本を書きました。『超広告批評 広告がこれからも生き延びるために』池本孝慈(財界展望新社刊・9月1日発売)
私ごとで恐縮ですが、本を書きました。かつて書籍の編集に関わったことがあったり、他の方の書籍に自分の文章が載ることは何度かありましたが、自分が著者の書籍を作るのは初めてだったので、ほんの少し緊張しています。出版社は財界展望新社です。
発売日は9月1日で、今は印刷所で製本されているところですのでまだ現物は手にしていないので実感はありませんが、書籍名は『超広告批評 広告がこれからも生き延びるために』で表紙はこんな感じです。
カバーの文字部分や帯は特色の銀(DIC621)とのことです。
(追記)実物はこんな感じです。
と、側のことばかり書きましたが、内容はざっくり言うと、2016年9月から財界展望社の月刊経済情報誌『ZAITEN』で連載している広告批評のコラム、寄稿したレポートを収録し、新たな論考を大幅に加えた、といったところでしょうか。連載を収録したと言っても月刊誌3年分ですので、大部分が書き起こしの原稿で、自分が書いてきた3年間の現代広告の記録を素材に、今、広告にとって何が問題で何が課題なのかを再構成したという表現があっているのかな、と著者としては思ったりしています。同じく9月1日に発売される『ZAITEN』10月号に掲載されるレポートの最後に短い書籍の紹介をしましたので、その文章も引用します。
過去の小誌での連載に、新たな論考を大幅に加えた書籍『超広告批評 広告がこれからも生き延びるために』(財界展望新社刊)が発売されました。
これまで常態化していた〝褒める批評〟を封印し、あえて問題広告を対象とすることで、現代日本の広告や社会が持つ課題を根 源的かつ鋭角的に提起することが出来たと自負しています。
連載している広告批評は所謂〝褒める批評〟ではありません。広告業界のサロン的な馴れ合いとは距離を置いて広告を論じています。書籍にも理由は書きましたが、ざっくり言えば「そんなことは誰でもやりたがるし、僕がやる意味はないかな」といったところです。帯の広告文に〈現役クリエイティブ・ディレクターが〝身内褒め〟が横行する広告業界に一石を投じる〉という刺激的な一文がありますが、さらに言えば、僕にとっては、業界を含めた社会が広告のことをもっとよく知るために、広告が作られるプロセスを熟知するこの職能でなければ書けないことを書きたい、という意味合いもあります。そして、今、そのことが必要であると考えています。それは「僕くらいしかやらないこと」であり、「僕くらいにしかできないこと」だと思っています。こういうふうに書き進めていくと、すべてを語ってしまいたくなる衝動に駆られてしまいますので、目次を引用することにします。こんな本です。
序章 僕が問題広告を批評する理由
広告とは何か/広告的に働く広告ではない何か/問題広告を批評するということ/平成の広告史を記録しておきたい
◉批判精神がなく〝身内褒め〟が横行する広告業界の現状第一章 バブル崩壊と下部構造としてのインターネット
広告とバブル/インターネットの衝撃 /インターネットは下部構造である ウェブ動画広告が炎上する理由/SNSの功罪とセルフブランディング
◉小林製薬の〝許されざる〟脱法ウェブ広告 ◉東京都「結婚しようCM」は税金の無駄◉ZOZO 前澤友作社長「多弁マーケ」の副作用 ◉味の素 視聴者のクレームで修正された「いただきます省略」CM◉ドワンゴ「幼稚なゲーム業界」の象徴 高須院長〝お蔵入り〟CM第二章 あの頃に戻りたい症候群
オレに指示をするな/東京の自意識/破壊衝動を見せられても困る/ユニクロのクリエイティブ
◉日清食品「カップヌードルCM」サムい〝あの頃に戻りたい感〟◉東京都〈&TOKYO〉過剰すぎる東京礼賛感覚が〝時代遅れ〟◉日清とソフトバンクの破壊CMが〝イタすぎる〟◉ユニクロ 若い女性ナレーションの本質は胸糞悪い説教だ ◉日産 虚しく響く「NISSAN PRIDE」CM第三章 倫理なき広告とプロパガンダ
震災、広告、消費/消費は万能なのか/プロパガンダと広告/その後のトライ/アイフルのチワワCMの教訓/サブリミナルの危険/コンプライアンスの意味
