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2010年5月16日 (日)

Goodbye iPad

 前回、「Thoughts on Flash vs Freedom of choice」というFlashを巡るAppleとAdobeの応酬についてのエントリを書きました。あのあとぼんやりと考えたことなどを、ゆるゆると。ま、休日なんで、コーヒーでも飲みながらゆるめに書いてみたいと思います。

 Flashを巡る事柄については、ほんとまあいろいろと複雑な事情を含んでいるものよなあ、という感想を持ちました。Flashで優れたアプリを作っているクリエイターの立場で考えれば、バカヤローAppleだろうし、Adobeが言うように、少なくともクリエイターやユーザーに「Freedom of choice(選択の自由)」くらいは提供するのが筋ってもんじゃないの、という気持ちにもなります。一方、Appleの立場に立てば、ジョブスの声明の結びに尽きるんでしょうね。

New open standards created in the mobile era, such as HTML5, will win on mobile devices (and PCs too). Perhaps Adobe should focus more on creating great HTML5 tools for the future, and less on criticizing Apple for leaving the past behind.

HTML5のようなモバイルの時代に作られた新しいオープンスタンダードこそが、モバイルデバイスにおける(そしてPCにおいても)勝者になるでしょう。Adobeは未来のために素晴らしいHTML5ツールの開発に注力し、過去を振り切り、未来へと歩みを進めるAppleへの批判をやめるべきなのです。

 かなり強い決意なんですよね。この結びに至るまでに、「オレたちは、10年前からOS Xをつくっているのに、お前さん方がCocoaに完全に対応したのは2週間前だぜ。これはさあ、メジャーなサードパーティーの中でもいちばん遅いんだよ。」というような、Adobeへの不信感が滔々と語られていて、かなり腹に据えかねているご様子。AdobeのCSは、軽いソフトでもないし、高機能かつ高額だし、ユーザーも多いし、影響力は計り知れません。ソフトウェアのせいでOS Xって駄目よね、と言われるのは、もうごめんだよ、という感じだったんでしょうかね。その二の舞だけは、iPhone OSでは絶対に避けたい、というような。

 特にiPadは未来のデバイスというイメージですし。この製品自体は、なにもAppleの新しいアイデアでもなんでもなくて、ずっと前からタブレットPCはあったし、であればこそ、無理矢理、PC用OSのタブレットPCアレンジ版を走らせることによって、もっさりと使いにくかったタブレットPCの辿った道を繰り返したくないし、「なんでもできる」は、非力なモバイルデバイスにおいては「なにもできない」と同じだ、というのは、Windows CEやPalm OSなんかのパームサイズPCの長い歴史が教えてくれた教訓でもありますしね。

 こういう文脈で考えると、「WE LOVE CHOICE. WE LOVE APPLE.」というメッセージは、やっぱりちょっと詰めが甘かったかもなあ。言葉は悪いけど、女に愛想を尽かされて三行半をつかされた男が、「それでもおまえを愛している」と言っているのと同じだものなあ。まあ、FlashやAcrobatは、クロスプラットフォームの旗手ですし、その恩恵もユーザーとしてずいぶん享受してきたので、そう言いたくなるAdobeの気持ちは痛いほどわかりますけどね。

 でもまあ、女は彼女だけではないわけで、モバイルデバイスはiPadだけではないわけです。そう考えると、本当に言うべきメッセージは「WE LOVE CHOICE. WE LOVE APPLE.」ではなかったのかもしれませんね。もしかすると、こういう感じのほうがよかったのかも。
 

Goodbye iPad


 いっそのこと、こちらからさよならを言ってみる。こちらはさよならをしたくはなかったんだけどね、というニュアンスをボディコピーに込めて。そんな感じです。で、じっくりと腰を据えて、Flashのパフォーマンスやクロスプラットフォームの考え方を訴求し、Flashを使ってくれるユーザーたちととともに進化を重ね、Flashを搭載してくれるデバイスたちの中で、そのパフォーマンスやクロスプラットフォームの実力を見せつけて、Appleに「やっぱり搭載しないとやばいよなあ」、と思わせて、最終的にこんなふうに言えるようになるという感じ。
 

Hello (again) iPad


 どうでしょう。やっぱり、これは理想論なんでしょうかね。でもまあ、広告的にジョブスの声明に対抗するには、こういうことしかないような気がします。もしくは、沈黙するか。まあ、どっちにしても、Adobeにとっては相当に難しい局面であることは間違いがなさそうです。

 

※ For example, although Mac OS X has been shipping for almost 10 years now, Adobe just adopted it fully (Cocoa) two weeks ago when they shipped CS5. Adobe was the last major third party developer to fully adopt Mac OS X.

