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2012年1月28日 (土)

小島慶子さん「キラ☆キラ」降板のポッドキャストを聴きながらターゲティングの功罪について考えてみました

 TBSラジオのお昼の人気番組「キラ☆キラ」のパーソナリティ、小島慶子さんが降板されるそうです。いろいろ憶測でニュースが流れたりして、その誤解を解くために、小島さんが自身の言葉でオープニングで降板の理由を語っています。

 理由は、局側から「まだラジオを聴いていない、40代、50代の男性の自営業の人を意識したしゃべりをしてください」と言われて、「ラジオはリスナーとの会話。今聴いている人に話しかけながら、その肩越しに聴いていない人を呼び込むしゃべりをしろ、と言われたら、それは絶対できない」とのことで自分から降板を申し出たそうです。出典:J-CASTニュース

 生放送ですが、TBSラジオのサイトでポッドキャストで聞くことができます。こういうニュースは活字で読むとニュアンスが変わるし、これは結構重要なことですが、この話が語られたのは隣にピエール瀧さんがいて、彼女の話を聞いてくれているという状況ですので、その部分を押さえなければいろいろ間違えそうです。興味のある方はぜひ聞いてください。興味深いトークだと思いますし、おすすめします。

 2012年01月26日(木)オープニング ー TBSラジオ「小島慶子 キラ☆キラ」

 直球ど真ん中で熱く語る小島さんと、少し距離を置き小島さんの思いを受け止めながら、小島さんの放送を楽しみにしているリスナーのことも考えて話す、大人なピエール瀧さんもどちらも素敵です。この音源だけで「プロってなんだろう」みたいなテーマで徹夜で語りあえそう。

 で、このポッドキャストを聞いて、なるほどなあ、そうだよなあ、ターゲティングって一体何だろうなあと思ったんです。局側の「40代、50代の男性の自営業の人を意識」という言葉は、あまり気持ちのいい言葉ではないけれど、そんなに突飛な発言ではないですよね。これを突飛と言い出したらマーケティングなんて成り立たないです。また、この話がラジオパーソナリティの話ではなく奇跡のプレゼン術だったりしたら肯定的に受け止められる話かもしれません。

 でも、ラジオパーソナリティは局のマーケティング戦略のパーツではなく生身の人間ですので、それはできないという小島さんの気持ちは痛いほどわかります。先のポッドキャストでも、たぶん、ピエール瀧さんはその小島さんの気持ちは全面的に肯定していて、その上で、そんな内輪の話は今聴いてくれているリスナーさんにまったく関係がない話なんだから、大人として、プロとして受け流して、聴いてくれるリスナーさんのために全力を尽くせばいいじゃないか、ということなんでしょう。

 また、ピエール瀧さんはそこまで言っていませんが、たぶん、聴いてくれるリスナーさんに一生懸命に語ることで、まだ聴いていない人にも届くかもしれないし、まだ聴いていない人に届けるのはそれしかない、ということも思っている感じがしました。それは、ピエール瀧さんがミュージシャンでありアーチストだからだろうと思います。

 じつは、この話が象徴していることは、マーケティングにとってターゲティングがいかに繊細で難しいか、ということだと思います。このケースのように、番組がはじまって人気が出てしまったら、ターゲティングの変更はほぼ不可能。小島ちゃん、そこをなんとかよろしく、ではたぶん無理だと思います。番組を変えることしかやりようがありません。

 マーケティング、とりわけターゲティングは、広告の文脈で言えば、フレームワークのフェイズで考えるべきことで、あと出しジャンケン的に立ち上がってから変更するのは不可能だと考えたほうがよさそうです。それでもターゲティングは難しいのだから。

 ターゲティングは難しいという例をひとつ。

 白鶴に「鶴姫」という低アルコール・低カロリー吟醸酒があるんですね。少し少なめの300mlビンで、軽い味わいでなかなかおいしいです。この「鶴姫」、もう20年以上前になりますが、デビューの時は若者をターゲットにしていました。当時、缶入りでイルカのイラストがおしゃれな「飛沫(しぶき)」という発泡日本酒が若者を中心に受けていて、その流れで、ターゲットを若者に、ということだったと思います。

 で、テレビCMのキャンペーンを大々的に打って、「鶴姫」は売れたんですね。でも、若者に、ではありませんでした。この「鶴姫」を買ったのは主にお年寄りだったのですね。お年寄りはあまりお酒をたくさん飲めませんよね。また、アルコールも低いほうがからだにやさしいし、晩酌に少しだけというのも、お年寄りのニーズに合っていました。

 ターゲティング的には見当違いということですが、この「鶴姫」はお年寄りに今も愛されて、20年以上経った今も愛されるブランドになったんですね。皮肉なようですが、これもターゲティングの一面ではあるんです。でも、もちろん、ターゲティングは意味がないということではなく、むしろ、マーケティングとはターゲティングと定義してもいいくらい重要で、ターゲティングひとつで商品やブランドの運命が決まってしまうほどなんですけどね。この「鶴姫」だって、若者にこだわっていたら、たぶんもう存在していないと思います。つまり、今も「鶴姫」があるのは、事後的ですが、お年寄りにターゲティングしたからとも言えるんです。

 なんか、そう考えると、小島慶子さんが降板するのは惜しいなあと思います。なんか、双方にしあわせな話ではなさそうで、しかも、ボタンの掛け違いっぽいんですよね。感情のこじれというか。局側に「まだラジオを聴いていない、40代、50代の男性の自営業の人」を本気で取りにいくつもりだったら、番組ごと変えるのもありだと思いますが、どうも話を総合するとそんな感じでもなさそうだし。真相は知りませんので、もっと何か別のことがあるのかもしれませんが、とりあえずは神足さんが戻ってくるまでは続けてほしかったなあ。

 今からでも遅くはないと思いますし、なんとかならんもんなんですかねえ。

 ■関連エントリ:「広告表現とターゲティング感覚

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