リテラシー考
メディアリテラシーとかネットリテラシーとか言われますが、今回は医療リテラシーについて。このゴールデンウィーク中に私が体験した話を書いてみたいと思います。母の具合が悪くなって、私が帰阪したときには、かなり状態が悪化していました。突発的なことだったので、日常生活のルーティンが少し乱れ気味で、お医者さんから処方された薬の服用もアバウトになっていました。それに、これまで通院していた近くの診療所が処方した薬と、総合病院に駆け込んで処方してもらった薬が混在している状態でした。
前に、今回はネットに助けられたということを書きましたが、まず私がしたことは、まず薬の内容をネットで調べることでした。今、ネットで検索すると、ほとんどすべてのお薬の内容が分かります。そこで、効能が重複した薬があることが分かったりしました。とりあえずは、効能が重複する薬の一方の服用をやめさせるなどの緊急の対処ができました。
総合病院で処方された薬の正しい服用ができない状態だったので、連休明けの再診の予定だったところを変更し、すぐに再診してもらいに行くことにしました。そのときに私がしたことは、飲んでいる薬とその量、症状や状況、家族の心情など、思いつくことすべてをメモしたことです。早朝に総合病院に予約なしに駆け込み、担当医にそのメモを見せながら話しました。
診療という行為は、対話ですから、面と向かったときの雰囲気や状況で、伝えなければならないことも伝えられないことはよくあります。そのとき、箇条書きにしたメモが役に立つのです。お医者さんに伝えるのもコミュニケーションですから、伝える方にもスキルがいります。実際に私も、しどろもどろになってしまいましたし。そのときに、メモは役に立つのです。
診療という行為は、きっとオリエンテーションと同じだと思います。この場合、プレゼンをする方は患者とその家族側なのです。オリエンテーションで大切なのは、必要なすべての情報を開示することです。そのために、メモは必要です。その場のノリに左右されるおしゃべりでは、情報量がノリに左右されてしまうんです。ちょっと傲慢な言い方かもしれませんが、お医者さんにいい仕事をしてもらうために、いいオリエンをする必要があるのです。
私は、たまたま帰阪するまでに冷静に考えられる時間がありましたので、ネットで入手したこういう医療リテラシーを吸収することができました。今回、それが非常に役に立ったような気がします。急病などで気が動転することもあると思います。そのとき、ネットで検索して偶然このブログにたどり着いた方、どうか、一度冷静になってメモをとってみてください。
しかしながら、リテラシーというのは自分の身を守るために身につけるものであるものの、リテラシー、リテラシーと言う風潮はどうなんだろうと思うところもあるのです。なんとなく、よい医療を受けるためには、医療リテラシーを身につけることが必要なのです、ぜひ、あなたも医療リテラシーを身につけましょう、という感じの言い方には抵抗があるのです。
なんとなく感じるのは、こうした言い方には、弱者を切り捨てるような指向性を持っているような気がするのです。自己責任と声高に叫ぶ風潮とシンクロしているような、そんな感じがします。リテラシーを身につけることは、どこから見ても、決定的に正しいけれど、その正しさの中に、そんな落とし穴があるような気がします。
こういうことは、広告的に、つまり、受動的に知らされるということが必要なのではないかな、みたいな感じがしています。リテラシーを身につける、というような自発的に情報を摂取するということでなく、みんなが当たり前のように知っている状況をつくる、ということ。これは、ウェブ2.0以前の考え方かもしれませんが、なんとなくそうあるべきなんじゃないかなと思います。このへんは、少し考えを深めてまた書くかもしれません。
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コメント
往々にして「リテラシー」が叫ばれる状況というのは、当人がリテラシー不足による不利益を被りつつも、リテラシーの必要性を認識していない、という場合が多いんじゃないんですかね。
第三者がその人にリテラシーのあれこれを教えるという状況に対するレトリック(言い訳、理屈)が確立されていないので、当人が自ら気付くまで放置する、という対応を取らざるを得ないのではないかと。
投稿: 閂 | 2008年5月13日 (火) 08:36
レトリックで言えば、それを覚えるとトクか楽か、もしくは楽しいか、ということなんだろうなと思うんですが、実際はなかなか難しいですね。
うちのおやじなんかは、PCはおろか携帯も持ってないです。本人はそんな情報いらんとか言っていて、ある意味潔いですが、そろそろ携帯くらいは持たせようかななんて思っています。
投稿: mb101bold | 2008年5月13日 (火) 13:49