おもろい、と、おもしろい
日曜お昼のテレビ番組「ウチくる!?」。今日のゲストは、misonoさんでした。
それにしても、おもろい娘さんですねえ。いい。すごくいい。自分のことを「ウチ」ってナチュラルに言う関西の娘さんは久しぶり。小学校の頃は、じゃりン子チエのチエちゃんみたいに「ウチなあ、ウチなあ」と言う娘はたくさんいたけど、もう絶滅していると思っていたら、こんなとこにいてたんですね。
一頃、あまりテレビに出なくなったのは、太ってしまって、事務所から「マイナスプロモーションだからテレビに出るなって言われていた」なんてことを、ご本人があっけらかんと語っておられました。
いちおう私も業界人なんで、というかじつはたまたまなんですが、day after tomorrowでデビューしたときの業界向けデビューイベントにも行っていたりして、確か、私が当時コピーライターとしてかかわった某スノーボードブランドのテレビCMが、misonoさんのCMデビューだったはず。カメラ目線で「リアル。」とmisonoさんが語りかける、カッコよさげなやつです。
あの頃は17歳だったんですよね。姉の倖田來未さんが後からデビューして、一躍スターになって、いろいろ複雑だったんだろうな、なんて普通に思うんですが、それでも明るくケラケラ笑うあの感じは、きっとまわりの人たちをすごく楽にしたというか、単純にえらい子だなあと思います。
関西の文化というか、これはもう全国区の文化になったような気もするけど、たとえば、歌がうまい、かわいい、かっこいい、かしこい、とかの価値観と同等かそれ以上の重さを持つ価値があって、それは、おもろい、という価値観。
私が小学校の頃は、遊んでばかりいると「そんなことしとったら、吉本入れるからな」と言われて「いややー、吉本行くの、いややー」とか言っていたんですよね。つまり、それは、ちょっと逆説的な庶民の表現でもあるけれど、かしこい、という価値観の反対側に確実に、おもろい、という価値観で動いている社会が存在している証拠なんだろうなと思います。
この、おもろい、という価値観は、おもしろい、とは微妙に違っていて、私なんかは、どうあがいても、おもろい、という域にはいけなくて、おもしろい、という価値観の人なんだろうと思います。
たとえば、吉本興業の笑いの歴史は、ギャグの歴史だったりします。仁鶴さんの「うれしかるかる」とか「どんなんなかー」から始まって、三枝さんの「いらっしゃ〜い」、さんまさんの「パァ〜」、寛平さんの「アメマ〜」、ジミー大西さんの「ヤッテル!ヤッテル!」などなど。そこに理屈はないんですよね。その理屈のないアナーキーな世界が、おもろい、の世界。
その、おもろい、が成立するしくみみたいなものを解明することができたら、無敵になれるよなあ、なんて考えてしまうところが、おもしろい文化圏の住民である私の、私たる所以なんでしょう。だから、おもろいヤツに会うと、もう無条件降伏なんですよね。それで、心の中で、おもろい、では負けたけど、おもしろい、では負けないからな、とか思ってしまうのも、おもしろい文化圏ならではなんでしょうね。
そう言えば、鶴瓶さんが司会の「いろもん」という番組で、ダウンタウンをゲストに招いたときに叫んだ言葉が「くやしい。もっとおもろなりたい。」だったよなあ。
追記(6月15日):
「おもしろい(面白い)」という言葉は、「面=目の前」+「白い=明るい様」で「目の前が明るくなる」という意味から来ているという説が有力だそうです。で、もともとは「美しい光景・景色」という意味で使われ、転じて、楽しいとか、愉快などという意味で使われるようになったとのこと。でも、現在使われる意味と同じ用法で「おもしろい」を使う例は、けっこう古くからあったようで、そういう意味では、この「おもしろい」という言葉は、日本語としてはかなり年季が入っているようです。ちなみに、漢字から読み取れる「顔が白い」とは関係がないらしい。
目の前が明るくなる、というのは、なんとなく分かる気がしますね。知的な話でも、単なる与太話でも、おもしろい話は、自分もまわりも明るくしますものね。
「おもろい」は、調べたわけではありませんが、きっと、単純に「おもしろい」の関西訛でしょうね。関西はなんでも短縮しますから。マクドとか、レイコーとか、レスカとか。なので、「おもしろい」と「おもろい」は同義とも言えるけれど、文化的な考察からこのふたつの語を見ると、確実に違いがあるような気がします。それは、私が関西出身だからかもしれませんが。
なんとなくですが、こんな感じかな。
このエントリ、おもしろいかどうかは分かりませんが、書いている本人は、書いてるうちにおもろなってきて、こうして追記までしてしまってるわけなんです、という感じ。この、おもしろい、と、おもろい、の差。うーん、余計にわかりにくいか。
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コメント
また聞きですが、芸人さん界隈では「この業界で10年がんばったら『おもしろい』から『おもろい』になれる」というような言い方をしたりするらしいです。
個人的には「おもろい」は直接的に「その人そのもの」を指し、「おもしろい」はもう少し離れて、人がやった行為や言ったこと、作ったものを形容する表現のように思います。言葉自体は、関西独特のものですが、このへん、突っ込んで普遍化できると、非常におもしろいかもしれませんね。
投稿: slice | 2009年6月15日 (月) 06:32
10年がんばったら「おもろい」になれる、というのは興味深いですね。
>突っ込んで普遍化できると、非常におもしろいかもしれませんね。
おもろいというのは、おもしろくなるかもしれないから普遍化に向けていろいろやってみる、ということなんでしょうね。
投稿: mb101bold | 2009年6月15日 (月) 12:19