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2008年4月 7日 (月)

10年前の自分がこのブログを読んだら、どう思うだろうか。

 10年前と言えば、1997年。松田聖子さん、神田正輝さんが離婚し、消費税が5%になり、山一證券が破綻し、京都議定書が採択された年です。私は、30歳で、とある広告制作会社で百貨店の新聞広告コピーを書いていました。ブログが日本で定着するのは2002年頃とのことだから、世の中にはまだブログはありません。

 Googleができて、糸井重里さんの「ほぼ日刊イトイ新聞」が創刊されたのもこの年(参照)で、そこから思い起こすと、その頃、私はあまりウェブには親しんでいなかったのではないでしょうか。職場で見るくらいですね。個人のメールアドレスもまだ持っていなかったし、会社から支給されるメールアドレスも、それからすぐに移籍した会社からだったような気がします。ケータイも持っていませんでした。

 記憶をたどっていくと、その頃の私は、今よりも、もっとギラギラしていたような気がします。英国の広告代理店であるSaatch & Saatchの広告理論を知るようになったのもその頃。西欧の広告理論にかぶれていた時期でした。いろんな本や雑誌を読んだりして。それと、ちょっと告白めくけど、あの頃は、すごく広告賞がほしかったです。まだ若かったし(って今も若いつもりだけど)、広告制作においては今に比べるとイニシアティブはとれていなかったので、どうしても自身の存在証明は広告賞になりがちなんですね。

 あの頃は、まだひとつも広告賞をとっていなくて、それが強烈なコンプレックスになっていました。幸い、私の場合は、ある時期から、ひとつの広告を成り立たせる構造のほうにも興味が出てきましたので、そのコンプレックスが表現を汚していくことはなかったような気がしますが、そのコンプレックスにつぶされて表現が汚れていく人は、この業界には多いです。特にコピーライターは。

 それに、広告賞のことばかり考えると、自身の置かれている状況に対して恨み節を奏でるようになっていきます。広告の賞は、どうしてもそうです。多くの人に見られてなんぼの広告ですから。大きな広告の方が有利になってしまいます。ちょっと生っぽいモードになっていますが、なんとなく10年前の自分に向けて書いている気分なので。あえて10年前の自分に向けて言えば、広告賞は結果です。それに、君が心の底からほしがっている広告賞をとったからって、君が考えているほど幸せにはなれません。上には上があるしね。それに、広告賞は大事だけど、それがすべてではない。

 10年前の自分がこのブログを見たら、なんと言うのでしょうか。共感するのでしょうか。それとも、反感を持つのでしょうか。有名じゃない普通の広告人から見たいろいろ、というスタンスに、若い私は、今の私の中のルサンチマンの匂いを嗅ぎ取ってしまうのかもしれません。中途半端なポジショントークなんかいらないよ、なんて言いながら、有名広告人のポジショントークを反芻しているのかも。それとも逆に、いいよな、広告代理店で、CDで、広告賞もとってて、なんてルサンチマンなことを思うのかも。それとも、案外、コメントやトラバを送って、小難しい論議をしているのかも。

 まあね、この10年前の自分が、今の自分が書くブログを読むという設問自体、人生というものの偶然の蓄積を無視したありえない論議なのかもしれないけれど。「ある広告人の告白(あるいは愚痴かもね)」というタイトルをこのブログにつけた理由のひとつに、10年前の自分に向けた言葉を、10年前の自分が思うほど成功もしなければ、大きな失敗もせずに、なんとか広告の仕事を楽しくやっている10年先輩の私が書きたいということがありました。ほんとは、ジャズが好きだし、「酒とバラと広告の日々」みたいなタイトルをつけてもよかったんですが。「The days of Wine,  Roses and Advertising」とか英語でかっこ良くタイポを打って。

 こんなWeb2.0の時代だし、なんの工夫もなしに商用に転用できてしまうこと以外は、なるだけ、こんな自分でもそれなりに蓄積した知識やノウハウがあるわけだし、そんなあれこれをすべて投げ出して、みんなと共有したいと思うし、私自身も、そんなブログからいろいろ得てきたわけだから、ギブアンドテイクな感じで、つらつら書いています。

 これだけはやっぱり言えるけど、ブログができて、いい時代になったと思います。テキストを通してだけど、距離も時間も関係なしに、つながることができるんですからね。10年前の私のような、悶々と毎日を過ごしている、見知らぬ広告人のみなさん。こんな自分が書いたたわごとだけど、パクれるところがあったら、どんどんパクって自分のものにしてくださいな。それと、読んでいただいているすべての人に。今後とも、よろしくお願いします。

 

PS:ちょっと仕事が忙しくなりそうなので、1週間ほど更新できない感じになります。

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コメント

mb101boldさん、こんにちわんだーすりー
(^0^)
私は広告とは関係ない人ですが、なんかしみじみしちゃいました。10年後のボールドさんがこのブログをみたらどう思うのかな?
ってちょっと考えました。翻って自分も10年後の自分から見て、残念なことになってないようにしなくちゃなと思います。(mb101boldさんが残念なことになっているという意味ではありません。念のため)

お仕事、忙しいんですね。お仕事が忙しいのはありがたいことですよね。私は暇なので、のんびり更新お待ちしてます。(^^)

んではでは~。


投稿: ggg123 | 2008年4月 7日 (月) 14:22

ggg123さん、こんばんわーるどびじねすさてらいと(^0^)

そやねえ、仕事が忙しいのはありがたいことですわ(なぜか関西弁)。ちょっと重めの仕事が重なってしまいまして。10年後の自分が見たらどう思うかっていうのは、気になりますね。ほんと、どう思うんだろうね。楽しみでもあり、怖くもあり。ほんと、がんばらなくちゃですね。

更新お待ちしています、という言葉は、なんかジーンときますね。照れますね。うれしいです。ありがとうございます。ではでは〜。

投稿: mb101bold | 2008年4月 8日 (火) 00:38

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10年前の自分がこのブログを読んだら、どう思うだろうか(via 駄文にゅうす)  10年以上前からやっている私は、自分のサイトを見続けている訳だけれども(笑)。まあ、私らしいなって思うんだろうね。自分のブログと知らずに、10年前の私がこのブログを見に来たら……「趣味... [続きを読む]

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