インターネットの2階
はてなの近藤さんのブログを読みました。はてなには、はてなで働く人、はてなを離れた人、大好きな知り合いがたくさんいるので感慨深かったです。
僕がブログをはじめようと思ったとき、たまたまプロバイダが@niftyだったからココログではじめたけれど、このブログが人に読まれるきっかけをつくってくれたのが、はてなブックマークをはじめとするはてなのサービスでした。
最近、アクセスが急激に増えたことは以前書きましたが、その中で、『人間のタイプをOSにたとえると‥‥』というエントリーにブックマークをしてくれた人が多くて、もうただただ「すごくうれしいです、ありがとうございます、ありがとうございます、ありがとうございます」みたいな感じでもあるんですが(すみません、まだ慣れてないんです)、そのブックマークを見ると、一言コメントをつけている人たちがいて、そのコメントが、当の元エントリーより面白かったり、センスがよかったりして。そこで、なるほどなあ、そういうことなんだ、と「はてな」のことが少しわかったような気がしたんです。
なるほどなあ。そういうことね。なんとなくわかりました。「はてな」というサービスのコンセプトはきっと「親切」なんだなあ。「便利」っていうのは、ふつうにあるけど、すべて「親切」という軸でサービスをつくっていくと「はてな」になるんだなあ、なんて思いました。
「はてな」のこと少しわかってきた。(2007年9月16日 )
当時はこんなこと書いていたんですね。あれから4年とちょっと、インターネットの風景は少し変わりました。もちろん、はてなブックマークは、まだちょっとプログラミング関連と2ちゃんねるまとめサイトに偏ったところはあるけれど、日本を代表するCGMサイトに育っています。はてなブックマークのトップページを毎日ながめていると、ある程度世相がわかります。特に震災が起こった2011年は、すごくわかりやすかったです。善し悪しはともあれ、ホットエントリーは今世間が何に興味を持っているかがよくわかります。
近藤さんは、「2012年に向けて」の中でこう書いておられます。
インターネットは今、2階建て構造になってきていると思います。
巨大なプライベート空間であるfacebookが1階。ともだちとのおしゃべりをする場所です。
それに対して、オープンなインターネットが2階。検索エンジンが到達可能な領域です。ブログやtwitterなどのオープンなサービスがここに属します。この1階と2階は今のところ別の世界として分離していますが、今後この中間領域の発展が進むと思います。
確かに、そうですね。1階と2階というメタファは、自室、自宅、中間集団、社会というように、リアルな世界に照らし合わせたほうが、ひたすらリアル世界のテクノロジーでの拡張を目指してきたインターネットの実情にはわかりやすいかもしれませんが、1階、2階というのは、ネットサービスをつくる当事者としては実感に近いのだろうなと思います。
僕たちはこれまで、ブログやソーシャルブックマークサービスによって、オープンインターネット領域での自己表現やコミュニケーション、情報の流通を扱ってきました。この領域には、多くの出会いと情報が溢れています。
一方で多くのインターネットユーザーが、居心地の良いプライベート空間に活動の拠点を移しており、新たにインターネットに入る人もこちらが入り口になりつつあります。
しかしもちろん、オープンインターネット空間の良さが無くなったわけではありません。
facebookには、これまでに知り合った知り合いはいても、これから知り合うべき人との出会いはほとんどありません。皮肉なことに、本当にsocial networkingをしたい場合は、オープンな領域に出て行く必要がある、という状況が生まれています。自分がたくさんの出会いに恵まれたのが、「外の活動」であったことと同じように、インターネットでも、自分の人生に新しい展開をもたらしてくれるような出会いは、オープンインターネットの領域に存在します。
1階と2階をうまくつなぐような中間領域を設計したり、居心地の良い2階を作ることで、1階と2階をつないでいきたい。これが大きなテーマです。
私がはてなのみさなんと知り合うきっかけになったのも、この2階でした。それに、私の人生を少し変えることになった大きな出会いも2階でした。私は、この2階が大好きでした。私にとって、インターネットの2階こそがインターネットでした。
この近藤さんから提示された着想からは、いろいろなことが導けそうな気がしますが、今は、ただ、はてながふたたび2階の価値に着目してくれたことをよろこびたいと思います。
はてなの方々や元はてなの方々とは、いろいろとリアルでのおつきあいもあるので、余計に思うのかもしれませんが、近藤さんのエントリに書かれている率直な思いは、私はいいな、と思いました。かつて、やっぱり、ある意味ではてなはブームだったんですよね。はてなの持つ、理想をひたすら追い求めるコミューン的な部分が少し勝ちすぎていたような気がしていました。
いろいろな方がはてなを離れ、そして、いろいろな方々がはてなに参加し、いくつかの成功と失敗を体験しててきた、その過程で近藤さんがいろいろな葛藤をされていたことは、すごくいいな、と思ったんです。表現はあれですが、泥臭くて、ちょっぴり弱くて、人間臭くて、でも地に足ついた感じで、とってもよかったです。期待しています。
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コメント
ブログ再開されたのですね、嬉しいです。
ネット二階論、楽しく読みました。するとその二階屋には「おたく」やハッカーの巣くう地下室があったりするんでしょうね。
マーケティング的に見て行くと、商売を美味しくする、ためには「囲い込み」を目指す事になりますね、ミクシイとかがその方向かな、「一階は居心地が良いですよ」ってね。
それに対しあくまでもオープンを貫くって、二階に居続ける事って結構大変ですよね、
何せ二階には、天井が無く、時々、雨が吹き込んで来たり、酷い時には槍が降ってきたりしますからね。
でも、雨も槍もインターネットの一部なんだ、オープンってそういう事なんだ、「雨風にめげず二階で頑張るぞ」って宣言ですね。
投稿: ををつか(をたくな講師) | 2012年1月 5日 (木) 07:43
ええ、思うところあって本格的に再開しました。でも、再開しますって宣言するのもはずかしいというか、まあ、好きでやってるブログなので、しれっと更新しています(笑)
はてなは、2階の中では囲い込み(というかインターネット住民有志による自治体が任意に住民票を発行みたいな感じかな)先駆者でもあったんですよね。で、囲い込んだ結果、「はてな村」って呼ばれたり。
>「雨風にめげず二階で頑張るぞ」
これは、きっとみんなが1階を持つようになったことで、近藤さんの中にふたたび見えてくるものがおありだったんでしょうね。
もう一度、インターネットの良さって、オープンだろ、オープンってことだろ、なあ、そやろ、みたいなことかもしれません。そうかどうかはわかりませんが、雨も槍をかわしつつの2階暮らしが大好きなので、その心意気、陰ながら応援します、みたいな感じです。
そんな近藤さんですが、ブックマークをケータイ版にしていただいていて、
http://b.hatena.ne.jp/entry/app.m-cocolog.jp/t/typecast/255864/214429/71129225
きっとスマートフォンやケータイで読まれてたのかなあ、なんて。そんなところにも、「これからの2階」が垣間見えたりしました。
本年もどうぞよろしくお願いします。
投稿: mb101bold | 2012年1月 5日 (木) 11:06