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2009年3月 8日 (日)

「デュラムおばさんのフェットチーネ」に上戸彩さんのCMは必要なんだろうか

Packege_4 Rogo_3  サッポロ一番から地域限定で発売されている「デュラムおばさんのフェットチーネ」というカップパスタ、ご存知ですか?

 フェットチーネと呼ばれる平べったいパスタで、「お湯をかけて5分待てば本格パスタ」的な商品です。私は、すこし前にコンビニで見かけて、一度食べてみました。215円。まあ、おいしい。上品だけどね。で、人気が出て来たのか、スーパーマーケットでも見かけるようになりました。

 最近、上戸彩さん出演のCMがテレビで流れています。地域限定商品なので関東ローカルのスポットだと思うんですが、派手さはないけどおしゃれっぽくてかわいいCM。白ホリに白い服を着た上戸さんが、パッケージを持って商品を紹介しているシンプルな構成。商品パッケージに描かれた「デュラムおばさん」がイタリア語で何かしゃべっていて、上戸さんがおばさんの口もとを指で押さえる。そんなストーリー。

 このCMを見て、自分が注目していた商品のCMがやってることに、「おっ、やってる」とは思ったものの、なんとなく、「これちょっとおいしいかもなあ」と密かに感じていた自分のちいさな楽しみがこわされた感じもありました。「デュラムおばさんのフィットチーネ、食べたことある?あれ、おいしいよ。」と人にすすめる楽しさがなくなるやんか、みたいな。

 ネーミングやパッケージデザインを見た限りでは、商品設計的にも「Spa王」とは違って、口コミで徐々に広がっていく的な感じになっているのに、上戸さんか、と思いました。これによって、口コミが「デュラムおばさん」から「上戸さんのCM」に変わってしまうと思うし、それは長期的には損だよな、と思います。

 ま、人がやっている仕事ではあるので、どうでもいいと言えばいいのですが、こういうところに今の流通とか広告の置かれている微妙な状況があるのだろうとも思います。口コミを信じ切れるのかといえば、きっと限界はあるでしょうし、POSで管理された今のコンビニ、スーパーの棚を考えると、ある程度は瞬間風速的なコミュニケーションも必要になってきます。「口コミを信じて、じっくり待ちましょ」と言い切れない状況もあるでしょう。

 じゃあ上戸さんに、ブログとかインタビューとかで「デュラムおばさんのフェットチーネが、最近のお気になんです。」みたいに語ってもらえばいいじゃん、みたいなことですが、そう思った時点で、その手法というのは、その商品を出している企業から閉じられてしまうというのが、私は「口コミ」だと思います。それでもやろうとすればやれるとは思うけど、でも、その一線を超える企業は、どこかでそのコミュニケーションの魂みたいなものをスポイルしてしまうのでしょう。

 今、タレントCMに代表されるようなマス広告も曲がり角ですが、インターネットの成長とともに、その可能性を高らかに誇ってきた「口コミ」も今、曲がり角のような気がします。「口コミを信じましょ」という場合の「口コミ」は、このブログで書いているような、どこからも頼まれもしないのに「ディラムおばさんのフェットチーネ」について書いてしまうような自然発生的な口コミであって、その自然発生的な口コミを誘発する状況はつくれるけれど、それを組織化したりシステム化すると、集まってくるのは無料もしくは格安で商品がもらえるといった別の動機の消費者を呼び込むとこになるし、口コミが「仕込み」に転換すると、その価値も180度変わってしまいます。

 ウェブだからといって、人の価値が大胆に変わるわけでもなく、かつてウェブで「先進的」と言われていたものの「先進的」という衣の陰にかくれていた「うさんくささ」が表に出始めているのが今だろうと思います。けれども、情報の消費のスピードだけは、どんどん速くなって、「口コミ」を待っている間にどんどん時代から取り残されてしまう。そんな、ちょっとしんどい時代なのかもしれません。

 「デュラムおばさんのフェットチーネ」に上戸彩さんのCMは必要なんだろうか。

 そういう問いかけに、いらねえんじゃねえの、と即答できない状況が一方であり、だからといって、手放しで肯定もできない、そんな感じの広告コミュニケーションの現在です。しかしまあ、いろいろ難しいですね。

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コメント

僕もこの商品コンビニで見て気になっていました。トンマナがやさしい感じで、派手さはないけど、品質感が漂ってくる良いPKですね。広告人さんの気持ち、良くわかります。「知る人ぞ知る」商品にして欲しいという。でも、結局、おっしゃる通り、タレントCM入れないと、クチコミで広がる以前に流通で取り扱ってもらえない。まさに、そのジレンマ。まず、ECサイト限定で売って、次にコンビニ、そして量販店と順次チャネル拡大とかできれば、もっと良い商品をたくさん世に出せるのですけどね。「演歌」の様にじわじわとヒットチャートを上っていく商品が極めて成立しにくい、残念な世の中です。

投稿: マルセリーニョ | 2009年3月 8日 (日) 09:01

>「演歌」の様にじわじわとヒットチャートを上っていく商品が極めて成立しにくい

確かにそうですねえ。定番商品になっても、よほどのブランド力がなければ無個性なパッケージを身にまとわされて100円均一のPBで売られてしまいますし。

そんな中、ガリガリ君とかうまい棒とかペヤングとかはがんばってて、ああいったパワーブランドの成り立ちが最近気になります。

投稿: mb101bold | 2009年3月 8日 (日) 15:40

この商品に少し携わったもので、興味深く読ませていただきました。
確かに、たしかにです。。。

わたしは、日本の音楽産業に危惧を感じ、広告を中心にですが、音楽を奏でております。音楽的アプローチで広告を創出していければと日々考えております。。。

過去記事ゆっくり読ませていただきますね。。。

投稿: プロダクションひとり | 2009年3月 9日 (月) 05:18

流通とか、経済状況とか、いろいろ難しいことが多いですが、なんとかがんばっていい広告をつくっていきたいですね。
今後ともよろしくお願いします。

投稿: mb101bold | 2009年3月 9日 (月) 08:26

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