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2009年7月31日 (金)

おすそわけ

 毎日、暑いですね。暑中お見舞いの、おすそわけです。

 前に書いた「広告の定義」というエントリに関連して、tom-kuriさんからメールをいただきました(メール、ありがとうございました)。そこに添付されていた論文が興味深かったので、ひとりじめするのはもったいない、ということでご紹介します。ではでは。

  • 広告はadvertisementで、広告業がadvertisingですが、もともとはラテン語のadvertere(ad-へ+vertere向ける)、原義は「振り向かせる」「注意を促す」である、というのは有名な話。要は「目立たせる」ということですね。「違いを際立たせる」とも。「○○は、同じジャンルの製品の中でココが違います」「当社の◎◎は調査の結果、満足度が最も高いサービスです」とか、そういうセールスポイントを強調して、originality(独自性)を明らかにすることが広告に求められているわけです。
  • 一方、communicationの(com)というのは、ラテン語の前置詞 cum (with)の異形で、「共に(with,together);全く(completely)」という意味です。comedy, commerce,common(ly),commercial…といった言葉にも使われていますね。共に、共同して、一か所に、相互に、同時に、一斉に、調和して、続けて……。そういう行為、活動の総称です。つまり「あなたと私は一緒ですよ」「あなたのことはよく分かっています」「いつまでもよろしく」「同じ人間じゃないですか」というような。
  • 相手への理解、共感がなければ人は(指示命令以外で)自発的に動いてくれません。相手の心を動かして初めて、覚えてもらい、信頼されて、深い関係を築いていくことができるのです。
  • 芸術であれスポーツであれ、それが人を感動させるのは「自分と同じ人間が、こんなことができるんだ(もしかしたら自分もできるかもしれない)」と訴えかけてくるからです。一言でいえば、それは「普遍」ということです。
  • 広告コミュニケーションとは、この相反する行為「違いを明らかにして、独自性を出す」ことと「共感を得て、普遍性に訴える」ことを生活者(つまり人間)に対して同時に行う活動なのです。

 もうひとつ、おすそわけ。掲載許可をいただくためのメールのお返事に、このようなお言葉。また、お書きになった関連エントリはこちらです。

広告人は、基本的に「褒める人」だと思っています。
どんなヒトであれモノであれ、この世に産まれたからには、
何かしらいい所が、誰かの役に立つところがあるはずだ、
と信じて、それを見つけて褒める。伸ばす。

 これは忘れがちだし、自分に余裕がないとなかなかできないことでもあるだろうし、それを完璧に実行することはできないだろうとも思いますが、基本的に「広告」的な態度というのは、こういう態度のことを言うのだろうな、と思います。私は、これからも「広告人」であり続けたいと思っています。

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広告のしくみ」カテゴリの記事

コメント

お疲れさまです。>mb101boldさん、
ご紹介、恐縮かつ光栄でございます。決して「論文」と呼べるものではなくて単なる「挨拶文」ですし。リンクいただいたブログの直近のエントリーが全く「褒めて」いない「貶す」ものだったので急遽更新しておきました(笑)
それから、ものを書いたり宣言する、という行為は、そもそもそれが「余裕がないとなかなかできないことでもあるだろうし、それを完璧に実行することはできないだろう」からです。だいたい「鬼十則」なんか絶対遂行不可能でしょ? でも目標や夢があるから人類は進歩するのだと思っています。
ぼちぼち頑張りましょう。これからもよろしくお願いいたします~

投稿: tom-kuri | 2009年7月31日 (金) 18:05

こちらこそありがとうございました。私にとっては、advertisingとcommunicationが本質的に相矛盾する概念で、その対立した概念が昇華されて「広告」として機能するという部分に、すごく刺激されるものがありました。
それはちょっと大げさに言えば、このところ考えている「広告的」というコミュニケーションのあり方に対する、大きなヒントにもなりました。
また、この指摘は、私だけでなく広告に携わるすべての人にも大きな示唆になるだろうな、と思って引用させていただきました。

>でも目標や夢があるから人類は進歩するのだと思っています。

ほんと、そうですね。ぼちぼち、ゆるゆる、コツコツ、だけど立ち止まらずにいけるといいですよね。今後ともよろしくお願いします。

投稿: mb101bold | 2009年7月31日 (金) 18:32

こんばんは。。

>広告コミュニケーションとは、この相反する行為「違いを明らかにして、独自性を出す」ことと「共感を得て、普遍性に訴える」ことを生活者(つまり人間)に対して同時に行う活動なのです


とても素敵な定義ですね。
刺激をうけて、ますます仕事を楽しめそうです。
私もまた広告人としてあれたらいいなと思います。

投稿: coro | 2009年8月 3日 (月) 00:16

どっちかだけでは駄目なのよ、というところがいいですよね。とかくどっちかだけになりがちですしね。

投稿: mb101bold | 2009年8月 3日 (月) 00:34

はじめまして。
とても、良い話を聞かせていただきました。
「表があれば裏がある」ではないですが、相反することでバランスが保たれることは往々にしてありますよね。
この2つの考え方は、広告づくりで必要なバランスのとり方を教えて頂けた気がしました。
おすそわけ、ごちそうさまでした(^^)
※しかも通りすがりですが・・・

投稿: 蒼天 | 2009年8月 4日 (火) 14:00

はじめまして。

>おすそわけ、ごちそうさまでした(^^)

おいしかったでしょ、でしょ。
これからもよろしくお願いします。

投稿: mb101bold | 2009年8月 4日 (火) 23:49

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