WILLCOM 03は案外いいかもしれない
今月の中頃、ついにW-ZERO3[es]が故障してしまいました。どうやらハードの問題。液晶タッチパネルの反応にズレが発生。スタイラスでの操作に支障が出て来て、ハードリセット。すると、OS起動の途中にある「画面の補正」でエンドレス状態になり、OS起動不能状態に。こうなるともう、電話としても使用できず機種変更することになりました。
W-ZERO3[es]は、たいへん優れたモバイルガジェットでした。この機種は、きっとこの先、モバイルガジェットの流れを変えた名器として、モバイルの歴史の中で評価されていくのではないでしょうか。どの部分が優れているのかというと、私はここだと思います。
ケータイライクな片手操作でのPC並みの機能性の実現
このコンセプトをはじめて実現したのは、初代のW-ZERO3ではなく、この2代目のW-ZERO3[es]だったと思います。このコンセプトは、Blackberryをはじめとする欧米のスマートフォンにもないものでした。それらはすべて、本体ボタン及びスタイラスでの操作(もしくは両手でのボタン操作)が基本になっていて、つまりは、両手で使うことが前提になっていました。iPhoneも基本的には両手使いが前提になっています。
けれども、W-ZERO3[es]は片手使いが基本になっていて、そのために、片手で操作できるぎりぎりのサイズの筐体に、全面と左側面に物理式のボタンが数多く設置されていました。この配置がよく考えられていて、使い慣れてくると非常によい感じなんですね。もちろん、相当の慣れとカスタマイズが必要ではありますが、そのへんの初心者への敷居の高さを除くと、これ以外の機種ではありえないベネフィットをもたらしてくれました。
そんな感じだったので、WILLCOM 03の機種変更には躊躇しました。物理式のボタンではなく、液晶のタッチセンサーに変更され、筐体のさらなるダウンサイジング(ほぼケータイと同様の大きさと軽さになりました)のために、十字キーと10キーが切り替え式になってしまいました。なんとなく、ケータイ並みのコンパクトさの実現のために、上記のコンセプトが犠牲にされてしまっているのかもしれないな、と思ったんですね。
でも、それは杞憂でしたね。まあ、ダウンサイジングのために犠牲になっている部分もあるにはあるけれど、[es]は片手操作ではまだサイズが大きかったのも事実でしょうし、ちょっと感動したのは、液晶のタッチセンサー式のボタンが、ほんと片手操作の利便性のためにうまく作られているんですよね。やっぱり、W-ZERO3[es]の良さは引き継がれていました。機種変更に躊躇している方、案外悪くないですよ。
私はなんとなくiPhoneについては、世間で言われるほどの注目はしていなくて、それは、OSの作りこみと各種センサの応用による動作の見事さはあるけれど、基本的にはこれまでの両手使いのモバイルガジェットだと捉えています。ただ、ひとつ優れた点があるとすれば、ディスプレイを、スタイラスではなく「指」で操作するという割り切りです。
後発であるWILLCOM 03は、このディスプレイの「指」での直接操作の考え方を転用しています。WILLCOM 03用にカスタマイズされたOperaにこの片鱗が見られますが、残念ながら、操作性では、現時点ではかなり無理があり、逆にそのために、本体液晶ボタンでの操作が難しくなっていて、このへんはバージョンアップに期待です。(ただ、現状のOperaは使いにくいけれど、片手で操作できるようにという努力の片鱗が、いたるところにあって、それはそれで評価はしたいなあ、とは思います。)
また、Windows Mobileのアンダーバー左右のリンクは、デフォルトのままのリンクの大きさにもかかわらず、直接「指」で操作するような仕様になっていますが、これはちょっと過渡期的な操作感かもしれません。そんなに悪くはないけれど、これはベストではないだろうな、みたいな感じです。この部分は、本体全面左右の物理式ボタンで操作する[es]のほうが圧倒的に良かったです。
このW-ZERO3[es]が提示した「片手操作のPC」というコンセプトを実現しているのは、3つあって、それは、ハードウェア、Windows MobileというOS、フリー・シェアウェアを含めた様々なソフトウェアだと思います。その中で、これからこのモバイルガジェットのネックになってくるのがWindows Mobileなんだろうな、と思います。OSが、このコンセプトで作られていないところに、微妙な無理が見えるんですね。
Windows Mobile for WILLCOM 03みたいなカスタマイズができれば、このモバイルガジェットはもっとよくなるんじゃないかと思うんですが、どうでしょうか、マイクロソフトさん。今のところ、この流れはニッチだとは思いますし、日本独自のガラパゴス的進化だとは思いますが、私には、この進化は世界に広がるような普遍性があると思うんですが。まあ、日本の一ブロガーの感想なんで、真偽のほどはわかりませんが、10年後、けっこういい先行投資だったな、と思えると思うんですよね。
というわけで、来年からは、W-ZERO3[es]のカテゴリーは、このWILLCOM 03のことを書いていきたいと思っております。では、モバイル好きのみなさま、ウィルコムユーザのみなさま、ひとまずは、よいお年を。
| 固定リンク
「W-ZERO3[es]」カテゴリの記事
- あの頃、僕らは確かに(2010.06.07)
- PHSの歴史を見ると、いかにコミュニケーションの基礎設計が重要かがよくわかります。(2009.10.06)
- WILLCOM 03は案外いいかもしれない(2008.12.28)
- いま、スマートフォンを買おうとしている人にウィルコムのW-ZERO3[es]をすすめる理由がなくなりつつあります。(2008.04.02)
- おもろうて やがて悲しき スマートフォン(2007.11.11)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント
http://d.hatena.ne.jp/ono_matope/20080920
重箱の隅なのですがiPhoneが両手操作しか出来ないというイメージと、いや片手操作出来る、というお話は一時期盛り上がったようです。
投稿: | 2008年12月29日 (月) 12:21
情報、ありがとうございます。
なるほど。「出来る、出来ない」で言えば、出来るでしょうね。それは初代W-ZERO3も同じかもです。横のサイズが片手操作のギリギリの線(W-ZERO3は、正直言えば、ちょい無理めでしたが)。
もし、Appleが片手使いを今よりかなり意識して、本気で開発を進めるとなると、次は「iPhone nano」でスリム化という進化なのかな。そうなると、OSとか操作性とか、そういう部分でiPhoneのアドバンテージがありそうですね。WILLCOM 03はどうしてもWindows Mobileの仕様の限界があるから。
あとは、フリーソフト・シェアウェアの豊富さとシェアの問題(互換性の問題)で、なんかパソコンの辿った展開ですね。
投稿: mb101bold | 2008年12月29日 (月) 13:05