« 二項対立ではなく | トップページ | フィー制というのはもともと »

2009年8月24日 (月)

ほんまや

 大阪にいる親父と電話で話していたら、こんな話に。

 「ほんまや、知ってるか?」
 「えっ、ほんまや?知らんけど。」
 「水や。」
 「水?」
 「ペットボトルの。水道局の。」
 「水道局?」
 「そうや。大阪の水道局がつくってるやつ。話題やで。」

 うちの親父は、大阪に帰るといつも「広告みたいな、そんな若くて感覚のするどいやつしか通用せえへん商売、いつまでもできると思ったらあかん。おまえももう若くないんやから、しっかり考えんと。」と小言ばかり言うわりには、ときどき関西のとっておき情報をこうして教えてくれるのです。

 電話を切って、「ほんまや」ってなんだろ、と思ってGoogleで検索すると、ありました。

Honmayaimage_2

 「なにわ育ちのおいしい水 ほんまや "Honmaya"

 大阪市のページですね。大阪市水道局がつくっているようです。「“ほんまや”とは、大阪市の高度浄水処理水を加熱殺菌した上で、ペットボトル(500ml )に詰めたものです。ラベルも一新にピンクのボトルで新たにデビューしました。」とのことで、希望小売価格が100円(税込)だそうです。このサイト、なかなかのつくりで、お役所なのに、とってもいい感じ。そこらの民間企業顔負けです。こういうのは元MBSアナウンサーの平松市長効果なんでしょうね。

 このネーミングもよくできてますねえ。こんな感じでしょうね。

 「大阪の水道水って、まずくて飲まれへんわ。」
 「それ古いなあ。今はすごくおいしなってるんやで。」
 「ほんまかいな。」
 「ほんま、ほんま。これ、飲んでみ。」
 「あっ、ほんまや。」

Honmaya_3  お見事。ナイスです。たかがネーミングですが、こういう商品がこんな素敵なネーミングをまとって世の中に出ることで「大阪市って、最近いい感じだよなあ。」みたいなブランド広告にもなるし。この「ほんまや」の場合は、たぶん広告をやっていないのでしょうけど、ネーミングが広告として機能するだけの力を持っていますよね。

 私はよく若い人に「販売促進の売りが目的の広告だって、まわりまわってブランド広告なんですよ。販促広告とブランド広告を区別するのは、作り手の理屈。だから、しっかり作らないと駄目。」と言っていますが、これなんか、お手本ですよね。これ見て、大阪市っていいじゃない、と思う人、確実にいると思うんですよね。

 離れてみてわかりますが、こういうのって関西方面は上手ですよね。茶目っ気のさじ加減が絶妙というか。ネーミングやデザインに、説教くさいエコロジーの匂いがこれっぽっちもしないのも、じつは相当考え抜かれてるんじゃないでしょうかね。きちんと100円で売るところも、ほんとに100円で売れそうなとろこも、大阪らしくってとってもいいです。大阪の水はお金出しても納得のうまさです、というメッセージも感じるし。

|

« 二項対立ではなく | トップページ | フィー制というのはもともと »

広告の話」カテゴリの記事

コメント

扇町の水道局に売ってました。パッケージの色はどうかなと思ったんですが…味はまあまあでした。広告やってる人まわりの偏った印象ですが、あんまり知られてなさそうではありました。

投稿: shiraber | 2009年8月24日 (月) 10:41

まあ、ネーミングといい企画といいお昼のワイドショーっぽいつくりではありますし、昼間のテレビを見ない人には知られないのかもしれませんね。

投稿: mb101bold | 2009年8月24日 (月) 12:27

こんにちは。いつも拝見しております。「ほんまや」知りませんでした。ネーミングが、仰る通り、絶妙ですね。3回生まれ変わっても、およそ考え付きそうにありません。そして、お父様も素晴らしいなと思いました。私の父、「お前何しとんねん」、「広告の文書いてる」と見せると、「字ぃきれいやな、どこでなろてん?」。レタリング職人と思い込んでるようです。

投稿: 新聞広告.com | 2009年8月24日 (月) 16:45

この記事を見て初めて知った(^^;
はっきり言って、やられた!って感動です!!
地方から都会に出たとき、水の不味さは笑えるほど感じた。京都に行った時、お冷やにレモンが入れてある理由を聞いて納得した。そんなイメージがある私のような人間からすれば、「売り出すまで自信がある味になったんだ」と飲まなくてもその変化の差が感じ取れました。
実際飲んだら、飲み慣れていない水だから色々と感想はあるだろうけど、「水が不味かった」というのは、逆説的な物差しができて、過去の話に切り替わりますよね〜。
いや〜、凄いわぁ〜。
あっぱれ大阪!さすが大阪!

