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2008年3月 8日 (土)

仰げば尊し

 ダウンタウンの浜田さんが「理想に燃えて悪いんかい」と叫んでいます。土曜日の昼のテレビはドラマや映画の宣伝番組が多く、ついついぼんやり見てしまいます。この浜田さんが主役のドラマは「夢の見つけ方教えたる!」という教師もののドラマです。浜田さんの役どころは、スタジャンにサンダルという出で立ちの熱血小学校教師。脇を固めるのは、感情を見せずに淡々と教師の業務を行う女性教師に広末涼子さん、マニュアル主義の若手教師役に森山未來さん、などなど。今日の夜に全二話の第二話がフジテレビ系で放映されるそうです。

 そういえば、なんだか最近、こういう熱血ものが多いようです。日テレでやっていた「斉藤さん」というドラマも、駄目なものは駄目、悪いことを悪いと言って何が悪い、と言う主婦が主人公でした。こういう熱血な感じのものが出てくる背景には、世の中のぼんやりした息苦しさがあるのでしょうね。

 感情を殺して醒めた目で世の中を過ごしたり、マニュアルを信じてそれに行動を当てはめてリスクを減らしていくといったことは、今の時代、多かれ少なかれ誰にでもある心のあり方で、そんな時代だからこそ、浜田さんが「理想に燃えて悪いんかい」と叫ぶ姿に共感と憧れを抱くのかもしれません。

 ある意味で、この熱血の系譜は、テレビドラマの王道でもあるので、こうした傾向と時代の空気をつなぎ合わせるのも違うのかもしれませんが、「女王の教室」というドラマが放映された2005年から3年経って、世の中はまた違って来たのかもしれません。

 天海祐希さんが主演の「女王の教室」というドラマは、最初、そのあまりの過激さからスポンサーが提供テロップの表示を見合わせるなど、いろいろと話題になりました。この主人公の教師は、クールで感情を見せないにもかかわらず、熱血であり、かつPCで全生徒のデータベースを作るなど、マニュアル主義的な傾向もあるという不思議なキャラクターでした。彼女が生徒たちに言っていた台詞は「いいかげん目覚めなさい」というものでしたよね。

 あのドラマは珍しく全話を通して見てしまったほど夢中になったドラマでした。考えさせられることも多かったドラマです。あのドラマの最終話では、生徒たちが「仰げば尊し」を自主的に歌うんですよね。この歌は、「我が師の恩」と続きます。そんな教師を偉い人だとする内容から(それだけでなく立身出世を肯定する内容とかもありますが)公立学校では久しく歌われなくなった歌でもありました。

仰げば 尊し 我が師の恩
教(おしえ)の庭にも はや幾年(いくとせ)
思えば いと疾(と)し この年月(としつき)
今こそ 別れめ いざさらば

互(たがい)に睦し 日ごろの恩
別るる後(のち)にも やよ 忘るな
身を立て 名をあげ やよ 励めよ
今こそ 別れめ いざさらば

朝夕 馴(なれ)にし 学びの窓
蛍の灯火 積む白雪
忘るる 間(ま)ぞなき ゆく年月
今こそ 別れめ いざさらば

 私は、「仰げば尊し」と言えば、遠藤ミチロウさんのカバーが印象に残っています。もはやあの歌は、社会のカウンター的な価値観になってしまったということなんですよね。あのドラマが問うていたことは、プロの教師とは何か、みたいなことで、最後に天見さん演じる教師が再教育センターに再び入れられてしまうことからも、プロの教師という価値観も、もはや社会のカウンター的な価値観でしかなくなってしまったことを暗示していました。

 なんとなく、本当のことは、もうユーモアやファンタジーでしか語れなくなったのかもなあ、なんて思ったりもします。あの過激な遠藤ミチロウさんのパフォーマンスで表現される、本当のやさしさだったり、人を思う気持ちだったり。だから、多くの教師ドラマに出てくる熱血教師は、スタジャンとか着るわけですよね。でも、地味な服来てても、見栄えは大人しくても、心は熱血ってのもたくさんいるとは思うんですけどね。まあ、でもそんな感じだとドラマとしてはわかりにくいんでしょうね。


追記:「夢の見つけ方教えたる!」というドラマ、いいドラマでしたね。浜田さんもよかった。森山未來さんもなかなか。再放送とかもきっとあると思いますので、見逃した方はぜひぜひ。

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