あの頃、僕らは確かに
なんとなくオフコース風味のタイトルですが、カテゴリーは「オフコース」ではなく、「W-ZERO3[es]」。そう、ウィルコムのスマートフォン、W-ZERO3[es]の話です。
えっ、知らないですか。一昔前は、iPhoneみたいな最先端デジタルガジェットだったんですよ。QWERTYキーボードをガシャッと出すと、みんなが振り返ったんですよ。ほんとなんだから。
「何、何、それ何。うわっ、すごーい。もう一回やってみて。」
そんな感じでモテモテだったんですよ。Operaを立ち上げて、asahi.comとかを表示して、
「ほら、PCみたいでしょ。フルブラウザ搭載。いいでしょ。でも、これがはじめてじゃなくて、京ポンが最初。」
「京ポンって?」
「京セラ製のウィルコム端末。なぜポンなのかは、忘れちゃったけど。」
で、ひとしきりウィルコムの先進性を語った後、おもむろにTCPMP(Windows Mobile用のメディアプレイヤー)を立ち上げ動画を見せたりしてね、あの頃、ウィルコムユーザー、W-ZERO3[es]ユーザーは確かに最先端だったんです。(ただし、ある分野では、ですけど。)
今思えば、メモリもCPUも貧弱だったし、相当無理をして動かしていたので、もっさりした動きでしたし、当時は速く感じていた通信速度も、Wi-Fiや3Gが当たり前になった今となってはね。
でも、それでも僕らは満足していたし、テンキーや前面や側面のそこかしこに付けられた物理式ボタンにいろいろなアプリを割り当てたり、OSやソフトをカスタマイズしたりして楽しく使っていました。
スマートフォン。
この分野は、なかなか難しいのではないか、と言われていたんですよね。欧米ではBlackBerryの成功があったけど、日本ではどのメーカーも消極的。そこに果敢に挑んだのが、ウィルコム+シャープだったんです。iPhoneに比べると微々たるものですが、それでも、それなりにヒットして、ユーザーが増えて、街でもときたま見かけるようになって、そんな状況はちょっと誇らしくもありました。
それも今は昔。街には、iPhone、iPhone、iPhone、Xperia、そして、iPhone。時代とか、テクノロジーの成熟とか、マーケティングとか、そんなこんなで分析はできますけど、でもねえ、正直言えばやっぱり、ただただくやしくてね。iPhoneがそんなにいいですか。そうですね。よさそうですよね。きっといいんでしょうね。すみません、よさそうに見えます。うらやましいです。
そこにきて、iPadですよ。CMで革命とか言ってますよね。確かにね、見方によっては革命かもしれん。でもね、でもね、でもですね、W-ZERO3[es]だって革命だったんですよ。あの当時は。電子書籍ですか。W-ZERO3[es]にも、ブンコビューワーがついていて、一足お先に電子読書してたんですよ。僕たちは。
それにね、調子に乗って言いますけど、モバイル通信という意味では、AIR-EDGEというかAir H"なんか、えらい革命だったんです。なんせ、PCにつなげば、喫茶店でネットが見られるんですよ。ワードで原稿書いて、メールで送れるんですよ。すごい、これでオフィスはいらないよね、という感じだったんですよ。
とまあ、思う存分愚痴ってみたものの、状況は変わりはしないので、やっぱり今となっては、ちょっと不便なんですよね。ちなみに、今、私が持っているのは、W-ZERO3[es]の後継機のWillcom03なんですけど、この前、とあるお店の電話番号を探してて、目的の情報にたどり着くまでの時間が、普通のケータイに比べて倍以上かかるんですよね。愕然としました。通信速度が遅いのと、Operaが重いのと、フルブラウザで、無駄に表示面積が広いのとが重なって、とっても使いにくいのです。それに、iPodを買ってしまった今、TCPMPは立ち上げることさえなくなりましたし。
でもね、ウィルコムには期待はしているんです。好きだから。
先駆者だったのに、いろいろ不運だったなあ、という気もするし、一消費者としては、そこまで義理立てする理由もないし、たかが商品なんだから乗り換えればいいちゃいいんだけど、たかが商品だからこそ、不便でも好きだから使い続けるという選択だってできるんですよね。理屈を超えたものが消費だ、とも言えるわけだし。
とりあえず、これからウィルコムが盛り返す姿を見たいし、W-ZERRO3[es]が出たときみたいにもう一度驚きたいと思うから、これからも使い続けるとは思うんですよね。DDI Pocket時代からのユーザーだし、通話の品質もいいわけだし。それに、そもそもは電話なんだしさ。
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