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2008年7月21日 (月)

日曜劇場「Tomorrow -陽はまたのぼる-」にちょっと釣られてみる

 まあ、テレビドラマでもあるし、あれでいいのかもしれないけど、それにしてもなあ、と正直思いました。TBSのドラマ「Tomorrow」。このドラマは、医療問題という、オンタイムで複雑なテーマを選んでいて、そのテーマの複雑さのわりには、わりと単純な人間ドラマに仕立て上げられているというか、細部の仕立てがファンタジーというか、なんかテーマの生っぽさに比べ、内容が嘘っぽいんですよね。

赤字30億円、潰れかけの病院の再建に立ち向かう外科医と看護師のヒューマンドラマ!

 年金未払い問題、後期高齢者医療制度といった様々な問題を抱えている昨今、我々は自分の受ける医療に対し大きな不安を抱えている。しかし、そんな医療の現場も大きな悲鳴をあげている。

 現代において「潰れていく病院」は、医療ミスと並んで医療が抱える問題のひとつ。今、国の医療費削減による過酷な労働条件、少ない報酬、行き過ぎの医療裁判などが原因で、本当は患者が一番必要としている総合病院から医師がどんどん逃げ出している。今は “町から病院がなくなっていく時代” なのだ。とくに、市などの自治体が経営する自治体病院は大きなピンチを迎えている。

 そして今回、そんな医療が抱えている問題をテーマに、一人の外科医が潰れかけた病院の再建に立ち上がるヒューマンドラマを放送する。主人公の外科医役に 竹野内 豊、ヒロインの看護師役は 菅野美穂 が演じる。

TBS 日曜劇場『Tomorrow』

 潰れかけの市民病院があって、そこに凄腕女性外科医が派遣されてきて、その外科医は「命はお金で買うもの」と思っていて、この市民病院を「セレブ専用病院」に変えようとする。そういう彼女の方針に対して、元外科医で市役所職員、後にこの市民病院で外科医として復帰する主人公と、看護師役のヒロインが、真の医療のために反旗を翻す、という感じです。

 ところどころに、コンビニ受診の問題や医療費踏み倒しといった市民側の問題点や、主人公の過去の医療ミスによる患者死亡のもみ消しなどのシリアスな事柄が挿入されていきます。単なる勧善懲悪な感じでもなく、冷酷な女性外科医が、じつは医療人としても非常に優秀で、そういう「命はお金で救う」という考えに至る個人的理由があるような印象なんですね。

 で、私は、どこが嘘っぽいと感じたのか。まあ、細部ではいろいろあります。腎臓移植を行うために患者の息子の腎臓が必要で、息子が拒んでいるときに、看護師と医師が直接医療現場から飛び出して、大立ち回りで息子の説得をするとかは、今の人手不足の医療現場では、まああり得ないよなあ、とか、わざわざ患者の職場に主治医が出向いて、治療の説得を試みるとか、患者が治療をこばんでいるのが経済的問題でも制度の問題でもなく、個人的な親子のわだかまりだったり。医療問題のコアはそれとは関係ないのに。

 でも、それはファンタジーだからいいかな、と。所詮はテレビドラマはエンターテイメントだし、という見方もできるしね。菅野さんも、竹野内さんもいい感じだし、緒川さんもはまり役だし、それなりに面白いドラマだけどね。

 私が、嘘っぽいなあ、といちばん思ったのは、すべてのことを、個人のキャラクターに負わせちゃっている部分です。ここが、すごく嘘っぽくて問題。私は、いまおこっている医療問題は制度の問題だと思っていて、モラルの問題だとは思ってないんです。モラルでなんとかなる問題でもないし、個々の生き方を超えた問題のような気がするけどなあ。根性だけではどないもならんと思うんですよね。一看護師である菅野さんのがんばりだけではどないもならんですよ。

 これからきっと、医療がらみでいろいろな問題がでてくると思います。現実は、もっと不条理なドラマですよ。なんだかやになっちゃうなあというのが実感です。私の場合なんかは、それがゆるく出ているだけだけど、それでも、その状況に対して右往左往です。それに、この制度をよく見てみると、制度設計の帰結として、もっと不条理きわまりない状況は世の中にいくらでも生まれていると思います。

 制度という正義に対して、医療従事者の正義とか、市民の正義みたいなものを合わせ鏡にしてもしょうがないのではないかなと思います。無限ループになるだけです。もちろん、意味ないとは思いませんが。たぶん、この医療問題というのは、地域とか、現場とかの様々な状況を妥協的に取り込んでいかないと駄目なんだろうと思います。その日常のグラデーションを取り込んでないから、すぐ問題続出なんです。ようするに机上の理想で、線が細いんでしょうね。

 しかしまあ、なんでこの制度の動き出したタイミングで、うちの母、とは思います。タイミングが悪かったよな、ごめんな、と思います。さてと、明日の転院の準備しなきゃ。

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コメント

こんにちは。
医療機関で働いているモノです。

>高齢者の負担増とか、負担減とか、確かにそこはわかりやすい部分ではありますし、反応もしやすいですが、問題の本質はそこではありません。仮に、後期高齢者医療制度を廃止しても、問題はまったく変わりません。

ここの部分、私は共感できます。
確かに国民が反応しやすい、そして分かりやすいところではあるのですが、ではなぜそうしなければいけないのかという部分をまったく理解していない患者が多い気がします。

そして、報道によって、この制度が何なのかを自分で理解し、考える部分が大きく欠落している気がします。

問題は、医療制度そのもの、仕組みだと思います。

ブログ読ませていただいて、すごく共感したので、投稿してしまいました。

お母様、お大事に。

投稿: たみろん | 2008年9月18日 (木) 16:12

たみろんさん、こんにちは。
患者自身がというよりも報道がという部分が大きいように思います。例えば、入院3ヶ月規定の問題とか、介護制度がジリ貧の中の療養型医療機関の縮小方針とか、そういう問題はあまり報道されないですよね。
でも、じつはこちらのほうが今の制度設計の問題では本質のように思います。いろいろ調べてみてわかったことは、この制度自体が非常に複雑でわかりにくいし、だからこうしたどうしようもない制度が隠れてしまっていて、本来は、その部分を明るみにするのが報道の役割ではないかと思うのですが。
また選挙がありますよね。きっと50円値下げとかそういった本質から外れた改革案が政府から出されるのでしょう。ブロガーとしては、この問題は追って行きたいと思います。
今後ともよろしくお願いします。

投稿: mb101bold | 2008年9月18日 (木) 18:40

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