投稿: たか | 2009年8月24日 (月) 17:45

>新聞広告.comさん

「どこでなろてん?」という台詞、お父様、いい味だしてますねえ。それに引き換え、うちの親父はちょっと知恵つけてきて、なんか憎たらしくなってきてます(笑)。
とは言え、なかなか我々の仕事って説明しにくい部分があるかもなあ、とは思いますねえ。

>たかさん

浄水もレベルが上がったけど、琵琶湖と淀川の水質もよくなってきたらしいです。私は淀川の近くだったので、ワンドでよく遊んでましたが、こんど久しぶりに行ってみようかなと思っています。
子供の頃は、夏になると水がまずかったのですが、それが過去になる視点が得られるのは、うれしいですねえ。

投稿: mb101bold | 2009年8月24日 (月) 21:05

はじめまして。
初めてコメントさせていただく、mtと申します。
以前からブログのほうを楽しく拝見しています。

確かにこれは関西ならではという感じですね。
ただパッケージの色は・・・。
まぁそういうのもひっくるめて関西っぽいかんじですね。

最近ブロブを始めました。
よろしかったら是非、覗きにきてください。
それでは失礼いたします。

投稿: mt | 2009年8月24日 (月) 22:51

ウェブサイトを見るとパッケージの色は前は違っていたみたいですね。曰く

このボトルは、まず、
その1 大阪らしさ
その2 めだつ!!
その3 特に、女性にも手にとっていただきたい

とのことです。 

投稿: mb101bold | 2009年8月25日 (火) 08:12

こんにちは。はじめまして。
最近、コピーに関する調べ物をしていてこちらのブログにたどり着きましたが、コピーだけでなく色んな勉強になるなぁ、と思って楽しく拝見しています。

既にご存知かもしれませんが、東京都水道局にも「東京水」という同じような商品があります。
初めて知った時は、水道水を売るなんて!と驚きましたが、「ほんまや」はそんなのどうでもよくなるくらいの衝撃です。
すごいアピール力!さすが関西!

「東京水」は、高度な浄水技術を前面に出し、世界に誇る水として、こぎれいに売っています。イメージカラーはブルー。
あまりに対照的ですよね。
商品がほぼ同じなだけに、広告の楽しいパワーを感じられて、なんだか嬉しくなってコメントしました!

投稿: dot_path | 2009年8月25日 (火) 12:44

はじめまして。
東京都水道局の「東京水」のウェブサイトを見ました。こちらは、直球で真面目にケーモーという感じですね。
この東西の対比は面白いですね。どちらも広告として正解だけど、さあ、あなたならどちらのやり方を選びますか、みたいな感じで楽しめますね。
私は、どちらかというと「ほんまや」をチョイスしますね。これは人それぞれなんだろうなあ。

投稿: mb101bold | 2009年8月26日 (水) 00:22

はじめまして。
いつも拝見してます。大阪でコピーライターしています。
自分がネーミングした商品を取り上げていただいたので、すごく嬉しくて初めてコメントさせていただきました。
ネーミング&デザインを、ウチの会社でやったんです★☆
まさに、
「大阪の水おいしなったで」
「うそやろ〜」
「ええから飲んでみて」
(飲んでみて)あっ、ほんまや!」

がネーミングのコンセプトです。
27年大阪に住んでいますが、
確かにおいしくなってます!

投稿: リー | 2009年8月27日 (木) 16:14

リーさん、はじめまして。
そうですか、それはそれは。こういう出会いって、ビバ、インターネットですね。グッドでナイスなネーミング、どうもありがとうです。ほんと、感心しました。なんか世の中が楽しくなりますよね。
私は1ヶ月に1、2回大阪に帰ってますが、そう言えば水がまずいと思ったことは最近はないですね。やるな、淀川!やるな、柴島!という感じです。ね。

投稿: mb101bold | 2009年8月27日 (木) 23:30

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: ほんまや:

« 二項対立ではなく | トップページ | フィー制というのはもともと »