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2009年4月 6日 (月)

なぜ外国人は肩がこらないのか

 日本語以外の言語には「肩こり」にあたる言葉がないので、外国人は「肩こり」に悩まされないとのこと。でも、日本で生活して「肩こり」という言葉を知ると、とたんに「肩こり」に悩まされるようになるそうです。有名な話ですが、おもしろいですよね。

 もちろん、外国人にだって「肩こり」という症状は当然あります。でも、それを表す言葉がないと、自覚されにくかったりするそうです。だから、タイトルの「肩がこらない」というのは、ちょっと正確ではないかもしれません。きっと、肩のあたりが痛いなあ、だるいなあ、みたいな感じなんでしょうね。

 肩のだるさみや痛みという感覚を「肩こり」という言葉によって切り離すという言葉の作用によって、「肩こり」はつくられたとも言えます。つまり、哲学用語で言うところの「疎外」です。切り離された「肩こり」という感覚は、ぼんやりとしただるさや痛さから「疎外」されて、「肩こり」という特別な感覚に昇格し、そのとたんに気になりはじめる、と。

 このプロセスは、広告そのものですね。清涼飲料から「コーラ」を疎外し、コーラから「コカ・コーラ」や「ペプシ・コーラ」を疎外するということですから。広告っていうのは、極論で言えば、ブランドや商品の疎外です。

 もちろん、この言葉の疎外作用には功罪があります。新しい言葉の創作によって、意図的に世論にバイアスをかけることもできるわけです。妙な言葉の流行によって、ことの本質が隠蔽されてしまったり、ミスリードしたり、ということはよくありますよね。私がこだわったもので言えば「コンビニ受診」という言葉とか。もちろん、広告も同様です。この肩こりの話が示唆するものは、私にとっては、けっこう重いです。

 ちなみに、「肩こり」という言葉をつくったのは、夏目漱石とのこと。つまり、「肩こり」大国日本にも、夏目漱石以前は「肩こり」はなかったとも言えそうです。日本人もかつては肩がこらなかったんです、みたいなオチですが、もちろん、夏目漱石が「肩こり」という新しい言葉をつくるくらいの、きつい肩の悩みは、夏目漱石以前の日本人にも存在していたわけで、それを「肩こり」と言うならば、外国人も肩がこります、ということでもあるんですが。

※文中の「コンビニ受信」を「コンビニ受診」に修正しました。ご指摘、ありがとうございました。

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コメント

先日来日したクリントン国務長官は四十肩に悩まされていると報じられていました。やっぱり、西洋の人でも肩こりという症状はあるのかもしれませんね。(^^)/

投稿: (=゚ω゚)ノ匿名希望 | 2009年4月15日 (水) 02:49

英語ではfrozen shoulderというそうです。日本語では、凍結肩、四十肩、五十肩。こちらは「痛み」が悩みらしいです。まれに激痛になり、とってもつらいとのことです。
予防するには、軽いうちにマッサージなんかで軽くほぐすのがいいとのことで、そういう意味では「肩こり」という言葉で日常から意識しておくのもいいことかもしれませんね。

投稿: mb101bold | 2009年4月15日 (水) 10:09

stiff neck とか stiff shoulder とか言うよ。クイックマッサージみたいなのもあるし。

投稿: | 2009年4月15日 (水) 18:29

I have a stiff neck.が一般的なようですね。shoulederに関しては、こちらのニュアンスが参考になるようです。
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1311521858?fr=rcmd_chie_detail
これでも、いや普通にあるでしょという論も成り立つし、あるいは、日本語でも江戸時代からある「肩が張る」から、夏目漱石が「門」で「「指で押してみると、首と肩の継ぎ目の少し背中へと寄った局部が、石のように凝っていた。」という表現により「肩こり」という語が成立したことにより、一気に固有化したという見方もできます。
つまり、「肩が張る」から「肩こり」への概念の跳躍がそこにあった、と。stiff neckは、まだ「肩が張る」的な状態の表現であり、みたいな感じ。どちらかというと、私のエントリは後者に立っているんですけどね。
エントリの例で言うと、「安易な時間外受診」を「コンビニ受診」という言葉にした時から、一気に個別の問題が普遍化するという感じです。

投稿: mb101bold | 2009年4月16日 (木) 01:06

今年の東大後期の英語の1番の英文かよw

投稿: | 2009年4月20日 (月) 19:34

そうなんですか?へえ。

投稿: mb101bold | 2009年4月20日 (月) 21:10

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なぜ外国人は肩がこらないのか この記事によると、外国人が肩が凝らない原因として 肩のだるさみや痛みという感覚を「肩こり」という言葉によって切り離すという言葉の作用によって、「肩こり」はつくられたとも言えます。 ...日本人もかつては肩がこらなかったんです、みたいなオチですが、もちろん、夏目漱石が「肩こり」という新しい言葉をつくるくらいの、きつい肩の悩みは、夏目漱石以前の日本人にも存在していたわけで、それを「肩こり」と言うならば、外国人も肩がこります、ということでもあるんですが。... [続きを読む]

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