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2009年4月27日 (月)

素朴な疑問として

 どうして新聞とかテレビの報道って、こういう切り取り方するのでしょうね。2009年4月25日23時49分にYOMIURI ONLINEに配信された記事のタイトル。報知ではなく読売新聞の記事です。

SMAP・香取さんも番組で謝罪…「絶対に許されない」

 で、中身はこう。後半部分を引用します。

 香取さんは「SMAPのメンバーである草なぎ剛が皆さんに多大なるご迷惑をおかけしたことを深くおわび申し上げます。今回してしまったことは、社会人として大人として絶対に許されることではありません」と謝罪。24日夜に電話で話したことを明かした上で「深く深く反省していました。みなさんに許していただけるのなら、SMAPに一日も早く戻ってくることを願っています」とした。

 普通の感覚として、あの香取さんの謝罪を切り取って「絶対に許されない」とは要約しないと思うんですね。だって、最後に「許していただけるのなら」と言っているわけだし。この謝罪の主題は、文字通り「しかし、もしみなさんに許していただけるなら、一日も早く戻ってくることを願っています」でしょう。

 広告で言えばタイトルはキャッチコピーだと思うんですね。こういうキャッチコピーは駄目。だって、本文読んで「なんだよ」って思いますから。あえて本文の内容とは逆から切り込むキャッチを書く場合は、本文を読んだときに「なるほどねえ」と思わせないといけないんですよね。ある種のカタルシスがないと。それもこの記事にはないし。この謝罪はテレビで見ましたが、タイトルのニュアンスはちょっと違うのではないでしょうか。なんかとっても下品。

 土日は、家でずっと仕事やら何やらをしていて、ながらでテレビばかり見ていたので、草彅さんがらみで、もうひとつ。記者会見でのこんな質問。

——プレッシャーはありましたか?
 ありません。
——じゃあ、どんなときにいつもお酒を飲みたいと思っていたのでしょう。

 まずは質問者のおまえが答えろよ、と思いました。この質問をした人の頭の中では、きっと「プレッシャーがあるから酒を飲む」しか答えがないんですよね。この質問、少し前に「今後、酒を飲みたいですか?」という質問があるんですよね。それに対して、草彅さんは「飲みたくありません。」とは答えなかったんです。で、この展開。

 なんかね、「いかに小さなことであろうと絶対に失敗を許さない」みたいな社会をつくりたがっているような気がするんですね。そういう意志がなければ、こんな要約や質問はできないです。香取さんがSMAPの仕事仲間として、あるいは親友として「絶対に許されない」というのは分かるけど、記事を書く人が「絶対に許されない」と内容をミスリードするタイトルをつける感覚が私にはわからないし、酒を飲む理由を問う質問者の感覚もわからない。

 要するに、自分をものすごく高い棚に置いているんですね。棚に置けているときはいいけど、いつか引きずり降ろされる時が来ます。こういう社会を想定する限りはね。

 そういう社会っていうのが、いかに惨い社会であるかというのを想像したことがないのかな、と思います。言うならば、持続的いじめ社会ですよね。ターゲットを延々と探しつづけることになります。些細な失敗を許さないということは、逆説的には、些細な失敗を探しつづけるということでもあるんです。誰か失敗をしないかと見張りつづける社会でもあるんです。

 しかしまあ、どうしてでしょうね。ミスリードや誘導をしてまでも、そうした価値観を社会に示したいのか、それとも、そういう価値観を求める市場というのが彼らには、はっきりと見えているのか。どちらにしても、とても嫌な感じがします。その嫌な感じは、案外根深いような気がしています。

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日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

コメント

僕も会見で一番きになったのは、ベテラン芸能女性レポーターのあの質問です。あのあと草彅さんの30秒近い沈黙と、「普段からお酒は好きなので、仕事終わった後とか飲みたくなります」と答えていたのが印象的でした。良くぞ堂々と答えた!と。

あの謝罪会見なるものは、聞きたい答えを想定した誘導尋問、そう、まさに公開尋問といった言葉似合ってしまうような嫌な雰囲気の場所だったと思います。mb101boldさんが書かれているように、「自分を棚に上げて」、「どんなミスでも許さない」姿勢というのは劣悪な態度だと思います。誰が望んでいるのかはわからないけれども、ひとつの思考ベクトルに向けて無理やりに論調をまとめていく姿勢は、何か戦時中の狂気みたいな物さえ感じ取れてしまいます。

でもこういう、ウィットにとんだ人が居てくれると、ちょっと救われる気がします。

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投稿: ICE9 | 2009年4月27日 (月) 10:53

mb101boldさん、こんにちわ。
私はこの問題、結構難しいと思うんですよね。確かに、おっしゃるようにマスコミの姿勢は下品だし、小さな失敗を許さないということは、逆説的に小さな失敗を探し続けるとこでもある、と、思いますし、それはどうかなと思うんですが、この人の場合は、すごく沢山の人の利害を背負っているんですよね。そして酒の上での失敗という、個人的には些細なことが、致命傷となるということもあるわけで。それがひとつ。それと、アルコール中毒の問題もあると思います。つまり、お酒でなんかを紛らわせることを、しかたないとするというか。酒乱とか酒癖の悪さというのはどういうメカニズムで起こるのか、はっきりこうとはいえないですが、酒乱の人というのは、飲んでいないときはものすごくいい人なことが多いです。で、それはしかたないのかというと、そうでもないんじゃないかと。本人のためにも、スマップが大好きな子供たちのためにも、彼が言った、「大人として恥ずかしい」とはなんなのか、と、お酒との付き合い方を、考える機会にすることが出来るだろうとも思うし。

