さんざん
ちょっと疲れてるし、元気をつけなきゃなあ、でもまあ、今頃食べると太るよなあ、なんてうだうだと自分会議を開きつつ、とある定食屋さんに。遅い晩飯。ちょっと贅沢しようと、焼魚定食に豚汁、納豆、生卵をつけたりして。
もそもそと箸をすすめて、豚汁のお椀に手を添えたら、あっ、やっちゃた。
そこらじゅうに豚汁の汁やら、人参やら、ごぼうやら、大根やら、こんにゃくやら、里芋やらが飛び散って、マンモス西に。
「うどん野郎!」
「わ…わいはあかん…だめな男や…」
うどんじゃないし、豚汁だし、具だくさんだし、ジョーに殴られたわけでもないけど、なぜか、そんな台詞が頭の中のFM局でヘビーローテーション。どんだけ「あしたのジョー」が好きやねん、とツッコミを入れる間もなく、鞄にどんどん汁気がしみていく。
席の近くにお客さんがいなかったからよかったものの、それでも店には客がいて、あのサラリーマンの人、疲れてるんだろうなあ、わかるよその気持ち的な視線がとっても痛い。
すぐに店員さんがかけつけて、鞄についた豚汁を布巾で拭いてくれたりして。ありがたいなあ、今どき親切だなあ、と思う反面、ますます逃げ出したい気分に。いたたまれなくなって、あ、あとは家でやりますので、と言っても、その店員さん、手を休めず、にっこり、大丈夫ですよ、どうぞ、どうぞ、食事の続きをどうぞ、と。
ふたたび箸をすすめるも、恥ずかしいやら申し訳ないやらで、もはや味もわからず。とりあえず、一刻も早くお店を出ようと、ごはんに納豆、卵をぶっかけて、ざくざくとかっこんでいると、もうひとりの店員さんが、新しい豚汁を。
あ、結構です、と一応言ってみるも、にっこり笑って、大丈夫です、遠慮せずに、どうぞ、どうぞ、と。そうですか、どうも、どうも、ともう一杯。
ようやく食べ終え、ごちそうさまでした。
ありがとうございます、またどうぞ、の声を背中に、豚汁の匂いがする鞄をぶら下げ、ようやく店の外に。ああ、夜風が冷たいなあ、と言いたいところが、今夜は妙に暖かく、生温い都会の風が吹くばかり。だめ、泣きそうかも、大人なのに、おっさんなのに、と思って、わけもわからず走ってみるも、信号が黄色になって、立ち往生。
信号が青になるのを待ちながら、なんだかなあ、さんざんだったよなあ、でもまあ、店員さんたち、いい人たちだったよなあ、世の中、まだまだ捨てたもんじゃないよなあ、なんてことを考えていたら、今頃、満腹感。
鞄、朝までに乾くかなあ。
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コメント
さんざんでしたねー。忘れた頃にこのブログを読み返すと、また恥ずかしくなりそう(^-^; 同時に世の中捨てたもんじゃないなぁ...ってこともまた思い出せるのですねー。
投稿: jell_jell | 2010年3月17日 (水) 08:22
鞄、乾いてました(^-^;
投稿: mb101bold | 2010年3月17日 (水) 08:53
世の中の年上の男の人って、どこで泣きたくなったり、どうしようもなく悲しくなったりするんだろうって不思議でした。
文章を読んでて、なんだかちょっとだけ見えたというか感じ取れるものがありました。
大人の男の人たちが、癒される場所がたくさんあったらいいなと思います。
サービスとかじゃなくて、風が冷たければよかったみたいなところとか、風景とか生活とかさりげないところで。
今日もがんばろうや東京ってかんじです。
投稿: ちあき | 2010年3月17日 (水) 09:54
ぼーるどさん、こんばんわ。
鞄は乾いてもにおいが残るので、ファブリーズしといたほうがいいですよ。(^^)
お疲れなんですか?よーく眠ってくださいね。
投稿: ggg123 | 2010年3月17日 (水) 22:16
>ちあきさん
おっちゃんもその昔は少年でしたからねえ。
大人の男たちが癒される場所って、言われてみれば少なかったりしますねえ。職場の近くを歩いていると、ビルとビルの間にできた、人が少ない空間でしんみり座っている大人の男の人をよく見かけます。
今日もがんばろうや東京って、なんかいい感じの台詞ですね。
>ggg123さん
そうそう。においが残っていましたし、ところどころに粉末状の味噌も。よく洗って、ファブリースしますです。疲れは、あの出来事でなんか飛んじゃいました。不思議です。
投稿: mb101bold | 2010年3月17日 (水) 23:30