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2008年6月 5日 (木)

翼をください

 という歌は知ってますよね。学校でよく歌われる曲です。

今 私の願い事が
かなうならば 翼がほしい

 これを歌ったグループは知っていますか。「赤い鳥」というグループです。関西出身のモダンフォークグループ。1969年の第3回ヤマハ・ライトミュージックコンテストで優勝してデビューしました。このライトミュージックコンテストは、かつてはプロの登竜門だったんですね。その後は、ポピュラーミュージックコンテスト、通称ポプコンになり、今はもうありません。

 この第3回は当たり年で、第1位が、赤い鳥。第2位が、ジ・オフコース(オフコース)。第6位がザ・フォーシンガーズ(チューリップ)。この大会に出た財津和夫さんは、オフコースを見て、負けた、と思い、小田和正さんは、赤い鳥を見て、負けた、と思ったそうです。

 「翼をください」という歌は、学校で合唱曲として歌われるようになって、今でも残るスタンダードになりましたが、じつはB面の曲でした。今で言うカップリング曲。A面は「竹田の子守唄」。この曲は、今ではテレビでも歌われるようになりましたが、しばらく放送禁止曲でした。被差別部落に伝わる子守唄を元にしているという理由です。詳しくは、藤井正さんが書かれたInternet Magazine Beat21-「竹田の子守唄」というメッセージソングをご参照ください。この一枚のアナログシングルレコードに収録された2つの曲は、対照的な道を歩みました。

守もいやがる 盆からさきにゃ
雪もちらつくし 子も泣くし

盆がきたとて なにうれしかろ
かたびらはなし 帯はなし

この子よう泣く もりをばいじる
守も一日 やせるやら

はよも行きたや この在所こえて
向うに見えるは 親の家

 「竹田の子守唄」は、その叙情的な日本語と、美しいメロディ、繊細なハーモニーアレンジが魅力で、多くの人に歌われました。フォークの練習曲としても親しまれました。オフコースも中野サンプラザでのコンサートのライブ盤で歌っています。YouTubeで検索すると、赤い鳥から分かれたハイファイセットが歌っているバージョンがありました。山本潤子さんの声は美しいですね。小田和正さんが嫉妬した声です。

 いまでは、どことなく学校とかで先生に歌わされる曲というイメージがあるB面の「翼をください」ですが、赤い鳥は、ライブではエレクトリックなバンドサウンドで演奏しています。後に加入した村上“ポンタ”秀一さんがドラムを叩いていて、もうやりたい放題な感じです。赤い鳥は、解散直前は、かなり前衛的なバンドサウンドに変わっていて、解散というより、分解とか解体という言葉が似合う感じだったそうです。私は世代が違うので、リアルタイムではありませんが。

 この「赤い鳥」は、早くして売れました。一方のオフコースは、鳴かず飛ばず。小田和正さんは、やはり女性ボーカルが必要なんじゃないか、ということで、イルカさんと一緒にやる計画を立てました。それに反対したのが、鈴木康博さん。今までやってきたオフコースの音楽性を捨ててまで売れる必要はないじゃないか、ということでした。このあたりの話は、せつないです。私にとって、オフコースは、小田さんのバンドではなく、やはり小田ヤスのグループです。

 「翼をください」に話を戻します。この曲の2番の歌詞、今はこう歌われています。

子供のとき 夢見たこと
今も同じ 夢に見ている

 でも作詞の山上路夫さんが書いた歌詞は、この歌詞ではありませんでした。オリジナルはこうです。

今 富とか名誉ならば
いらないけど 翼がほしい

 うーん。これはどうなんでしょうね。今、この曲は多くの人に愛されていますが、「今富とか名誉ならばいらないけど翼がほしい」を「子供のときに夢見たこと今も同じ夢に見ている」に変えたら、曲の趣旨がまったく違ってきます。翼の意味がまったく違いますよね。富とか名誉とかいらないけど、というのは、私の好みから言うとあまり好きな詩ではありませんが、でも、この曲の趣旨は、すべてをなげうっても翼がほしいという曲なんですよね。

 翼は、空を自由に飛べる翼でもありますが、富とか名誉とかでは手に入らない大切な何かのメタファでもあるのに、新しい歌詞では、すでに翼は、空を飛びたいという永遠の叶わぬ夢に成り下がっています。これはちょっと残念な改変ですね。どういう経緯だったのでしょうか。

 「竹田の子守り唄」は、蘇って、また完全なかたちで歌われるようになりました。この「翼をください」も完全な歌詞で歌われるようになってほしいな、と思います。やっぱり、もとの歌詞のほうがいいと思うし、なんとなくこういうのはそろそろ元にもどしてあげるほうが、この歌もよろこぶんじゃないかな、なんて思います。

追記(2008年6月10日):オリジナルの歌詞は2つの歌詞を合わせた「今 富とか名誉ならば / いらないけど 翼がほしい / 子供のとき 夢見たこと / 今も同じ 夢に見ている」だそうです。で、そのあたりについて続編を書きました。よかったら読んでみてください。→続・翼をください

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コメント

はじめまして。
私も「翼がほしい」はこどものころすごく好きだったか歌です。
自分が翼がほしいの歌詞で感じてたのは、オリジナルに近い意味でしたね。
子供の夢として翼がほしいっていうんではなく(歌ってる私はそんな気持ちで歌ってましたが)、意味的にはなんとなくこの歌詞は翼がすごくほしいんだろうなっていうのがなんとなく伝わる歌ですよね。

投稿: すみこ | 2008年6月 5日 (木) 14:50

すみこさん、はじめまして。
当時の文化のことを考えると、翼というのは自由だったんでしょうね。
歌詞とメロディは制作時には密接に関係しているでしょうから、すみこさんの感じ方はなるほどと思いました。今の子供たちも、歌詞にかかわらず、そういう気持ちで歌っているのかもしれませんね。

投稿: mb101bold | 2008年6月 5日 (木) 17:47

今「翼を下さい」の2番の歌詞は、
『今富とか名誉ならば
要らないけど翼が欲しい
子供の時夢見たこと
今も同じ夢に見ている』
となっています。
オリジナルのままではありませんが、オリジナルも含まれてはいますよ

投稿: 玲 | 2010年8月25日 (水) 23:40

ああ、なるほど。ぜんぶ入りなんですね。

投稿: mb101bold | 2010年8月28日 (土) 01:08

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