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2008年7月27日 (日)

タレント広告はなぜなくならないのか(1)

 と言われ続けて早や20年。いまだテレビではタレント広告が大盛況です。日本の広告をくさすとき、いつも「タレント広告ばっかりじゃないか」なんて言われます。ブランドやアイデアを標榜する広告人は、いつも「だって、タレント広告にはアイデアないじゃない。それじゃブランドなんかつくれないよね。」と言います。

 まあ、こんなタイトルをつけるくらいだから、私自身もあまりタレント広告のこと、よくは思っていない証拠でもあるんですが(タレント広告は、いろいろめんどくさいしね)、でも、タレント広告はアイデアがなくて、ブランドがつくれないというのは本当なのか。今回は、そのことについて考えてみたいと思います。

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■タレント広告にはアイデアがない?

 私の印象では、タレント広告は無意味ではなくて、むしろ有効。そんな気がします。なにせ、てっとり早い。テレビCMを中心とするマスプロモーションでは特に効きます。認知の速度が格段に違います。しかも、実務ではうまくできているな、と思うのは、タレントの契約料とその効果は、かなりの精度で比例しているような気がします。ほんと、よくできています。

 なぜタレント広告に効果があるのかと言えば、それはタレントを起用するという行為が、広告のアイデアになるからです。タレント広告にアイデアがないのではなく、タレント広告は、タレントを起用するという行為自体が、すでに広告に必要なアイデアを代理する点において、非常にてっとり早く、有効である、と言えるのではないでしょうか。

 これは広告の実務を考えればわかることです。例えば、アイデア至上主義のアカウントに限って、いざタレントの撮影になれば、普段なら見向きもしないCRの撮影現場に出向き、最後までうれしそうにいるものですし、何よりも、広告制作のいち過程に過ぎない撮影が、大イベントになってしまうんですよね。ノンタレのロケやスタジオ撮影ではそうはいきません。

■タレント広告とPR

 PR原稿も断然つくりやすくなります。タレント起用はニュースになります。プレスリリースが書きやすく、うまく行けば記者発表会でタレントに出演してもらって、ワイドショーに取り上げてもらえるかもしれません。取り上げてもらえると、認知にかかる費用を節約することができます。初速がだんぜん違ってきます。

 タレント広告のリスクとして知られるのは、タレントの不祥事などの不測の事態ですが、その効果と比較すれば、それほどのリスクとは言えないのではないでしょうか。このくらいの確率だと、まさか自分の会社が当事者にはならないだろう、なんて思うものだし、メリットとリスクの天秤にかけにくいと思います。今回はちょっと気合いが入っているので、ぜひタレントを起用して広告をしよう、という感じが一般的ではないでしょうか。

 タレントを起用しないで、そんなPR効果をつくろうと思うと、なかなか難しいのが現状です。それこそ、タレント起用という単純なインパクトを凌駕する、強く優れたアイデアが必要になります。クリエイティブはアイデアが勝負だろ、とは言うものの、例えば、Smap起用に勝るアイデアなんて、なかなかつくれるものではないのも事実です。

■タレント広告の効果のしくみ

 タレント広告の効果。それは、いきなりみんなが知っているタレントを広告に持ってこれることにあります。みんなが知っている、ということは、広告では重要です。みんなが顔と名前を知っているからこそ、タレントという存在は、自身を紹介するというプロセスを省略できるのです。

 私は、アドバタイジングとインフォメーションは違うと考えていますが、つまり、存在の認知、世界に存在を認めさせるというアドバタイジング的な行為を省略することで、タレント広告ではインフォメーション的な行為だけで、アドバタイジングたり得るのです。これが、タレント広告のいちばんの魔力だと思います。

 そのしくみを使ったうまい広告がかつてありました。NTTドコモの「広末涼子、ポケベルはじめる。」です。当時無名の広末さんを、あたかもみんなが知っている(これから知ることを予定されている)かのような前提で広告をつくったんですね。あれはうまいと思いました。

 タレントとモデルは、広告での演出のあり方が少し違ってきます。タレントは、そのもの自体がアイデアですが、モデルはアイデアの一要素です。私がよくやるのは、まだ知名度のないモデルさんを、タレントのように演出するやり方。あたかも、みんなが知っているという前提で演出することで、タレント広告と同様の効果のベクトルを持った広告をつくることができます。

■でもタレント広告の効果は下がってきている

 しかしながら、昨今ではタレント広告の効果は下がってきているのも事実です。それは、メディアの多様化と、このブログもそうなんですが、個人メディアの発達による、情報のフラット化です。みんなが知っているというタレント広告のおいしい部分はまだまだあるものの、そのみんなが知っているという内実が変化しているような気がします。

 タレントさんもブログを書く時代です。そんななか、タレントさんの相対的なありがたさも低下してきているのも事実でしょう。そんな中、資生堂のTSUBAKIのマルチタレント戦略は、莫大な費用を投下していることも話題になりましたが、これは、ある意味で、今の時代、かつての化粧品タレント広告黄金時代の効果は、こんな物量戦でなければ成立しない証拠でもあるのでしょう。究極のタレント広告と言えそうです。

 また、ユニクロは、タレントと普通の人を等価に見せていくために、定期的にタレントを起用していくという、逆説的なタレント起用をしています。これは、かなり前からある路線ではありますが、先見性があるというか、今の広告のあり方を、最前線で語っているように思います。

 

タレント広告はなぜなくならないのか(2)」に続きます

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