« 電子辞書から見えてくるもの | トップページ | 広告は検索結果を腐敗させる »

2010年2月15日 (月)

北米でがんばるSony Reader

 前回のエントリで「こういう分野は、日本はいつも早すぎるんですよね。ソニーやパナソニックは、ずいぶん前に電子書籍専用端末を出していたわけです。」と書いてしまっていて、あたかも日本企業が世界の電子書籍専用端末市場から完全に撤退しているかのように読めてしまうし、私自身もそれにほぼ近い状態だと思っていました。それは、事実と違うようですので、少しばかりお詫びと補足を。

 ソニーに関しては、撤退したのは、コンテンツ市場が育たなかった日本市場での話で、北米市場ではこの分野のパイオニアとしてかなり善戦しているようです。Sony Readerという名で2006年から発売されていて、2009年ではシェア第2位で35%とのこと(参照)。ちなみに新規参入のKindleが第1位でシェア60%です。

 LIBRIEの北米での名前がSony Readerだということは知っていましたが、てっきり今では細々とやっているとばかりに思っていて、Sony Readerが結構な人気だということはまったく知りませんでした。それに、製品もかなりブラッシュアップされています。勉強不足でした。すみません。検索すると、結構IT系のニュースサイトでも取り上げられているんですよね。

1

 上の写真は、北米ソニーSony Readerサイトのキャプチャです。Daily Edition(新聞閲覧向けということでしょうね)の製品説明には、こんなコピーが。

ONE MILLION REASONS
Together with Google Books, the Reader Store brings you access to over 1 million eBooks. That's twice as many as the Kindle Store.

 Google Booksとthe Reader Storeには100万冊を超える電子書籍があって、それはKindle Storeの倍なんだぞ、と。日本ではコンテンツ配信サイトが終了したり、なかなかうまくいきませんが、北米ではコンテンツ市場が成熟しているということなんですよね。いやはやです。

 KindleやiPadがあれだけ話題になったにもかかわらず、少なくとも日本ではSony Readerが話題にならなかったことについては、やっぱり早すぎたんだよなあ、損しているよなあ、とは思いますが、こちらはiPadに対するタブレットPC(参照)とは違って、きっちりシェアをおさえているだけ立派かも。

 しかし、iPadの登場によって、Sony Readerは微妙なポジショニングになってしまいましたね。筐体やディスプレーはKindleライクで、フォーマットがオープンなところはiPadライク。バランスがとれているとも言えなくはないけど、その分、製品としてのエッジは丸くなりがち。

 電子書籍の動向は、コンテンツ市場のみならず、これからの社会にとって大きな意味を持つような気がします。ハードウェアは、じつは、Kindle、Sony Reader、iPadの3つで見ていくと、事態の成り行きがより正確にわかるのだろうと思います。私も注目していきたいと思っています。

 

 電子書籍関連エントリ

|

« 電子辞書から見えてくるもの | トップページ | 広告は検索結果を腐敗させる »

パソコン・インターネット」カテゴリの記事

コメント

こんにちは。
先端商品に疎い私ですが、昨年12月に品川でソニーの「Sony Reader」を見せていただきました。ショールームのスタッフは「アメリカでは売れているんですけどね...」と苦笑してました。


きっと情報化社会で先を行くアメリカならではなんだろうと思っていましたが、どこかで読んだエピソードでは、必ずしもビジネス情報だけではなさそうでした。
「アメリカでは休暇に本を読む人が多く、分厚い本をたくさん抱えていくより便利だから」とか。
ちょっとした文化の違いなのでしょうか。あるいはコンテンツの取扱方のちょっとした違いやタイミングの違いなのでしょうか。

理系の研究者をしている友人宅に行くと、英語論文のコピーが転がっていて、ところどころ日本語で注釈がなされてました。
この注釈をちょこちょこっと書き込むなんていう処理は、「Sony Reader」だと、どんな作業になったのか、聞いとけばよかった、と思いました。

個人的には「まだまだ紙の方が」と思いつつ、端末に新書の情報を詰め込んで片っ端から閲覧していくのは、気持ちいいだろうなと思います。

いつかは図書館も「2週間限定で持参の端末にコンテンツをダウンロードするサービス」になるのでしょうか。ただし印刷やコピーはガードされるか、有料を選択」なんてことになるのでしょうか。
某人気作家さんは図書館でも有料で、結構課金の金額も期間もお高い、とか。売り出し中の作家さんは図書館でプロモーションとか。

それはそれでちょっと面白そうだな、と想像しました。

投稿: mistral | 2010年2月17日 (水) 12:08

>個人的には「まだまだ紙の方が」と思いつつ、端末に新書の情報を詰め込んで片っ端から閲覧していくのは、気持ちいいだろうなと思います。

これは気持ち良さそうですね。一般書籍でまず先陣を切るのは新書かもしれませんね。

>いつかは図書館も「2週間限定で持参の端末にコンテンツをダウンロードするサービス」になるのでしょうか。

これもまた、すごく現実的な絵ですね。これはGoogleが描く未来なのかもしれません。

紙とデジタルはきっとこれからも共存していくんだろうなと思います。理系の研究者さんも、もしリーダーに書き込み機能があったとしても、きっと電子書籍をコピーするのではないでしょうかね。パームサイズPCでもタブレットPCでも手書きメモという機能はずっと前からありましたが、結局あまり普及しませんでした。仕事でも、まだまだドキュメントをプリントアウトする機会も多いですし。
でもまあ、KindreやiPadで電子書籍の風景は確実に変わるとは思いますが。

投稿: mb101bold | 2010年2月17日 (水) 22:32

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 北米でがんばるSony Reader:

« 電子辞書から見えてくるもの | トップページ | 広告は検索結果を腐敗させる »