残るもの。残らないもの。そして、著作権。
私がつくっている広告なんかもそうですが、けっこうはかないものです。タレントさんや写真、イラスト、原盤がからむ音楽をつかっている場合は、使用期限が契約によって定められていますので、期間を過ぎると使用できません。なので、オンエアや掲載が終わり、使用期間が過ぎると、その広告は世の中の人の目に触れることはありません。作品としての展示は除くと定められることはありますが、広告主のウェブサイトから消えることも多く、広告主や広告会社、媒体社の倉庫、そして、クリエーターのハードディスクやポートフォリオの中で眠りにつくことになります。
私は、ラジオが好きですが、多くのラジオ番組もそうです。今もときどき、昔、ラジオ大阪で日曜深夜に放送していた「鶴瓶・新野のぬかるみの世界」を聴きたいと思うのですが、それもなかなか難しいようです。
法的な問題はありますが、ウェブというテクノロジーが一般化して、YouTubeができて、そこに、かつてのテレビ番組がアップされていたりします。たとえば、関西テレビが深夜に放送していた「夢の乱入者」という音楽番組。関西ローカルだったので、全国の人は知らない人も多いと思いますが、今思うと、奇跡のような番組でした。
ギタリストの渡辺香津美さん、ベーシストの清水興さん、ドラマーの東原力哉さんなどがハウスバンドを務め、ゲストとセッションするという構成の番組でした。音楽好きの人なら、このハウスバンドのスペシャル感はおわかりいただけると思います。日本を代表するギタリストと関西が誇る最強リズムセクション。いま、YouTubeで見られることが、涙が出るほどうれしいです。
海外のもので言えば、ビルエバンスなどのジャズ映像。これは、すごいと思います。こういう映像を見るためには、今までならどれほどの努力が必要だったのか想像することさえ難しいほどです。エバンスについて、いろいろと調べていますので、この有り難さは身にしみます。
本やCDは、絶版や廃盤があります。市場原理だからしょうがないとも言えますが、時代は変わります。その本やCDの価値が再発見されるかもしれない時代になったとき、その本やCDは世の中になくなっている。そんな理不尽な状況は、あまり好ましい状況ではないと思います。
私自身、自分が制作にかかわったキャラクターなど権利関係で、著作権まわりのことにかかわることがあります。そうした体験からの実感ですが、この著作権まわりのことにかかわると、上記のような希望(また、逆からの希望もあるでしょう)だけでは語れない問題がたくさん出てきます。著作人格権と著作権、工業所有権と著作権の違いや、企業と著作者の決定的な認識の開き。そして、この問題についての、私も含めた知識の浅さ。
また、契約を制定するにあたっては、善意だけでは考えてはいけないので、あらゆる状況を想定しなければなりません。そうなると、そのレアケースのために、どんどん制限事項が増えていき、契約書をながめると、とてもじゃないけど希望だけでものを言っている自分を肯定できなくなるのも、なかしいけれど現実ではあるのです。
YouTubeの中で、エバンスが不機嫌な顔をしてピアノを弾き、ウェザーリポートがバードランドを演奏するライブ映像では、ジャコが本当に楽しそうに、気持ち良さそうに、汚れを知らない少年のように、フレットレスベースを弾いている。こうした映像は、多分、DVDになって再販はされないでしょう。原版が音質的に市販クオリティを満たしていないと思うし、エバンスやジャコと言えども、購入する人の絶対数が少ないので、きっとペイできないと思います。
これらの映像は違法です。しかしながら、著作権は今のところ親告罪です。これらの映像の権利者が親告(本人が訴え出るという意味です)しないという善意によって、いま見ることができるということです。私自身、この問題をどう考えていったらいいのかよくわからないし、あえて、このブログには意見は書きませんが、これからも、いろいろな人の考えを参考にしながら、この問題を考えなければいけないなと思います。
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