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2009年5月 2日 (土)

小さな変容を丹念に記述していきたい

 なんとなく思うのだけれど、どこに自分を置くのかで見えるものが違ってくるように思います。例えば、ネットでブログなんかをやっていると、否が応でもメディアの多様化による「広告」の変容が見えてくるし、そうでない人には、その変容はあまり見えないものだろうなと思います。少なくとも、見え方は少し違うはず。

 けれども、ネットにどっぷりとつかりすぎると、その変容ばかりが鮮明に見えすぎて、あいかわらず変わらない世界というものが確実にあることを見逃してしまい、明日には世界がまるっきり変わってしまうかのような錯覚に陥りがち。なにごともそうだと思うけど、ものごとの変容というものは、現象としては、それほどはっきりとしたものではなく、後から見て「あっ、あのときそうだったな」と思うような小さな出来事の積み重ねの総体として、ゆっくり進んでいくものです。

 急に起こるような変容は、じつは、革命と呼ばれるものであって、革命とは人為的な強制力が起こすものだから、そんなものは一個人が案じてもしょうがないし、それを語るのは、きっと考察ではなくプロパガンダなのでしょう。少なくとも、私は、そうしたプロパガンダを語るつもりもなく、乗るつもりもないし、いま進みつつある変容は、そんな騒がしいプロパガンダと、変わらない日常との間にあるのだろうから、その中で起こる小さな小さな気づきを丹念に記述していって、その場所から確実に見える少し先の未来を、ある種の予感として書いていくしかないのだろうな、とも思います。

 ただ、ブログをやっているからその変容がわかるなんて傲慢な話をしたいわけではなくて、少なくとも私の実感で言えば、私は、広告の効果を追求する中での、表現を含めたこれまでの方法論による効果の減少を肌で感じてきていて、平べったい言葉で言えば、「こういうの、ほんとに世の中で受け入れられているのかな」といった小さな違和感がまずあり、それが、ブログを書くことや、ネットの息づかいを感じること、ネットで知り合った人たちの言葉を聞くことで、その理由が少しずつカタチになってきたという感じで、つまり、ブログをやっているということは、その補完に過ぎないのかもしれません。

 私の場合で言えば、今までの広告業界のメインストリームのトップランナーではないということがあるのだろうと思います。業界のトップランナーという場所に私がいれば、その賞賛の中で、変容は見ようとしないだろうし、見ないほうが自分の利益にもなるだろうから、じりじりとした滅びの中に身をまかせていただろうと思います。逆に、この先につながるような成功体験もそれなりにあり、人からもたまに賞賛されることもあるという場所にもいて、少なくとも自分の利益のために革命を叫ぶような心性に陥らずに済んでいるのかもしれません。自分で望んだことではないのかもしれないけれど、変容を考察していくには、いいバランスにあるのでしょうね。まあ、トップランナーでいて、かつ、変容にも気づいている、みたいなことが、いちばんカッコいいのかもしれませんが、人間、なかなかそんなふうにはいかないもんですし。

 これから広告がどうなっていくのかはわからないけれど、これからも広告をやっていくには、自分のキャリアも含めて、案外いい場所にいるのかもしれないな、と最近は思うようになってきています。どちら側の熱狂にも身を置けない中途半端さやもの足りなさはあるけれど、それはそれで、その先にあるものを見続けるためには、まあしゃあないかな、と。そんなスタンスでこれからも、なんだかんだ書いていこうと思っています。明日からしばらく大阪です。

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コメント

いつも楽しく拝見しています。

自分の中でも、
コミュニケーションビジネスの行き過ぎた崩壊論と、
テクノロジーも加味した新しいビジネススキームの間で、
バランスのとり方というか、ポジションのとり方で苦慮している気がします。
今、曲がり角の渦中にいるという認識はもちろん間違っていないと思いますが、
一方で、こういうタイミングでどのような状況認識をしているかを部下やクライアントに伝えるのは難しいですね。

投稿: superjetter | 2009年5月 7日 (木) 11:12

>一方で、こういうタイミングでどのような状況認識をしているかを部下やクライアントに伝えるのは難しいですね。

これは、考えれば考えるほど悩ましいです。私は、部下には「世離れはするなよ」と言うくらいですかね。広告という文化と、広告を受け取る世の中のどちらかを選ぶなら、まよわず世の中をとれ、という感じでしょうか。クライアントには案外率直に言えるかもです。金がかかっているので。

投稿: mb101bold | 2009年5月 7日 (木) 21:21

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