、ネットが強くなったと言われる現在でも、新聞のリーチと訴求力は魅力です。広告制作者にとっては、新聞広告は広告の故郷みたいな存在で、広告の基本は新聞にあり、みたいな感じが私の中にはあります。もしかすると、若い制作者は、そういう感覚が薄れているかもしれませんが。
新聞広告は、言葉が活躍できるメディアでもあります。ビジュアルとキャッチで惹き付けて、ボディコピーをじっくり読ませる、そんな落ち着きのあるどしっとした広告媒体です。今のように、情報がどんどん消費されていく環境の中で、この新聞広告の魅力は、もしかすると再び見直されるかもしれないと私は楽観的に思っているんですよね。というか、多様化する広告媒体の中で新聞広告がその存在意義を主張するためには、新聞という媒体が持つ、そんなテレビやネットにはない魅力を打ち出していく以外、生き残る道はないだろうなと思います。
新聞広告がつくりたくて、つくりたくて、と思ってきた広告制作者として、今回の新聞紙面の改革の成り行きを注視してきたんですが、ウェブを見る限り、あまり話題になっていないようですね。なんとなく、それはさみしくもあり、複雑な気分です。まあ、愚痴を言ってもしょうがないので、チャンスを伺いながら、新しい新聞広告の魅力を作り出したていきたいと思っています。がんばれ、新聞広告。私もがんばります。
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コメント
100本以上、すごいね〜。笑
こっちは、どちらかというとポスターや
雑誌が多いな〜。うらやましい。笑
投稿: のばらパパ | 2008年2月28日 (木) 10:44
どもです。
いやいや、よく考えてみると案外多いもんですよ。業種にもよるけど、けっこう記憶の中でうもれてる新聞広告の仕事、あるもんですわ。
でもまあ、レスポンスが問われるキャンペーンが多いし、最近薄利多売気味かも。反省してます。笑
投稿: mb101bold | 2008年2月28日 (木) 11:00