バーチャルスタジオって、知ってました?
やりかた次第では広告表現の幅が広かるかもしれないな、と思いましたので、ご紹介します。まあ、今やお金をかければたいていの表現は可能ではありますので、予算の中でどう思え描くクリエイティブを実現していくかっていう観点からのご紹介ですので、あしからずですが。
紹介したいのはバーチャルスタジオというもので、テレビの番組制作なんかではおなじみの技術です。NHKのサイエンスZEROとかでもそうですね。私、これをはじめて利用しまして、なるほどなあ、よく考えられているな、と思いました。
基本的にはブルーバック(写真はわけあってグリーンバック)のスタジオ撮影なわけです。CGの場合、よく使いますよね。ブルーの部分が抜けるので、人物や物のマスクを切って合成したいときに使います。撮影は、すべてこのスタジオを使います。写真では人物とテーブルが本物で、それ以外のセットはありません。
カメラは定点が1つと、クレーンが1つ。そこそこの大きさがあるスタジオでしたので、クレーンはかなり上からのアングルが撮影できます。まあ、ここまでは普通のオールCGのスタジオものとかわりはありません。普通のやり方は、こうした人物や物をブルーバックで撮影して、映像編集スタジオでCGと合成するやり方ですね。
でも、この普通のやり方の場合、けっこうカメラアングルが制限されてくるんですね。なぜかというと、カメラがぐぐーっと動くと、CGもぐぐーっと同じように動かないといけなくなるんですね。人物のカメラアングルとCGのカメラアングルが少しでもずれると、違和感が映像に出てしまいます。照明との複雑なからみもありますし。そのためには時間とお金をかけるか、もしくは、アングルを少なくするかしかありません。
私の場合、低予算の場合は、あえて演出コンセプトをシンプルイズベストにしていきます。引き算ですね。人によりますが、私は、予算がないのに豪華を目指して、それが予算の関係でかなわなくなる、みたいな映像は好きではないんですね。なんとなくその挫折感が貧乏くさくて。だから、あえて引き算で考えます。そうすることで、シンプルな映像に意図が感じられるというわけです。
で、このバーチャルスタジオ、何が違うかというと、カメラからはこんなふうに見えるんですね。これがミソです。あらかじめCGで作り込まれたスタジオとリアルタイムで同期しているんですね。カメラが動くと、リアルタイムでCGも動きます。スタジオを俯瞰する映像でも、完全にアングルが人物や物と同期しています。
もうひとつこのバーチャルスタジオの面白いところがあって、たとえばプレゼンテーションっぽい映像の場合、写真のようにセンターにバーチャルなスクリーンが宙に浮いた形で出現しますよね。このスクリーンの中身も、カメラアングルと同期するんですね。効率的にこのバーチャルスタジオを使用するためには、スクリーンの中のCGなんかを先に制作しておくといいと思います。販促物での使用の場合、なかなかコンテンツを先に制作するのは難しいのが現状ではありますが。
スタジオはあらかじめ作り込まれたパターンから選ぶことができます。もちろん、完全にオリジナルでつくることもできます。今回はパターンから選んで、それをアレンジしています。説明ビデオなんかの場合は、対象物を拡大して回転させたり、それを司会者が指差して説明したりする演出があったほうが、わかりやすいものが作れる場合があります。いまの時代のCGの使い方としては、豪華を目指すより、わかりやすさのために使う、という場合が多くなっているのではないでしょうか。パワーポイントなどのプレゼンよりビデオが勝るとすると、まさにそのわかりやすさですしね。
このバーチャルスタジオ、いわゆる実写もののアニメーション、たとえばクレーンアニメや人形アニメなんかに応用できるかもな、と思っています。これまで、予算や時間を考えると、どうしても実写アニメの世界は小さくなりがちでした。つまり、作り込む世界の面積以上の世界は作れないんですね。
しかし、ある程度詳細に映る世界を実際につくりこんで、その背景をCGにすれば、例えば、ジャングルとかそういう世界であっても、カメラが俯瞰でそのジャングル全体を見渡すようなスケールの大きな映像も可能になるかもしれません。ずいぶん昔に、そんな実写アニメのCMをつくったことがありましたが、その時は、カメラアングルを限定しました。このバーチャルスタジオを応用すると、もしかすると、実写アニメが持つ温もり感を保持したまま、広大な世界を描けるかもなあ、と思っています。
それと追記ですが、人物の影などは、編集でかなり緻密に追い込んでいかなければなりません。というか、この手のオールCGものは、そのあとの編集の丁寧な作業がクオリティを決定してしまいます。今のCGは、別に現実と見まがうような世界をつくるためにといよりも、CGはCGとして、よりスムーズにコミュニケーションできるかどうかのために使うのが一般的であるような気がします。見る人はそのへんの仕組みはよく知っていますから。だからこそ、CGだなあっていう違和感だけは避けたいですよね。
今回、使用したのはイマジカさんのシステム(参照)です。ページを見ると、06年からサービスを提供されているようですね。一度、お試しになってはいかがでしょうか。
| 固定リンク
「広告の話」カテゴリの記事
- 2年前に流れていたテレビCMから「かんぽ生命不正販売」を考える(2019.09.11)
- 映画と広告と文在寅政権(2019.09.06)
- 本を書きました。『超広告批評 広告がこれからも生き延びるために』池本孝慈(財界展望新社刊・9月1日発売)(2019.08.21)
- 『世界一のクリスマスツリーPROJECT』について僕が考えていたこと(2018.01.04)
- 東京糸井重里事務所を退職しました(2012.01.26)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント