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2010年9月25日 (土)

秋の気配

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 とまあ、今の時期にぴったりのタイトルを付けてみたものの、今年は、秋の気配なんかはまったくなく、雷と豪雨の後、いきなり秋がやってきましたね。写真は、大阪のマンションから見た風景です。都島から大阪城方面。左側の高層マンション群は梅田方面。私が子供の頃は、梅田の高層ビル群も見えましたし、双眼鏡で覗くと、マルビルの最上階に備え付けられていたオレンジ色の電光掲示版のニュースが読めたんですよね。今は、マルビルの電光掲示もその役割を終えました。

 このあたりは、最近、マンションがたくさん建って、街の様子がずいぶん変わりました。写真の高層マンション群は、昔はカネボウの本社や工場がありました。当時は、大きな空き地があって、秋になると、そこでバッタをよく穫りました。近辺にあった十条製紙工場跡もマンションになるそうです。一頃は、大阪市内に住むより、少し離れた郊外のベッドタウンに、という感じでしたが、値ごろ感が出て来て、やっぱり市内がいいよね、という流れになってきたようです。

 秋の気配と言えば、オフコースの「秋の気配」ですよね。そうでもないですか。そうですか。ちょっと古いですものね。1977年に発売された、オフコースの11枚目のシングル曲です。アルバムでは「JUNKTION」に収録されています。たくさんのミュージシャンがカバーしていますので、ご存知の方も多いのではないでしょうか。

 そう言えば、秋の気配を「秋の気配」はどう表現してたっけ、と思って、調べてみると、ほとんど表現していないんですよね。季節感を表現している箇所は、この部分だけ。

たそがれは 風を止めて
ちぎれた雲はまた ひとつになる

 たったこれだけ。つまり、「秋の気配」という歌は、タイトルが所謂、歌詞の要約的なタイトルではなくて、曲の世界観をセットアップする重要な要素なんですね。歌詞を見ただけでは、春ともとれるし、夏とも、冬ともとれます。あの曲がなんとなくせつない気がするのは、タイトルが「秋の気配」だからこそ、なんですよね。詞とメロディとタイトル、どの要素も主でもなく従でもなく、いい緊張感を持って、均衡している。そんなところが、「秋の気配」という歌の魅力だったりもします。

 この歌は、なんども聴いていますが、いまだにはっきりとはわからない部分があります。前述の「たそがれは 風を止めて ちぎれた雲はまた ひとつになる」の後に出てくる歌詞です。

あの歌だけは 他の誰にも
歌わないでね ただそれだけ

 この台詞、男性が言っているのか、それとも女性が言っているのか。歌をなんとなく聴いたところでは、歌の主体である男性が言っているように思えるんですが、でも、よく考えてみると、女性が言っていてもおかしくないように思えます。

 男性が言っているとすると、男性は歌をつくっていて、「あの歌」はその女性のために作った歌だから、「あの歌だけは 他の誰にも 歌わないでね ただそれだけ」と言っている、ということになります。自然な解釈ではありますが、でも、男性は、きっと小田さんを投影しているわけだから、そう考えると、あまりにナイーブすぎるような気もしないでもないです。もしくは、女性がミュージシャンで、男性が「歌わないで」と言っている。そうだとしても、まあナイーブですよね。

 女性が言っているとすると、「あの歌」を女性がつくったか男性がつくったかはわかりませんが、その「あの歌」は大切な歌だから、たぶん小田さんと同じミュージシャンである男性に「あの歌だけは 他の誰にも 歌わないでね ただそれだけ」と言っていることになります。歌の主体から見ると、言われたということになります。

 ほとんどおしゃべりもないのに、やっとしゃべってくれたかと思うと、今、「あの歌」を「歌わないでね」と言われたなあ。出会った頃は、そんなことはなかったのに、僕たちの関係どうなっちゃったんだろう、なんとなく付き合うのがつらくなってきたよなあ、という曲。

 「秋の気配」という曲は、当時は女子高生や女子大生が、恋へのあこがれの気持ちを持って歌った曲ですから、後者だとすると、なんとなくがっかりなんだろうな、とは思いますが、後者だと、歌詞全体の流れが非常にすっきりするんですよね。

 「あの歌だけは 他の誰にも 歌わないでね ただそれだけ」という要求は、さりげないようにみえて、男性にとってはすごく重いはずなんですよね。女性は、「微笑むふり」さえしないつれない感じけれど、男性には、そのそぶりとは裏腹にたいへんな要求をしているわけです。

 つまり、この「秋の気配」は、自分にとって、すごく重くなってしまった恋人に対して、気持ちが離れていくという歌で、わりと普通の、というか、普通なエゴが発露された恋愛感情の歌だったのかもしれません。