 追記:

 Twitterのタイムラインを眺めていたら、TumbrのURLが紹介されていました。

Tumblr_l2f1e5cbno1qa2bsw

And Apple’s response:

Tumblr_l2f1efwc151qa2bsw

Adobe’s new ad and apple’s response.

 青いのは、OS Xで、デバイスが認識しないことを表す「?」のついた青いブロックのピースのアイコンです。これは、きっとApple公式のものではなくて、誰かがつくったものだと思うんですが、やりますねえ。おもしろいことを考える人がいるもんですねえ。ちょっと毒がありすぎのような気がしますが、いい意味でも悪い意味でも今のAppleの人柄を表現していて、かなり秀逸。参りました。

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コメント

メーカーが行う技術的に「正しい」選択が市場に受け入れられるとは限らない。
この事は、appleは過去の経験から良く理解している筈です。そこであえてFLASHを「正しく無い」からと排除して来るのは、iPhoneの売行きにより自信も有ったのでしょうし、よっぽどの検討をしたのだと思います。

メディアビュアーを作ってるメーカーとしては、技術的に正しかろうと、そうで無かろうと、その規格が未来的だろうとレガシーだろうと、清濁合わせ飲む度量を持って欲しい物だと思います。

ユーザーサイドで言えば技術的「正しさ」なんて考慮に値する事では無いのですからね。

昔あったVHSとβMAXの争いを思い出します、結局、技術的に「正しくない」VHSが勝利したわけですからね。

Adobeとappleの関係は男と女より、父親と息子の関係であり、今回の件は立派に成長し独自の世界を持っている息子に対し、父親が息子の生き方に苦言を呈しているようにも感じます。
と言うのは私に取ってAdobe社は設立から成長に掛けてappleとの関係が大きかった事からの連想です。

投稿: をたくな講師 | 2010年5月16日 (日) 08:52

そうですよね。「あえて」という気持ちがAppleには大きいでしょうね。シリアルポートやフロッピーを捨てたiMacが誕生したときの自信に近い感じがします。iTuneやiTMSの成功から来るのでしょう。それは、たぶんに政治的で、Safariの設計なんかにもあらわれているような気がします。今のところ、MSは沈黙し、AdobeはAndoroidでFlashが動くデモをつくってアピールしていますが、他社のこれからの動向が気になります。

企業の成り立ちから言えば、親子というメタファも面白いです。エディプス的ですものね。AdobeがCocoaになかなか対応しなかったのも、説明できそうですね。我が子のつくった規格だからこそ、後回しにしたいという心理が働いた、というような。

私は、この出来事をAppleの重要なターニングポイントだと思っています。市場はどう判断するか、ですね。VHSとβMAXは、WindowsとMacOSにも似ています。今だと、そこに普遍価値としてのWebがあり、Appleは新しいWebをつくろうとしていて、それが受け入れられるかどうか。きっと、これからタブレットに関しては、他社の反撃があるでしょうし、案外、時間が経てば、かっこいいけど、Yahoo!のSOUND STATIONは今だに利用できないんだよね、とほほ、というようなMacOSのポジションみたいなところに落ち着くのかな、と思っています。

ま、だからこそAdobeは広告的には「Goodbye iPad」と言うほうがいいんじゃないかと思うんですね。でも、それが言えないのは、父ゆえなのかもしれませんね。

投稿: mb101bold | 2010年5月16日 (日) 13:50

老婆心ながら「二の前」ではなく「二の舞」ではないでしょうか?

投稿: | 2010年5月16日 (日) 15:56

ちょっと訂正と言うか、誤解と言うか、でも、意味は通るのですが・・・・

私は先のコメントで、
>Adobeとappleの関係は男と女より、父親と息子の関係であり

と書いてしまいました。これ、順番で行くと父がappleで息子がAdobeです。
Adobeが生まれた頃、appleの大きな援助がなければ、会社が成り立たなかったわけですからね。
でもmb100boldさんが書くように、この親子、父と子が入れ替わっても話が成立しちゃう所が面白い。

投稿: をたくな講師 | 2010年5月16日 (日) 22:00

>名無しさん

ご指摘ありがとうございました。しかも二カ所も同じ間違いが。失礼しました。修正しました。

>をたくな講師さん

そうですよね。これまた失礼しました。ジョブズの声明でも、そのような関係で書かれていますね。なんとなく、FlashとかPDFとか、クロスプラットフォーム的なので、父親的イメージを勝手に持っておりました。

投稿: mb101bold | 2010年5月16日 (日) 22:23

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