ボブディランの「I shall be released」を翻訳してみました。
前に、大塚まさじさんの「男らしいってわかるかい」という歌のことを書きました。この曲をご存知のない方は、下記リンク先のエントリを読んでみてください。私の大好きな曲のひとつです。
「孤立無援の思想」ある広告人の告白(あるいは愚痴かもね)
「男らしいってわかるかい」ある広告人の告白(あるいは愚痴かもね)
大塚まさじさんのこの曲は、ボブディランの「I shall be released」のカバーなのですが、これがほとんど大塚さんの創作と言っていいくらいの歌詞なんですね。私は、これまでディランはあまり聴いてこなかったので、この「I shall be released」という曲は、大塚さんの「男らしいってわかるかい」によって知りました。
音楽評論家やファンのあいだでは、この大塚まさじさんの「超訳」は、逆説的にディランの原文のもっとも忠実な訳であるとも言われていたりもします。ディランの「I shall be released」という曲は、それこそディランが何度も何度も歌い(で、歌うたびにメロディが変わっていく)、多くのアーチストにカバーされている名曲なので、ご存知の方も多いかとは思いますが、まあ英語なので、日本語を使う我々の場合、なんとなく知っているという感じの人も多いかと思います。そういう私もその一人です。まずは、ボブディランさんが書いた詞。
I shall be released
They say ev'rything can be replaced
Yet ev'ry distance is not near
So I remember ev'ry face
Of ev'ry man who put me here
I see my light come shining
From the west unto the east
Any day now, any day now
I shall be releasedThey say ev'ry man needs protection
They say ev'ry man must fall
Yet I swear I see my reflection
Some place so high above this wall
I see my light come shining
From the west unto the east
Any day now, any day now
I shall be releasedStanding next to me in this lonely crowd
Is a man who swears he's not to blame
All day long I hear him shout so loud
Crying out that he was framed
I see my light come shining
From the west unto the east
Any day now, any day now
I shall be released
やっぱり、いい詞ですよね。この詞の直訳は、ウェブにはたくさんありますので、Googleで「I shall be released」で検索などして確かめてみてください。でも、それほど難しい英語でもないので、ある程度はわかるかもしれません。でも、やはりディランなので、いわゆる詩的な感じで、この詞の意味するところというのはけっこう難解かもしれません。それと、直訳をして意味を汲み取ってみると、大塚まさじさんの「超訳」がいかに素晴らしい訳かがあらためて理解できますね。
出だしの「They say ev'rything can be replaced Yet ev'ry distance is not near So I remember ev'ry face Of ev'ry man who put me here」を「変わっていくなんてきっとないぜ 君の世界とはほど遠い でも俺をこんなに変えたくれた 昔の友がいるんだ」(参照)とすることろなんて、うーん、すごいなあ、と感心してしまいます。この歌を英語で歌い、その意味を自分で咀嚼した者にしか出てこない歌詞です。大塚さんは若い頃、大阪のミナミで「ディラン」という喫茶店のマスターをされていたんですよね。
このボブディランさんが書いた「I shall be released」は、直訳ではちょっとわかりにくい部分がありますね。詩ですからね。それと、大塚さんの「男らしいってわかるかい」はオリジナルを知るとより理解できるとも思いますし、私自身も、「I shall be released」の、ああこういう感じなんだっていう日本語訳については、なんとなく前から気にはなっていたんですよね。
なので、私は大塚さんとは違うアプローチで訳してみました。方針としては、原文に忠実に、けれどもその詩が持っている意味を第一義に考えて、少し意訳はする、みたいな感じです。すこし現代風な言い回しにはなってしまったかなと思いますが、こんなディランさんが1967年(私が生まれた年だ!)にこの詩を書いたときの気分は、こんなことだったのではと思いますがどうでしょうか。ちなみに、「I shall be released」は「自由になれるさ」と訳しました。
自由になれるさ
すべては変えられるって言うけど
すべてがこんなに遠いのはなぜだろうね
だから僕はすべての顔を覚えておきたいのさ
いままで出会ったすべての人の顔をね
ほら君にも見えるだろう
西から昇る太陽が僕らの顔を照らすのが
そのときに僕らはきっと
自由になれるさすべての人は落ちていってしまうから
守ってあげなくちゃいけないって言うけど
この先もっともっと高いところまで
行けるって僕は思いたいんだ
ほら君にも見えるだろう
西から昇る太陽が僕らの顔を照らすのが
そのときに僕らはきっと
自由になれるさ僕のとなりにいる見知らぬ男が
俺は悪くないって叫んでいる
僕は一日中その男の叫び声を聴いていたんだ
俺ははめられただけなんだっていう悲痛な男の叫びを
ほら君にも見えるだろう
西から昇る太陽が僕らの顔を照らすのが
そのときに僕らはきっと
自由になれるさ
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コメント
訳してみましたが、思い入れたっぷりです。ハズしてますか??
I shall be released ちょろ 訳 9.24 2012
俺は解放されるんだ
すべてのものは換えられるはずだって言うけど
そこまでの道程は、やっかいで、遠そうだ。
だから 俺をここに追い込んだやつらの顔は 全部忘れない。
光明が見えてきた、西空の輝きだ
その残照は、いつかと思えていたことが
今だと 告げている。
俺は 解放されると 確信してる
人は皆 現状の社会体制に 守られており
それがなければ みんな悲惨な目にあってしまうと
言うけど いいだろうよ 俺は俺の見方を信じるだけだ
この 押さえつけられてる状況を突き抜けて 高みに至るんだ
西の空が輝きだして、俺を照らしはじめてる。
いつかと思えていたことが 今だと告げている
俺は 解放されると 確信してる
俺の隣の男は 一人ひとりが ばらばらで孤独な群衆の中に
立ちつくし、 非難されることなんかしてこなかった
知らないうちに、俺ははめこまれちまったんだと
一日中 嘆き、 うるさく 泣き叫んでる。
西の空が輝きだして、俺を照らしはじめてる。
いつかと思えていたことが 今だと告げている
俺は 解放されると 確信してる
************************
おめ~さん 暮らしにくいだろぉ
嵌められちまったのさぁ 社会の罠ってぇ やつによぉ
だからよ しっかり自分の頭で考えて
そいつがお前さんのせいじゃねえってことに きがつくなら
そっから 抜け出すことだって できるかもしれねぇ
まだまだ あきらめなくたって いいってぇ こったぜ
大衆演劇の台詞で語りを入れてみました。
投稿: ちょろ | 2012年9月25日 (火) 15:34