 まあ、主体が明示されていないわけですから、どっちにとってもいいんだろうとは思いますし、作り手としては、主語を明示しなかったのは、わざと、だとも思いますので、どっちなんだろうな、と思いながら聴くのが正しいようにも思います。

 きっと、これから暑さがぶり返すことなく、本格的に秋ですから、そんなところに着目しながら「秋の気配」を聴いてみてはいかがでしょうか。ずいぶん昔の曲ですが、けっこうたのしめると思いますよ。

 では、あと一日になってしまいましたが、引き続きよい休日を。

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コメント

こんばんは。少し前ですが、朝日comに「飽きた恋人をふる男 オフコース『秋の気配』」(http://bit.ly/bizRDg)なんて記事があがってましたが、読まれました? 「続きは9/11日付け「be」で」っなっていて、おいおいってな感じでしたが。ちなみに今、iTunesで、この曲の槇原敬之さんのカバー・バージョンをききながら、このコメント書いてますw

投稿: マーケ犬(まーけいぬ) | 2010年9月25日 (土) 23:57

小田さん自身が「本当はそんなつもりなかったんだけど、あとで考えたらひどい男だな」とも言っていて、まあ、Beの執筆者さんが言う「飽きた恋人をふる男」の歌というのは、身も蓋もないけど、あながち間違いではないかもですね。
女性バージョンでは「オリビアを聴きながら」がありますよね。「飽きた恋人をふる女」の歌。あれも、きれいな曲ですけど、残酷な歌だよなあ、なんて思いながらいつも聴いていました。
尾崎亜美さんが歌うとわりとその残酷さが天然さと打ち消し合って見えにくいんですが、杏里さんが歌うと、うわっ、残酷〜、という感じがありありとして、そこがまた女性にいいんだろうなあなんて思います。

投稿: mb101bold | 2010年9月26日 (日) 00:12

こんばんは。
私はオフコース解散直後、曲を聴き始めたので(しかも当時は小学生だったので)、この曲に関しては10年ほど前まで、きちんと世界観を把握出来ていなかったのですが・・・なんとなく、心が離れたのは男性が先だけれども、女性のほうが男性の気持ちの揺れを察知して、先に見切りをつけているような気がしていました。

だからこそ、池本さんが仰るように「重い」要求を突き付けているような。
女性のほうがそのあたり、残酷なんじゃないかと・・・そしてそういう要求をする女性に対して、男性の心が更に離れていく、ということもあるのかな、と思います。

投稿: nao | 2010年9月30日 (木) 18:13

きっとそうなんでしょうね。先に見切りをつけているのは女性の方だと思います。その部分が、どうしようもなく子供な男性と、どうしようもなく大人な女性を感じさせるんでしょうね。その構造が、独特のセンチメンタルな気分や、リリシズムをつくっているような気がします。
女性は「歌わないでね」といいつつ、その言葉には、括弧付きの(でも歌うんでしょうね、あなたは)があって、そこが、さめているというか、残酷というか。男性の心が離れていくというのは、きっと防衛機制。つまり、自意識の人なんですよね。
そのあたりのこと、なんとなく前に書いたエントリとつながってきました。
http://mb101bold.cocolog-nifty.com/blog/2010/06/post-a08e.html
あまり、恋の機微とかはうといたちですが、男と女って、一般的にもそんな関係が多いような。その普遍性も、この歌がいつまでも聴かれる理由でもあるんでしょうね。

投稿: mb101bold | 2010年10月 1日 (金) 02:14

写真のマンションに住んでる者です。
敷地内には「鎮守の森」という人工の林があり、窓を開け、それを見ながらコメントしてます。
木の葉はまだ青々としており、一見、夏のようですが、部屋に流れてくる外気は完全に秋のそれであり、「パッと見20代、でも心の中は既に40代」のややバランスを崩した女性のようであります。
今年は真夏から「秋の気配」なく、真秋になりましたね。

投稿: オスギ | 2010年10月 2日 (土) 06:59

前にも都島にお住まいだとおっしゃってましたが、ほんと、歩いてすぐのところにお住まいなんですね。
鎮守の森も、木々がずいぶん育って来ていい感じになってきましたよね。大阪に戻ったときは、散歩などしています。
あのあたりは、かつてはグラウンドがあって、その横には、城東運河まで続く広大な空き地の草原があって、よく遊んでました。カネボウの社宅も木造で、下町っぽい感じでした。カネボウ生協のスーパーで王将アイスやホームランバーを買ったり。
10月に入って、東京も過ごしやすい日が続いています。

投稿: mb101bold | 2010年10月 2日 (土) 11:36

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