« おばちゃんたちの会話。 | トップページ | 出版不況に関するニュースを読んで思ったこと »

2009年12月12日 (土)

内田裕也さんの広告戦略がRock'n Rollだった件

 まずこう来ました。

 行政刷新会議の事業仕分け。

 「もっと丁々発止かと思ったが、意外とちょっとなれ合いっぽいところがあったな」。27日、会場にロック歌手の内田裕也さんが現れた。

 91年の東京都知事選に立候補した内田さん。「今も政治にひそかに関心を持っている。(事業仕分けは)民主主義として画期的なことだから」と事務所に内緒で来たという。「ロック代表として俺(おれ)みたいなのがここに来ることで、社会的な関心がもっと広がればいいな、とちらっと考えました」

内田裕也さん「ロック代表として」事業仕分けをチェック(11月27日23時12分) - asahi.com

 そんでもって、12月8日発売のSPA!の連載「文壇アウトローズの世相放談 これでいいのだ!」にて、坪内祐三さんと福田和也さんの対談でこう来ました。

坪内 でさ、例の仕分けね。蓮舫には、まあいろいろと思うこともあるけれど、あの仕分け会場になんと内田裕也先生が、ちゃんと8時半から並んで見学に行ったでしょう。(後略)

福田 しかし、なんでいきなり内田裕也は、仕分け会場に行ったんでしょうね。ロケン&ロールあるいは……本のプロモーション?

坪内 うん、プロモーションでしょう。個人プロモーション。そこがまたカッコいいんだよ。今あの内田裕也が、話題の「仕分け」に現れれば、必ずテレビに映るもん。でも、新刊が2冊出たことと、裕也さんが現れたことが、全然メディア的に連動してなくて、何のプロモーションにもなっていない。スポーツ新聞にも、裕也さんがあの場に来たことは書いてあったけど、2冊同時に本を出したってことが書いてないんだよ。

 で、今日。渋谷駅に「俺は最低な奴さ」のクールな広告ポスターが。オフィシャルサイトを見ると、こんな掲出スケジュールらしいです。

渋谷ハチ公前ポスター展示
12月7日—13日 「俺は最低な奴さ」

 完璧です。Rock'n Rollです。

 坪内さんに、「何のプロモーションにもなっていない。」と言わせてしまうところが、この一連の流れの最大の見せ場。よくやりがちなプロモーション目的でのテレビ番組ゲスト出演といったあざとさがまったくないのが、とってもよいですねえ。で、そのタイミングで、しらっと渋谷に広告ポスター掲出。手だれのプロでも、なかなかこうはできません。内田裕也さんの完勝です。

 時間軸でこういうコミュニケーションを設計することは、まあ、今どき誰でもできるけど、その綿密な組み合わせを設計するという部分では、プロモーションする側の作為も一緒に届けてしまうことになるのも、また今という時代。そこを、さりげなくクリアするなんて、いやはや。なんか突き抜けてますよね。

 で、今夜、どこぞのブロガーが、こうしてちゃんと言及して、ブログでamazonのリンクを貼るわけですよね。この流れ、普通はとってもはめられた感があって、私なんかは、職業柄、そんな戦略に絶対に乗ってやるかって思うんですが、今回はすごく気持ちいいです。参りました。

 内田裕也さん、やるなあ。

|

« おばちゃんたちの会話。 | トップページ | 出版不況に関するニュースを読んで思ったこと »

広告の話」カテゴリの記事

コメント

「ジョン・レノンに笑われるから」とも言ってましたね、内田裕也さん。

投稿: naosuke | 2009年12月12日 (土) 00:29

内田裕也さんらしいですね。で、今の民主党は「ニューミュージックって感じ」だそうです。

投稿: mb101bold | 2009年12月12日 (土) 12:39

あれがプロモーションとは気が付きませんでした。

内田裕也の存在感はリスペクトなんですが、内田裕也の音楽は聴いたことがないというか、聴いたことがあっても記憶にありません。
そういうことって、よくあります。坂本龍一とか矢沢永吉とかは、彼らによって、あるいは彼らについて、語られた言葉は好きなんだけど、音楽は好きじゃない。作品と作家って、言葉で感じようとすると大きくずれることがあります。
私にとっては、忌野清志郎はずれが少ない。でもそれは彼の生き方ではなく、私の人生と感じ方のせいなんでしょう。

投稿: | 2009年12月13日 (日) 04:58

まあ、こんなエントリを書いてもなお、プロモーションかどうかは本人のみぞ知るということなんでしょうけどね。

投稿: mb101bold | 2009年12月13日 (日) 13:25

リーチを考えると渋谷っていうエリアの狭さが気になるんですが、
ポスターは他の駅にも貼られたんですかね?
それともそのさりげない感じがいいさじ加減なのでしょうか。

狙って渋谷だけだとしたら相当キモ据わってるなあと思いました。

投稿: yunbo | 2009年12月14日 (月) 13:37

リーチということで言えば、いいさじ加減とは思いませんが、あえて渋谷オンリーにしたかったみたいなことでしょうね。内田裕也さんは渋谷の雰囲気があるし。ホームページに告知しているところをみると、心の中ではきっと意味はあるでしょうね。

投稿: mb101bold | 2009年12月14日 (月) 23:13

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 内田裕也さんの広告戦略がRock'n Rollだった件:

« おばちゃんたちの会話。 | トップページ | 出版不況に関するニュースを読んで思ったこと »