都道府県別シェアから見た広告メディアとしての新聞
広告媒体として見たときの全国紙というのは、じつは首都圏および関西圏の広告メディアであって、案外、新聞というのは全国を包括するメディアではないということは言えるかもしれません。引用のデータ(参照)は昨年3月のデータらしいですが、このシェアに関しては大きな変動はないと思います。新聞名は、その都道府県のトップシェア紙、%はシェア(その新聞の世帯普及率)、続いて発行部数です。
北海道 北海道新聞 49.3% 123万部
青森県 東奥日報 47.8 26万
岩手県 岩手日報 47.6 23万
宮城県 河北新報 57.05 50万
秋田県 秋田魁新聞 64.68 26万
山形県 山形新聞 55.72 23万
福島県 福島民報 42.48 31万
茨城県 読売新聞 42.08 43万
栃木県 下野新聞 45.16 31万
群馬県 上毛新聞 42.75 30万
埼玉県 読売新聞 40.36 105万
千葉県 読売新聞 37.4 86万
東京都 読売新聞 26.16 149万
神奈川県 読売新聞 30.2 107万
新潟県 新潟日報 62.21 50万
富山県 北日本新聞 64.34 23万
石川県 北國・富山新聞 70.89 29万
福井県 福井新聞 79.64 21万
山梨県 山梨日日新聞 66.33 21万
長野県 信濃毎日新聞 62.12 48万
岐阜県 中日新聞 59.84 42万
静岡県 静岡新聞 55.42 74万
愛知県 中日新聞 67.02 174万
三重県 中日新聞 51.0 34万
滋賀県 読売新聞 29.16 13万
京都府 京都新聞 41.23 43万
大阪府 読売新聞 25.72 93万
兵庫県 神戸新聞 25.86 56万
奈良県 朝日新聞 30.85 16万
和歌山県 読売新聞 30.49 12万
鳥取県 日本海新聞 76.43 16万
島根県 山陰中央新報 62.25 17万
岡山県 山陽新聞 61.73 45万
広島県 中国新聞 56.13 65万
山口県 読売新聞 30.00 18万
徳島県 徳島新聞 85.27 26万
香川県 四国新聞 53.00 20万
愛媛県 愛媛新聞 53.52 32万
高知県 高知新聞 68.6 23万
福岡県 西日本新聞 31.76 63万
佐賀県 佐賀新聞 46.94 14万
長崎県 長崎新聞 33.22 20万
熊本県 熊本日日新聞 55.63 38万
大分県 大分合同新聞 52.28 25万
宮崎県 宮崎日日新聞 49.38 25万
鹿児島県 南日本新聞 53.67 40万
沖縄県 琉球新報 41.03 20万
以上のことから言えるのは、基本的には読売新聞、朝日新聞、毎日新聞、産経新聞と言えども、全国カバー率は案外少ないということなんですね。また、首都圏や関西に住んでいると想像しがたいことですが、中堅都市だけでなく、代表的な例で言えば、大都市でも名古屋は中日新聞というふうに、いわゆる「全国紙」があまり読まれていない都市はいくらでもあります。いまの時代、地方と言えども複数紙を購読する人は少なくなってきて、しかも、現状では、それぞれの地方紙は、通信社および提携全国紙から記事の配信を受けているので、全国ニュースはカバーできていることを考えると、ますます地方において、全国紙は苦戦していくのかもしれません。
finalventさんが、「新聞社が潰れてもそれほどどってことはないよ – finalventの日記」の中で、「新聞っていうのは元来そういうローカルな存在。」と書かれていました。これにピンと来ない人も多いかと思いますが、広告実務をやっていると、それは痛感します。テレビはそこそこ全国をカバーできてしまいますが、新聞では地方紙を組み合わせないと無理。新聞社のマーケットというのは、そういう感じなんですね。このあたりを押さえておかないと、朝日新聞の赤字転落のようなニュースは過剰に意味付けをしてしまうのかもしれません。ただ、広告媒体として見た場合、首都圏と関西圏の大型広告媒体の大苦戦という見方はできます。これはこれで、広告業界で飯を食う我々にとってはきつい話なんですが。
唯一、全国をカバーできてしまうメジャー新聞は、日経新聞ですが、これはそれぞれの都道府県でもまんべんなくシェアは低く、ある意味で専門紙とも言えるので、唯一の全国紙と言い切ってしまうのは微妙です。しかしながら、この専門という切り口は、今の時代にはマッチしていて、テレ東を除く関連の出版・放送関係も含めて元気な印象を受けますね。
なんとなく思うのは、このまま紙媒体の苦戦が続くと、ネットでのニュース配信はいつか有料に移行するかもな、ということですね。ネットの新聞サイトの広告は、他のポータルへの配信も含めて、PVでも広告媒体の量でも価格でも、わりと飽和点に来ているのではないかという印象を持っています。となると、今のようなネットの新聞サイトは今のままで持ちこたえられるのかな、と思ったりします。ブログを書く一個人としては、リンク切れをよく起こす新聞サイトは、もっともっとネットにパーマリンク付きのアーカイブとして保存する方向でがんばってほしいとは思いますが、企業としてはどこかに収益を求めないとやっていけないはずで、その意味合いで、私は朝日新聞の赤字転落というニュースを受け止めました。
私は、仕事柄もあり、新聞を含めた広告メディアを観測していますが、新聞の崩壊がもしあるとすると、それがネットに入れ替わるという意味合いではなく、折り込み広告を含めた、現状においてもネットよりも広告効率のいい巨大メディアがパンクしてしまうという意味合いだと思います。カテゴリーにもよりますが、現状においてもなお、ある程度の広告プロモーションを実施するときに、新聞は、きめ細かくて格段に効率がいいんですよね。つまり、ネットは代替にならない、というか。今のところ、そんな印象です。
それは同時に、本格的なマスの終焉を意味するのかもしれませんし、それともマスはダウンサイジングしていって、社会が要請するある適正値に落ち着くのかもしれませんが、どちらにしても、大きな社会の転換期に来ているのは、間違いはなさそうな気がします。これからどうなるかを予測するのは、思いのほか難問な気がしています。
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コメント
これ参考になりますよ。
"World's 100 Largest Newspapers"
http://www.wan-press.org/article2825.html
新聞は世界的にはもっとローカルなものだと分かります。
日本の新聞業界は特異です。
投稿: | 2008年12月 8日 (月) 13:07
ありがとうございます。
これは新聞宅配システムのなせる業なんでしょうね。
投稿: mb101bold | 2008年12月 8日 (月) 13:43