新聞の元旦企業広告に見る2009年の気分
こんな時代になっても、元旦の新聞広告はそれなりにお金がかかるし、企業も力が入るもの。てなわけで、2009年の企業広告のキャッチコピーをご紹介しながら新しい年の気分なんかをあれこれ考えてみましょうかね。暇だし、自分のかかわった広告はこの中にないから気楽だしね。ソースは朝日新聞(大阪版)本紙です。
ことしモ〜 メグミルクをよろしくお願いします。
(MEGMILK)不便は便利。 「紙の本」は、ネット社会の中で人間の感覚が求める“最先端のスロー・メディア”です。
(新潮社)活字の力。
(文藝春秋)確かな「言葉の力」のために
(三省堂)岩波新書創刊70年 いちばん古く、いつでも新しく。
(岩波書店)英語力・日本語力グレードアップ宣言。
(大修館書店)本が、読みたい。 ときどき無性に読みたくなるのは、なぜだろう。しばらく読まないと不安になるのは、なぜだろう。
(講談社)百年後だって、人間はきっと変わらない。
(新潮文庫)本のちから 人類の知的財産を次世代に
(光文社古典新訳文庫)人は、本と向き合いながら自分と向き合っている。
(集英社)本を読んであげるは抱きしめてあげるに似ている。 本は愛を伝える。小学館の学習雑誌と児童書
(小学館)走り出せば、その先にきっとうれしい未来がある。
(TOYOTA)日本人はなぜ、家を「うち」と呼ぶのだろう。
(積水ハウス)「ありがとう」とミツバチは言った。「こちらこそ」と花も言った。
(キヤノン)ハイブリッドカーを、安くつくれ。
(HONDA)花であり、月であり。
(花王)がん征圧をめざし今年も努力します。
(日本対がん協会)99年分の日立の技術が、2009年の地球にできること。
(日立)エコアイディアの家にくらそう。
(パナホーム)おとそが過ぎたんじゃないんです。家が、何だかあたたかいんです。
(大和ハウス)ハート温暖化。
(髙島屋)人も地球も輝かせる製品で、新しいくらしを世界へ送ります。
(パナソニック)
出版が10、住宅が3、自動車が2、干支である牛をモチーフにしているのが、メグミルクの小さな突き出しだけでした。少し前なら、元旦の広告は干支を使ったビジュアルのオンパレードだったんですが、そんな浮かれた気分でもないんですかね。
去年がどうだかは忘れましたが、やたら出版の広告が多いです。もしかすると、これは企業広告の意味もあるけれど、実際の購買も目的にしているのかもしれません。年末年始は本が売れるし。というか、そういう実利があるから、経営側も元旦の出稿に踏み切れたのかも。私の感想としては、新潮社が面白かったですね。「不便は便利。」「百年後だって、人間はきっと変わらない。」企業としては、ネットをすごく意識しているというか、本屋としてはそれでいいんじゃないか、と思いました。
髙島屋の「ハート温暖化。」というのは、すこし首を傾げる広告コピーでした。「温暖化」というネガティブワードをポジに反転させるような、皮肉めいた感じもなく、わりと素直に言っている様子。髙島屋は、以前からわりとこういう、何を言いたいんだろう的なあいまいな感じの広告が多かったけれど。でも、こういうなんかわけのわからない部分がある企業は、現実では強いのも事実で、かつての西武のように一本筋が通っている企業は、時代の変化に合わせる柔軟性にはやや欠ける部分もあり、こういう企業のダイナミズムみたいなものは、決して経営学では説明できないんでしょうね。
自動車は、どちらもハイブリッドがテーマ。というか、今、それしかテーマがないから、そのテーマを語れない他社は元旦出稿を見送ったのでしょう。もしかすると、別冊にはあったかもですが。でも、各社ともに、新聞をもし使うとすると、3日以降の「初売り」でしょうね。でも、今年は「初売り」はふるわないかも。
新聞の元旦広告で今年の気分がわかるという時代は、もう終わったのかもしれませんね。こういうの、昔は「広告批評」の役割でしたし、その時代は、こういう記事が掲載されるのは2月売りでした。時代のスピードは、どんどん早くなって、情報が消費されるスピードも速くなってきて、これなんかもね、今日は小学校時代からの知人と飲みに行くから3日分の記事として書いているのですが、こうして書くと投稿しちゃえ、と思ってしまうんですよね。このへんのスピード感が、やっぱり既存メディアとは明らかに違うんです。
ブログを書いている身として痛感しますが、既存のメディアは、スピードということで言えば、絶対にブログのような個人メディアに負けるわけで、出版の広告が多かったのも、なにかそのあたりを暗示しているような気もしないわけではなく、そのあたり、いろいろ考えなきゃならないことも多いなと思う年の初めではありますね。
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