タイムラグと閾値
景気でも、業界の動向でも、道路の渋滞でも、何にでもタイムラグがあります。
今、「餃子の王将」に行列ができています。少し前に、メディアで「餃子の王将」ブームと盛んに言われていた頃は、今ほどの行列ではありませんでした。たしか、雨上がり決死隊がラジオで話し出して、生中継したりして、決定打は「アメトーーク!」で王将芸人という企画をやったことでブームが生まれたんですよね。
このブームと行列のタイムラグは、おもしろいな、と思いました。私は、このタイムラグは閾値で説明できるのではないかと思っています。
「餃子の王将」がメディアでブームだと言われた時点では、じつは閾値を超えてなくて、そのブームをメディアで知り、巷で話題にされ、熟成されて、やっと閾値を超えて、今、「餃子の王将」に長蛇の列ができる、というプロセスかな。このブームの場合は、タイムラグが約1ヶ月でしょうか。
このタイムラグ感覚をいつも意識していたいと思っています。効果はすぐには出ません。必ずタイムラグがあります。だから、販促活動やブランディングにあせりは禁物。あせりをなくすには、実務経験からつかんだタイムラグ感覚を根拠にして、「大丈夫です。もうすぐです。」と言えるかどうかが肝のような気がします。
そのとき閾値という考えがなければ、その人はただの楽天家になってしまいます。何でもそうですが、閾値を超えなければ、待っても何も起こりません。見事に起こりません。お金をドブに捨てるようなものです。いかに閾値を超えるか。また、どのくらいの時期に閾値超えをするか。その2つの基軸が、コミュニケーション設計では重要な気がします。
クリエイティブは、この閾値に対してどういう働きをするか。それは、閾値を超える時期を設定する主要因として働きます。一気に閾値を超えて、瞬間的に暴風を吹かせるのか。それとも、じわじわ閾値に迫り、閾値を超えた後も、その緩やかな風を長くキープするのか。その鍵を握るのは、じつはメディア量ではなくクリエイティブのような気が私はしています。
もちろん、この話は、クリエイティブがメディア投下量に対して「×1」のときでも閾値を超えるということが前提の話です。それ以下の場合は、クリエイティブは、本来なら閾値を超えないであろうメディア投下量であるときに、閾値を超えるための主要因として機能してしまい、本来の目的である風のコントロールとして機能しなくなってしまいます。
わかりやすく言えば、奇跡を起こすためにクリエイティブが使われる、ということです。その昔、「ケタグリ」と言われていたクリエイティブ手法です。作る立場から言えば、「ケタグリ」は博打です。博打は面白いけれども、ビジネスでやるからには、毎回博打ではきついのだろうと思います。だから、なるだけ博打ではない勝負をしたい。そんなこんなで、ここらへんまでは大丈夫です、保証します、と言いたい。
タイムラグと閾値。
低予算で即効性、みたいな世知辛い世の中ではついつい忘れがちですが、けっこう重要なことではないかな、と思っています。時代に関係なく基本的なことですしね。ではでは。
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コメント
いつも楽しく読んでいます。
このタイムラグの話と直接つながる話ではないのですが、一度流行したものが再流行するのにだいたい八年くらいかかると、佐藤雅彦さんが言ってたのを思い出しました。
(違ってたらごめんなさい)
投稿: nishimit | 2009年8月22日 (土) 06:41
いつも楽しく読んでいます。
このタイムラグの話と直接つながりはしないのですが、一度流行したものが再流行するのに、だいたい八年くらいかかると(著書が手元にないので、アバウトです。間違っていたらごめんなさい)、佐藤雅彦さんが言っていたのを思い出しました。
投稿: nishimit | 2009年8月22日 (土) 06:47
佐藤雅彦さんもCMプランナー時代に閾値を意識されていましたよね。確か「宣伝会議」の連載だったような。
八年というのは、なんとなくそう言えば、と思います。八年くらいで人のココロのコップになみなみと水が注がれて表面張力がおこるくらいになって、なにかのきっかけで、あふれるという感じなんでしょうか。
このあたりの期間は実験とかないでしょうから、それぞれの人の勘でしょうけど、佐藤さんが八年と感受しているのは、わりと精度が高いんだろうな、と思います。
しかし、このへんの勘所って面白いですよね。
投稿: mb101bold | 2009年8月22日 (土) 11:43