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2008年12月26日 (金)

ハッピーエンドが始まるといいですね。

 昔、百貨店広告が元気だった時代。伊勢丹の広告コピーに「ハッピーエンド、始まる。」というのがあって、当時すごく憧れた覚えがあります。眞木準さんのコピーです。ハッピーエンド。始まる。その互いに矛盾するふたつの言葉を組み合わせることでできた一行のフレーズ。そのフレーズが生み出す鮮烈で新しい世界。そうした言葉の作用が、当時の私にとって刺激的でした。

 酒井若菜さんがブログを一旦終了するそうです。私は、ときどき読んでいたくらいで、それほど熱心な読者ではありませんでしたが、真摯さを感じさせる文章が印象的で、こういう職業の人が日々どんなことを考え生きているのかがよくわかるブログで、なんとなく芸能人ブログというより、職業人ブログを読んだ時の読後感がありました。芸能人ブログっぽい交友録的な要素もたくさんありましたが。

 少し長いけれど、すごく考えさせられる文章なので引用します。

それから、表現者として生きていく以上、本来は人間性を誉めていただける喜びよりも、意地悪な役をやった時に「酒井若菜大っ嫌い」って言われた時に感じる喜びを持っていなければなりません。でも、ブログを続けていくうちに、いつからか私自身を誉めてもらいたい気持ちが強くなってしまいました(誉められて伸びるタイプなので)。

それから、例えば役がしっくりこなかった時や、何かしらが上手くいかなかった時、ブログという場所があると簡単に言い訳ができてしまうわけで、私達はあくまでも皆さんに提供をする側の人間なので、しっくりこないとか納得いかないものはプロとして絶対にお客さんに見せてはいけないわけで、つまり結果=成功しかありえないわけで、だから「こんなことを乗り越えて、最高なものを作ったよ」ならいいけれど、単なる言い訳に対する理解をみなさんに求めるのは非常におかしな話であり、ルールに反している気がしてならないのです。

勿論私は、弱音や言い訳などは極力避けてきたつもりです。

ただ、一般的な感覚として、ブログというもの自体の概念が若干変わってきたように感じられる現状があるのもまた事実です。それは、他のタレントさんのブログを読んで私が一方的に感じたことでもあり、失礼な言い方ですが「ちゃんとしろよ芸能人」と思ってしまう器の小さな自分に「うわ、私は何様のつもりなんだ」とひいてしまったりもするわけで、でも一方で、ちゃんと「表現者」を全うされてるかたのブログを拝見すると、私はまだまだ「ちゃんとしろ」側の人間でしかいられていないことに気づかされ、自分を恥じるのです。

ハッピーエンドが好きな私 – 酒井若菜診断室リターンズ

 新しい何かをつかもうとしているときには、その手をあけるために、きっと、今、その手に持っている大切な何かを捨てなければいけなのでしょうね。でなければ、新しい何かはつかめないのかもしれません。酒井さんのブログは、エントリもコメントもあたたかくて、ご本人にとってはすごく大切な何かだったと思います。もちろん読者の方にとっても。

 たとえば、「八方美人」という名のエントリ。ぜひ読んでみてください。とてもいいですよね。もし、酒井若菜さんという有名人が書いていなかったとしても、すごくいい。同世代か、それよりも若い人が読むと、すごく共感するんじゃないでしょうか。こういう感性があるからこそ、映画やドラマで、難しい役柄をきっちり演じきれるんでしょうね。

あくまでも、
一旦、
ね。
すぐ復活するかもしれないしね。

ハッピーエンドが好きな私 – 酒井若菜診断室リターンズ

 こうしたことをきちんと書くのも、真摯だと私は思うんですよね。これを言い訳だと取る人もいるかもしれませんが、私は、逆に、これを書かないと真摯で誠実だとは思わないんですね。なんとなく、たとえは逆ですが、前に書いた「ほぼ日刊イトイ新聞の「ほぼ」の意味」と同じような感覚。ちょっとわかりにくいかもですが。表現者として、ブログを書いてもいいかな、と思ったら、いつでも戻って来てください。酒井さんブログの読者さんたちは、きっと待っていると思いますし。

 酒井さんのような書き手は、ブログには必要だと思うんですよね。で、きっと、表現者としての酒井さんにとっても、ブログは必要だと思うんです。それは、ちょっと本気で思っています。ハッピーエンドの第二章を楽しみにしています。

※酒井さんのブログのリンクがつながらないみたいですね。サイトのリニューアルを機にと書いてありましたので、アーカイブが残らない方向なのかもしれません。(12月26日)
※つながりました。いいブログだと思いますので、まだ読んでいない人は、ぜひぜひ。ファンではない人にもおすすめです。(12月27日) 追記:またつながりにくくなっているようです。

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