「がんばっとるか」
なぜか年の瀬になると思い出すことがある。大学時代の友だちのこと。生きてれば、同い年だから42になるはず。同じ関西出身で、卒業して関西に戻って、何度か会ったりもした。ヤツは司法試験に受かったばかり。私は、西梅田のデザイン会社で新米プランナーをやっていた。
神戸の元町で昼から飲んで、冷やかしで楽器屋さんに入って、大学時代に欲しくてたまらなかったスタインバーガーという名のベースギターを見つけた。素人ベーシストが持て余すような高価なベースギターだった。
「がんばっとるんやから、買うたらええがな。」
そんなヤツの口車に乗せられて買ってしまった。あれから、そのベースはあまり活躍しなかったけれど、まだ家にある。
2年前にもこんなこと書いていたんだよな。確か、ヤツのことを尊敬する若い弁護士さんのブログをたまたま見つけて、たまらなくなって書いたもの。2007年の年の瀬の記事。
吉田という男の話。
その男は、大学時代の同級生で、弁護士を目指していた。同じ関西出身ということもあり、すぐに気があう仲になった。
吉田は弁護士になり、私は広告屋になった。
私が再び仕事で東京に出るときに、東京での住まいが決まるまで、当時、司法修習生だった吉田のアパートに一週間ほど居候をさせてもらった。それが、吉田との最後になってしまった。
あれから、お互い仕事が忙しくなって、連絡もとらなくなった。便りがないのは元気な証拠なんて気取っていた。吉田が亡くなったのを知ったのはネットだった。毎日新聞神戸版のニュースになっていた。
あのニュースを見てから二年が経って、弁護士時代の吉田を知る弁護士さんのブログを見つけた。吉田を、人間として、弁護士として敬愛し、哀悼する言葉がそこに綴られていた。
吉田の口癖は、いつも、「がんばっとるか」だった。大学時代、ふさぎこんで六畳一間アパートにしばらく引きこもってると、深夜、なんの連絡もなく、酒と食べ物を持ってアパートに来てくれた。第一声は「がんばっとるか」だった。そんなことを思い出した。
おう、吉田、がんばっとるよ。そっちはどう。こっちは、いろいろあるけど、それなりに元気にやっとるから、心配すなよ。風の噂じゃ、あれから一生懸命がんばったみたいだから、しばらくゆっくり休めよな。じゃあ、またな。
(2007年12月14日)
2009年がもうすぐ終わる。
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コメント
同級生が亡くなるって哀しいですよね。学生時代に同じ実習仲間だった友人が亡くなり、もう10年くらいたったことを思い出しました。学年は一緒でも少し年上の素敵な女性でした。もうその方のその時の年齢より、自分が年上であることに月日を感じました。亡くなられた吉田さんを敬愛している後輩がいること、mb101boldさんがこうして偲ぶことで、吉田さんは素敵な幸せな方だなあと思います。
投稿: しばはな | 2009年12月20日 (日) 19:57
ときどき思い出します。とある大きな事故の弁護団のひとりとして尽力したと新聞に出ていました。いいヤツでしたよ。
年の瀬の忙しい時ですが、なんか風邪が流行っているようです。しばはなさんもお風邪など召さぬよう、あたたかくしてお過ごしくださいませ。
投稿: mb101bold | 2009年12月20日 (日) 20:17
お心遣いありがとうございます。
mb101boldさんも年末で忙しいでしょうからお体ご自愛ください。
投稿: しばはな | 2009年12月20日 (日) 22:25