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2008年3月 2日 (日)

お金の話をします。

 日本の広告代理店の収益構造は、まだまだコミッション(手数料)主体です。一頃、コミッションではなくフィーに移行すべきだという論議が活発でしたが、一部を除いて、ほぼ挫折してしまったと言ってもいいのではないでしょうか。

 欧米では、ずいぶん前からフィー主体に移行していて、それをもって日本の広告業界の後進性を指摘する人も多くいるようです。しかし、多くはタイムフィーだったりするのが現状ですし(しかし一部では純粋なフィーでやっているところもあります)、タイムフィーという概念は、戦略構築やデータ分析には適応できそうな気がしますが、クリエイティブ(広告制作業務)とは少しなじまない部分もあって、結果的には、暗黙のタイムフィーの上限が双方で決められていることが多いようです。それに、タイムフィーを厳格に適応すると、揉める仕事ほどコストがかかるようになってしまい、これはこれで矛盾を抱えることになってしまいます。

 けれども、媒体コミッション依存からの脱却ができているだけでも先進的とも言えますけどね。(余談ですが、フィー制とコミッション制の厳密な論議をしようと思えば、日本と欧米の広告代理店のルーツの違いを考察しないといけないといけないような気もします。日本の場合、なぜ広告代理店と言うか。それは、媒体社の広告販売の代理業をルーツにしているからです。)

 私は、理想を言えば、この仕事をするにあたってこれだけ頂きますという、フィー制を支持します。タイムフィー制ではなく、フィー制支持。時間がかかろうが、すぐにできようが、同じ値段。揉めたら揉めたで、何時間でも納得するまで会議もしますし、緻密な戦略が必要なら、時間をかけて戦略を構築しますし、すぐに結論が出せるなら、それはそれでよし。すべてはアウトプットというか結果なんだし。もちろん実費はコミッション一切なし。そんな感じで仕事をしたいなあと思っていますが、現実は厳しいです。

 2005年に広告βさんが「フィーは死語になるのか」というエントリを書いていらっしゃいます。すごくわかりやすく、その頃の空気を十分に伝えています。あれから3年経った今もあまり状況は変わっていないようです。しかも、あの頃より、セントラル・メディア・バイイングもずいぶん進みましたし、一頃の上位広告代理店の生き残り競争で、メディアコミッションも限界まで下がって、一度下がったコミッションはなかなか上げにくいのが人情ですので、ますます消耗戦を強いられる感じです。

 大局的な論議は苦手だから、こんな現状で厳しいなあと思っていることなど。これまではコミッション前提だったから、制作費は結構低く抑えられていました。簡単に言えば、制作で赤が出ても、メディアコミッションから出せばいい、みたいな感覚です。ひと昔前は、そんな感じだったと思います。しかし、コミッションが下がり、にもかかわらず、制作費は前の水準のままだと、どういうことが起こるか。簡単に言えば、制作費が足りなくなるんですね。

 また、セントラル・メディア・バイイングの影響で、媒体は別の広告代理店で、クリエイティブだけ担当という仕事も多く、そういう仕事は、本当にお金の面で苦労をすることが多いのです。ほんと、消耗します。最近は、仕事の前に、見積もりをコストセンター(購買部)で吟味されることも多く、その際の基準は、メディア・コミッションありきで、制作費はサービスという感覚でやっていた頃の基準なので、仕事が始まること、すなわち、お金の苦労が始まること、なんてことも。

 今までいいかげんにやっていたツケなのかもしれませんが、このままだとクリエイティブ業界が疲労して、つぶれてしまうんじゃないかと思うことがよくあります。広告代理店としても、ビジネスとしてできませんと断るわけもいかず、その矛盾がアンカーであるクリエイティブに負わされるんですね。私は広告代理店の社員ですから、自分で完結できれば、それは負おうと思うんですが、制作会社さんやフリーランサーの方にも影響することですから、自分だけの問題ではありませんし。

 こういう先立つものが不安な現状は、仕事に誠実であればあるほど苦しくなる矛盾を抱え込むことになるんですね。これがいちばん辛いです。これまでは、ある意味で、企業の宣伝部がお金の責任を持っていましたから、お互いのあうんや人情でいろいろと融通がきいたのですが(お金がないなら別の解決方法を一緒に考えましょという意味です)、今は、お金の責任は宣伝部が持っていないことも多いので、いい意味でも悪い意味でもドライです。

 そうなると、フィー制を歓迎する立場にありがちなクリエイティブまで、媒体扱いが多いコミッションの仕事を肯定するようになってくる。そんな空気が、2008年の空気ではないかなと思います。俺さあ、鶴の恩返しじゃないけど、もうこれ以上、抜く羽がないよ。そんな声をよくききます。私なんかも、次の仕事ではきっと、といいながら無理をお願いしてばかりの毎日です。フィーという言葉は、本当に死語になるかもですね。

 うーん、なんか暗いなあ。私の広告の師匠がおもしろいよと言っていた、上田正樹さんの本を読んでも(参照)、音楽を制作するお金で苦労をした、結構リアルで切実な話がありましたし、あのオフコースだって、Song is Loveというアルバムからプロデューサーが音楽制作に理解がある武藤さんに変わったとき、スタジオ使い放題、トライアングルもカスタネットも入れ放題なんだよ、とうれしそうに話していたし、分野が変わっても、表現とお金の問題はあるんでしょうけどね。それをうまいことやるのも才能なんでしょうし。書いていて暗くなったので、投稿しないでおこうかなと思いましたが、まあ、これもひとつの時代の記録でもあるので。

 では、みなさま、よい日曜日をおすごしください。私は仕事ですけどね。とほほ。

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