◉TBSの握手拒否映像は「訂正」では済まない◉トライ おもろければOK? いや、ダメなもんはやっぱりダメやろ ◉「ZOZO TOWN」〝ツケ払い〟CMは明らかにアウトやろ ◉P&G「ボールド」広告の信用を毀損しかねない〝言い間違い〟CM ◉小林製薬〝悪目立ち広告〟 超えてはいけない一線を超えた ◉「かぼちゃの馬車」CM スルガ銀行の倫理なきマーケティング手法特別講義 「広告表現理論」その歴史と現在
広告の基礎は不変/Promise、Benefit、RTB/分かりにくいInsight/インサイトにも質が問われる /インサイトと広告規制/古典的な広告表現手法/ロートレックから始まった欧米の広告/商品としての欧米広告理論 /平賀源内をルーツにしたがる日本の広告界/電通=Google説/フェアネスが足りない /Concept
◉日本郵政のテレビCMが気持ち悪い ◉PCデポ 高齢者の恐怖心を煽る「フィア・アピール」の功罪 ◉電通株主総会が映す「世界の非常識」 ◉外国人は理解不能「広告電通賞」はやめてしまえば? ◉日清食品の広告がダメになった理由第四章 タレント広告という文化的病理
タレント広告はなぜなくならないのか/広告に出るということ/芸能界と広告/タレント広告のリスク/広末涼子とSMAP
◉ハズキルーペ ハリウッド俳優・渡辺謙が示す日本広告の特殊性◉宝島社「ベッキー広告」広告の姿を借りた残酷な芸能界そのもの◉各社横並び〝玉石混交〟「ピコ太郎CM」が示す広告業界の変わり目◉創味食品 明石家さんまを毀損するテレビCM◉ソフトバンク「 年間ありがとうCM」は作り手側の都合◉コインチェック タレント広告の危険性が改めて剥き出しになった◉西武・そごう 芸能界に飲み込まれた決意不在の「キムタク広告」第五章 戦略PRとネイティブアドの欺瞞
混迷する広告と戦争の影/PRの役割とは/広告とコンテンツの分離/ネイティブアドの限界
◉モスバーガー「貧すれば鈍す」痛々しい期間限定バーガー広告◉「企業ブランド」の再考で広報は何をすべきか◉〝誰も喜ばない〟企画でフジテレビの犯した広告の大原則◉日本大学アメフト部 広告化した学生スポーツが引き起こした悲劇◉神社本庁ポスター「クレジットなし」は広告のルール違反第六章 広告炎上のメカニズムと責任
炎上という社会現象/CGMという拡散装置/ソーシャルの代償 /防げた炎上/炎上は使いこなせない/物語ブランディングと脱広告 /炎上は悪か 炎上に対して何ができるか
◉日清食品 とても残念な「大坂なおみ炎上広告」の本質◉西武・そごう 企業理念が感じられない「新春炎上広告」 ◉世界一のクリスマスツリー 反社会的物語を拡散する側の責任◉銀座ソニーパーク「買える公園?」バカも休み休みに言え終章 これからも広告が生き延びるために
広告は終焉しない/広告のこれから/広告を理解するということ/普通ということの意味とは1年1行で振り返る平成広告31年史
現在の広告が抱える課題や問題はわりとカバーしきれたのではないかと思っています。僕としては、広告実務を担当されている方だけでなく、広く一般の方々にも読んでいただきたいという思いもあり、広告の専門的知識がなくても専門的領域の概要を理解できるような記述をするように心がけました。まだどういう評価があるのかは分りませんが、専門書であり一般書でもある、という難しい課題にチャレンジしたつもりです。広告の問題は、広告業界関係者だけの問題ではなく、広く社会に関わるものです。今ではメディアが細分化されて手法も多種多様になってきたので分かりにくくなってはいますが、その幾重にも重なったベールを取れば、国際関係から身近な出来事に至るまで、あらゆることが「広告」という大きな構造と関わっています。
広告批評集であるだけでなく、これからの時代、広告をどう考えていったらいいのかを手引する広告入門書、また、表層的には一変してしまったように見える広告をもう一度再構成し、新たに大きな「広告」という概念として扱い直すための現代広告論としても役立ってくれればと思います。
発売日は2019年9月1日ですが、Amazonを始めとするウェブ通販サイトでは予約の受付が始まっています。興味のある方はぜひ手にとってください。
(追記)無事発売されました。大手書店にはあるようです。広告・販売促進のコーナーにあると思います。広告会社が多い地区の書店さんは平積みされていたようですが、ほとんどの書店は棚に1冊ほどのようです。写真は前職、広告代理店時代の先輩が撮影したものです。
こちらは、9月3日の日経新聞に掲載された広告(画像クリックで拡大します)です。
よろしくお願いします。