投稿: ggg123 | 2009年4月27日 (月) 11:05

> ICE9さん

あの沈黙は救いだったなと私も思います。あれがなければ、きっと彼はあの空気に取り込まれていたんでしょうね。
あの状況で個を保つのは沈黙だったということは、なんとなく考えさせられるものがあります。

>ggg123さん

逮捕は不運だったとは思うけど、まあ状況的にはしょうがないかなと思います。記者会見も必要でしょう。彼は様々なビジネスを担っているスターだから、あれだけ話題にされるのもわかります。きっとお金の責任も取らされているし。そのことについては異論はないというか、そんな感じです。酒の失敗は多めに見ろ、ってわけではなくてね。
このエントリで問うているタイトルや質問でのミスリード、誘導で、もしその誘導に「アルコール中毒」という社会問題にからめた大義名分があるのだとしたら、私はそちらのほうが問題なんじゃないかな、と思うんですよね。こういう大義があれば、人って、いくらでも残酷になれると思うんです。
もちろん、今回のことをきっかけに個々人が考えるのはいいんですよ。その話題を深めるのもいいと思います。でも、そのことをあの場所で、失敗してしまった個人に対して問うのは筋が違うかなあ。そんな重いもの、いくらスターでも個人では背負い切れないもの。

投稿: mb101bold | 2009年4月27日 (月) 13:35

今度のことに限らず、ここ数年、キレイごとがまかり通りすぎる世の中になっていて気持ち悪いです。マスコミだけじゃなく、ネットがその傾向を強めるのに拍車をかけてる気がします。

投稿: denkihanabi | 2009年4月27日 (月) 23:28

mb101boldさま
おはようございます。
この件について人生少し先を行く人間の考えです。
小生、マスコミ、テレビ嫌いで詳しくは知りませんが、皆さんが歪んだと感じて居られるのは日本の社会構造にあります。
小生はビジネスで成功と失敗をして現在イーブンです。問題は失敗した時のカムバックが日本では出来にくい現実で、殆ど抹殺されます。
その恐怖で様々な取り繕いがあるのでしょう。願わくば真に本人が反省しているならば、許容できるゆとりと潤いのある日本になってもらいたいと思います。

投稿: あんぷおやじ | 2009年4月28日 (火) 05:23

>denkihanabiさん

ネットがその傾向を強めているというのは、社会の構図の単純拡声だからでしょうね。きっとそれは可視化されたということに過ぎないような気がします。
なんとなく、これからはネットもデフォルトで取り込んだ「社会」というのを考えないといけない気がしています。もはやネットは対抗言論でもないような気もしますし。

>あんぷおやじさん

一度失敗した人は、社会や自分の気持ちの安定のために失敗したままでいてほしいみたいな心性があるのかもしれません。
それは、きっと極度に失敗を恐れる心性にもつながっていて、いつのまにか心ののりしろがすごく少なくなってしまっているような気がします。

投稿: mb101bold | 2009年4月28日 (火) 09:02

初めまして、おもしろいブログを見つけて嬉しいです。
チラシを作る仕事をしていますので、色々と勉強させていただきますね。
これからも拝見させて頂きます。delicious

投稿: ひとみ | 2009年4月28日 (火) 12:16

ひとみさん、はじめまして。今後ともよろしくお願いします。

投稿: mb101bold | 2009年4月28日 (火) 12:59

こんにちは。
相変わらず、 mb101boldさんの文章は
時間を忘れて読みふけってしまいます。
草薙くん関連でのマスコミの意地悪丸出し報道は
とても不快な出来事でしたね。
そして、自分を棚に上げることの恥ずかしさを
私も十分身にしみているつもりではありましたが、
改めて気をつけなければ!と思いました。
ほんとに頭にきたのでしようけれど…ね。

(よけいなおせっかいですが)
4月20日エントリーの記事も興味深い内容でした。
しかしながら、「デイリーポータルZ」のリンクが
間違ってましたのでご報告です。
ちなみに私はそのサイトは知りませんでした。
それから、『ある広告人の告白」のリンクをいただいても
よろしいでしょうか?
不都合がございましたらお知らせください。
お願いいたします。

投稿: MGeco | 2009年4月30日 (木) 11:22

MGecoさん、こんにちは。
すべてのことが捨象される立場というものがある、と思っているんでしょうね。でも、ほんとはそんな立場というものはないのにね。
リンクの間違いの件、ありがとうございます。修正しました。当ブログのリンク、引用などはご自由にどうぞ。

投稿: mb101bold | 2009年4月30日 (木) 12:31

mb101boldさま
リンクの件、了解ありがとうございます。

投稿: MGeco | 2009年5月 1日 (金) 15:47

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