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2010年4月24日 (土)

Bill Evans sings?

 これ、ビル・エバンスなんでしょうか。だとしたら、はじめて聴くけど、どうなんでしょうね。動画の元ページにはこうあります。

emiversen  —  2009年12月04日  — Audio only. Came across this old piece of audio tape. Have no idea of where or when this recording was done. Rare occation....enjoy!

 どこでいつレコーディングされたのはわかりません、と。で、コメント欄を見ると、こうありました。

musicissopretty   This was recorded in Stockholm in August of 1964 when Bill was making a recording with Monica Zetterlund for broadcast later in the year on Swedish radio.

 1964年にストックホルムのラジオでモニカ・ゼタールンドと録音、とのこと。モニカさんはスウェーデンの女優さんなので、この情報は、すごく辻褄が合います。1964年は、ビル・エバンスとの共演でアルバム『Waltz for Debby』を出していますので(参照:この映像は後に共演したもので、ベースがエディ・ゴメス)、そのプロモーションとしてビル・エバンスがストックホルムのラジオ番組に出演、というのは自然です。

 また、1964年はビル・エバンスが『Trio '64』を出しています。このアルバム、エバンスの中では地味なんですが、ベースが、若き日のゲイリー・ピーコック、ドラムがポール・モチアン。その中に「Santa Claus Is Coming to Town」の演奏が収録(参照)されていています。サンタが街にやってきた、ですね。

 となると、番組内で「Santa Claus Is Coming to Town」を演奏というのは、これまた自然。ということは、この音源は、まあビル・エバンスのものと考えていいじゃないかな、と思いますが(ベースがゲーリーでドラムがモチアン?)、となると残る問題はこの声の主。

 ところどころの照れ笑いがあって、ビル・エバンスだと思えば、ああなるほどとも思えますが、ほんと、どうなんでしょうね。個人的には、最後に「With Bill Evans!」と言っているように聴こえるので、ちょっと微妙なんですが。でもなあ、声は確かにエバンスなんだよなあ。うーん。仮に歌声が本人だとすると、モニカ登場前に、ちょっと歌ってみるか、ということろなんでしょうか。それにしても、陽気ですねえ。アレンジもバップ調だし。まあ、emiversenさんもenjoy!と書いておられるので、エバンスだと思って楽しむことにしましょうかね。

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Trio64

 ところで、『Trio '64』というアルバム。

 初期トリオのベーシストであるスコット・ラファロを失って、公私ともに落ち込んでいた時期を経て、レーベルをRIVERSIDEからVerveに移籍し、心機一転という感じの頃。1963年には『Conversations With Myself』という、自分のピアノの多重録音という意欲作を発表した後、さあ、そろそろピアノトリオという形式をもう一回はじめてみよう、という時のものです。

 ドラムが、ラファロとともに初期トリオを支えたポール・モチアンで、たぶんモチアンとの共演はこれが最後。当時のエバンスは、ラファロを失った後、相当に荒れた生活を送っていて、モチアンは、エバンスの音楽生活を支援していたとのこと。音楽生活を支援するということは、イコール、生活を支援するということでもあって、「Little LuLu」や「Sleeping Bee」、そして、「Santa Claus Is Coming to Town」なんかのポピュラーソングがたくさんあるのは、その影響なんだろうと思います。

 「Santa Claus Is Coming to Town」(参照)は、リズムも典型的なバップのスィングだし、ベースラインも4ビートのランニング。エンディングにツーファイブの繰り返しがあったり、エバンスの演奏では珍しいテイスト。わかりやすいです。でも、このエバンスという人、こういうレコード会社の方針というか、自分の意に添わない演奏でも素晴らしいプレイをするのですが、よく聴くと、ちゃんと「俺は気に入ってないよ」というサインを必ず残しているんですよね。それは、この演奏では、曲のエンディングの「ゴン!」という低いシングルノート。

 でも、エバンスの録音では、こういうわかりやすいのが後々も聴かれることになるんですよね。お店の有線でも、クリスマスの時期には、このチューンをよく聴きます。エバンス本人が熱心だった、アコースティックピアノと電子ピアノの同時演奏なんかは、エバンスの黒歴史として語られてしまって、今や相当のエバンスマニアでないと聴かないのに、この演奏は全世界で今も愛されているというのは、皮肉というか、不思議というか。でも、音楽ってそういうところがあるんでしょうね。

 ベースのゲーリー・ピーコックは、きっとオーディションで選ばれたんだろうと思いますが、まだ演奏が若いというか、荒いです。走り気味で、饒舌すぎる嫌いがありますね。この後、ゲーリー・ピーコックはフリームーブメントへ合流し、禅に興味を持って京都の東山に住んでいた時期もありました。

 今では、キース・ジャレット、ジャック・ディジョネットとのSTANDARSで、ジャズ界を代表する巨匠ですが、ディジョネットを含めて、エバンスとは少し苦い出会い(エバンスが苦いというのも含むですが)をしていて、人の出会いというのは面白いものだなあ、と思いますね。エバンスの遺伝子を引き継いでいるのは、まぎれもなくSTANDARDSですから。

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 エバンスが亡くなってから、もうすぐ30年になります。51歳で没。若いですよね。『Torio '64』、そしてこのラジオ録音が35歳。

 ウィキペディアを見ていたら、ビル・エヴァンス (6007 Billevans) という小惑星があるそうです。

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コメント

はじめまして。
いつも興味深く拝見しています。

冒頭の動画の最後のセリフですが、"With beard on!" だと思います。多分。「ヒゲを生やしたサンタのおじさんがやってくるよ!」みたいなニュアンスでしょうか。

なのでやはり歌っているのはビル・エバンス本人の可能性が高いと思いますよ。

楽しい曲ありがとうございます。

投稿: ビル・エバンス初心者 | 2010年4月28日 (水) 17:05

ありがとうございます。
なーるほど、"With beard on!" ですか。シンガー=エバンスの可能性が高まりましたね。
しかしまあ、このお世辞にも旨いと言えないけど、センスがあって、妙に手慣れた歌い方、それに最後にこの台詞。エバンスがますます好きになりました。

投稿: mb101bold | 2010年4月29日 (木) 01:20

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