ぎこちない関西弁
1月17日の夜11時からNHKで放送された、阪神・淡路大震災15年特集ドラマ「その街のこども」を観ました。
物語は、森山未來さん演じる若者と佐藤江梨子さん演じる若者の二人の会話を中心に進んでいきます。ともに子供時代を神戸で過ごし、震災を体験し、現在は東京で暮らす二人の関西弁のぎこちない感じが強く印象に残りました。
私は、大阪で出身で東京暮らしが長いから、このぎこちない感じは、身にしみてわかります。関西弁は、やはり自分の根拠でもあるし、そのこと自体は、自分の中では確かなことなのだけれど、でも、その関西弁は、私が日々の暮らしの中で、普段使う言葉ではないというもどかしさがあります。
大阪に帰ると、自分が話す関西弁によって、どこにも拠り所がないことを思い知らされたりするんですね。
東京ではすぐに関西人とわかる話し方をしているのですが、それでも、なんとなく自分がどのコミュニティにも属さない根なし草だなあ、と思わされることがあるのです。まあ、そんなにたいそうなものでもないけれど、このさみしい感覚はずっとあります。今も、ほんの少しだけ心にへばりついて取れないでいます。
二人は、三ノ宮から御影に向かって、夜道をひたすら歩きます。互いに名前を知らないままに、ひたすら喋ります。やがて、遅い自己紹介があり、そこから関西弁が自然になってくるんですね。互いを名前で呼び、自分の領域と他人の領域が溶け合った、関西独特の二人称である「自分」も使われるようになっていきます。
このあたりの、時が経つにつれて関西弁が生き生きとしてくる感覚も、ああ、そうそう、そんな感じだなあ、と思いました。演出もあるのでしょうが、役者自身がそのストーリーを演じる時間の中で、自然と変わってきたのもあるのでしょうね。
でも、それでも、その関西弁は、どこかぎこちなさを残していて、その残されたぎこちなさ、不器用さこそが、今の彼であり彼女なのだろうな、とぼんやりと考えたりもしました。
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コメント
偶然見始めて、
佐藤江梨子と、見覚えのある景色が気になり、
気がつけば映像の引き込まれ、
結局最後まで見てしまいました。
ちょっとしたロードムービーで
魅力的でしたね。
で、ゆっくり冷静に考えてみると
やっぱり音楽が良かったから
飽きることがなかったのでは?
大友良英さんの透明感あるサウンドが
2人の微妙に震える感情の
受け皿になっていたように思います。
大友良英さんブログ↓
http://d.hatena.ne.jp/otomojamjam/20100111
投稿: オスギ | 2010年1月19日 (火) 09:16
役者も脚本も演出もよかったけど、確かに音楽はよかったですね。もう一度観たいなと思っています。
投稿: mb101bold | 2010年1月19日 (火) 09:51
いつも興味深く読ませて頂いています。
こちらで紹介されていたのがずっと気になっていて、今日再放送で初めて観ました。主役二人が、大げさでない等身大で良かったです。神戸出身ではないのですが、地元が近かかったので思うことが色々あります。県外に出で10年以上経った今でも帰省の新幹線からブルーシートが見える気がして目で探してしまいます。
ぎこちない関西弁…言い得て妙ですね!関西弁ではないですが、自分でもいったいどこの方言なのだと話しながら思わず苦笑することがあります。やっぱりそうなりがちなのですね。安心しました。でも、どうも年々それでもいいかと緩んで来ているような気がしています。
投稿: dot_path | 2010年5月 5日 (水) 18:38
再放送が本日ありましたね。私も観ました。私はあらためて佐藤江梨子さんは良い女優さんだなあと思いました。なんというか、心のネガティブな部分も含めて、すごく素直な感じがして、こういう素直さというのを演じられるのは、今の若い女優さんではあまりいないですよね。
投稿: mb101bold | 2010年5月 5日 (水) 20:42