人生いろいろ、カラオケもいろいろ
地元の旧友から聞いた話。
その旧友はカラオケが大好きで、夜な夜な地元のカラオケスナックで歌っているとのこと。彼の場合、人前で歌う行為そのものが好きで、いわゆる2次会のカラオケボックスのノリとは違うらしいです。そのスナックには、人前で歌うことが好きな人たちが集まっていて、カラオケがお酒のつまみみたいな感じはまったくないそうです。仲間には飲めない人もいるそうで、どちらかというと歌好きの集いみたいな感じ。
私はカラオケが苦手なので、そのあたりの感覚はわからないのですが、彼曰く、
「まあ、学生時代のバンド活動みたいなもんかなあ」
と。スナックにはフォークギターなんかも置いてあって、弾き語りをする人もいたりして、
「それって、昔の歌声喫茶みたいなもの?」
と聞くと、それはちょっと違うようでした。みんなで歌う、という楽しさはまったく追求していないとのことで、要は、歌う時は自分が主役という感じ。
地元のカラオケスナックは常連さんが集まっていて、それはそれで楽しいらしいのですが、やはりそれではもの足りなくなったりする、と。もっと多くの人たちの前で歌いたくなる、と。で、そういうニーズを満たすために、世の中には、そういう人のためのお店が用意されているらしいんですね。
そのお店は、郊外にあって、100人くらいが定員のホールで、ワンドリンク付きで3000円ほど。それ以降、別に飲みたくなければ何も頼まなくてもいいらしくて、お客さんはいろいろな場所からやってくるとのこと。昼の2時くらいからやっていて、カラオケ仲間で来る人もいれば、ひとりで来る人もいるようです。女性のお客さんもそこそこ多くて、友達同士で来るひとも多いらしいです。女性の場合は、着物とかドレスとか、衣装にこだわった人もちらほらという感じ。
ホールにはステージがあって、スポットライトなども完備されています。ちょっとしたコンサートの雰囲気で、お客さんは自分が歌いたい曲を紙に書いて申し込む、と。1曲が300円くらい。で、カラオケ機器の操作と司会を兼ねた人がいて、
「12番さん、アリスのチャンピオン、どうぞ。」
という感じで呼び出しがかかって、その人はステージに上がる、と。歌に合わせて、スポットライトが様々に変化して、ちょっとしたスター気分を味わえるとのこと。スポットライトの光の中にいるから、お客さんは見えないけれども、それでも100人のお客さんの前で歌うので、すごく緊張するらいしんですね。まあ、知らない人100人が前にいたら緊張しますよね。
そのお店では、人が歌っている時にはおしゃべりは禁止。だから、そのお店では、しゃべり声はまったくないそうです。ちょっとジャズ喫茶っぽいですね。自分も一生懸命歌うわけだから人の歌も一生懸命聴くという精神から生まれたルールで、このルールを守らないと、すごく嫌がられるとのことこと。歌い終わると、100人のお客さんから、心からの拍手があります。
地元のスナックでは、10曲くらい歌えるけれど、そのお店では3時間くらいいて、2、3曲しか歌えないらしいんですが、それでも、1曲の濃度が違うので、歌える曲は少なくても、すごく楽しいスペシャルな時間らしいんですね。
何ヶ月に1回か、そのお店が主催のコンテストがで開催されます。そのコンテストは、中規模のホールを借り切って行われるそうで、そのコンテストでは、勝ち残れなければ1曲しか歌えないのですが、勝ち残ると2曲、3曲と歌えるらしいんですね。で、それぞれのお客さんは、その日が来るまで、優勝を目指して、地元のスナックで練習をするそうです。
その話を聞いて、
「ああ、NHKののど自慢みたいな感じかあ。」
と言うと、彼は
「それは違う。のど自慢はキャラの勝負もあるじゃないですか。でも、こっちは歌だけが勝負なんですよ。」
と。そのへんのわびさびの部分はいまいちわからなかったのですが、まあ、そういうことらしい。で、少し考えて、
「ということは、自分が歌えるライブハウス、ということかな。」
「そうそうそう。さすが広告屋、言い方が的確。」
と。
的確なのかなあ、と思わないでもないですが、でもまあ、そういうことだそうです。そういうことにしておきます。こういうカラオケのお店、ご存知でしたか。私はまったく知りませんでした。しかし、世の中、いろいろあるもんですねえ。
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