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2008年7月23日 (水)

ラジオと匿名

 朝日新聞夕刊の「ラジオの時代」という連載が、文化放送「大竹まこと ゴールデンラジオ」を取り上げていました。昨年5月に大型の編成替えがあって、平日1時からの2時間半の番組としてスタート。たしか、以前は「吉田照美のやる気MANMAN!」の枠でした。そこに大竹まことさんが登場し、吉田照美さんは朝枠に移動。で、今や、このゴールデンラジオ、関東地区の昼枠で聴取率トップだそうです。

 この連載の取材で、大竹まことさんはこんなふうにラジオを話していました。

「ラジオはいやなやつだと思ったら聴かないでしょ。このメディアには何かあるな、と思うよ。まだよくわからないけど、大事なのはマイノリティってことは確か。数字とってない番組のほうが大事かもね」
7月22日(火) 朝日新聞 夕刊 「ラジオの時代」より

 ラジオ、AMラジオは特にそういうメディアだと思うんですよね。私はよくラジオを聴きますが、ラジオって基本的には、今やチープメディア。このチープメディアっていうのは、勝手に私が名付けているだけの言葉なんですが、まあお金がかからないということ。マイクがあって、話し手がいて、それだけで成り立つんです。だから、ラジオほどパーソナリティが勝負のメディアもないような気がします。

 テレビみたいなリッチメディアは、やっぱり企画や演出が勝負だったりしますが、ラジオはその人となりが生に出てしまいます。ラジオは虚飾があまり通用しないし、ラジオの大竹さんは、テレビの毒舌イメージだけでないし、それではラジオでは通用しないとも言えるんですね。

 ラジオと言えば、電話やお手紙。今はメールかもしれませんが。匿名希望のなになにさんとして、たくさんの人たちが生で登場します。ここで言う生っていうのは、生放送の生ではなく、心が生なんですね。そんな生な心を持った人たちがいい感じでいるためには、その場がいい感じである必要があって、その場をつくっているのがひとりのパーソナリティだったりするところが、ラジオの面白いところだと思います。

 ラジオって、長年聴いているとわかりますが、どれだけいい匿名希望さんが集まってくるかが、その番組の質を決めるところがあるように思います。結構、そのパーソナリティを慕うリスナーさんが番組をつくっているところもあるんですね。そこが、テレビとの最大の違いです。

 AMラジオで名物の毒蝮三太夫さんのレポートも、そこに集う人があっての、あのどうしようもない毒舌ですしね。「ばばあ、まだ生きてるのか、図々しいな」ってねえ。そう言われると、おばちゃんが喜んで、そんでもって最後には「ばばあ、長生きするんだよ」なんて締めるんです。毒蝮さんのつくる空気のなせる技です。あれは、もう、AMラジオにおける伝統芸能なんでしょうね。

 爆笑問題がまだあまり人気のない若手コンビだった頃、毒蝮三太夫さんをモチーフにしたコントをやっていて、なんとなく今の時代を先取りしているみたいで、それが今も記憶に焼き付いています。

 田中さんが毒蝮さん役で、ラジオではなく、テレビのワイドショーのコーナーで下町中継を行っていて、スタジオには太田さんとアシスタント。で、田中さん演じる毒蝮さんがいつもの毒舌を放っていると、スタジオが渋い顔になっていって、そこでアシスタントが太田さんに紙を渡します。

 紙を読んだ太田さんは、下町中継の田中さんを止めて、匿名の視聴者から毒舌がひどすぎるという苦情が続々来ていることを伝えます。田中さんは、「何言ってるんだよ」と無視して続けるも、今度はアシスタントが「私も、実は、あまりにひどすぎると思ってました」と。太田サンは視聴者に詫び、田中さんは何も話せなくなってしまう、というもの。重い沈黙の中、コントは終わります。

 なんかいろいろ考えさせられますよね。

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